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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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44 地続きに、地獄は続き――、教習所後、卒業式前日――

(その機械が何なのか……。考えろ……考えろ……!)


「『考えろ』? なに? こんな奴なん?」

「こんな奴なんよ」


 ナルは人のプライバシーをおもちゃの様にしてカツヒコの学校の女子と、会話を弾ませる。


(小型の機械? 手のひらサイズなのか……?)


 気付けば、いつの間にか昼休憩は終わっていた。

 時田は悶々と悩んでばかりいた。


「よーし、午後はコース2からやってみよう!」


 教習所の教官ははつらつと元気に言うが、時田の心は進まなかった。

 コース2は、外周を一周してから、交差点やS字路等がある内側のコースを回っていく。


「じゃあ時田君、やってごらん」

「はい……」


 返事をするも、時田の心は思考盗聴器の事で溢れかえっていた。


「ハァ……ハァ……」


「……でさぁ」

「へぇー」


 昼休憩の時の会話が過ぎる。


「ハァ……ハァ……」


 時田の呼吸は次第に乱れていった。

 外周は終わり、内側のコースに……




 入れない。




 時田はそのまま、外周を二周、回ってしまった。


「どうしたんだい?」

「す、……すいません!」

「頼むよ。もう一回行こうか」

「はい……」


 もう一度、コース2を走る。


 しかし――、




 時田はまた、外周を回りそのまま走り続け……



「おい! 何をしているんだ!?」



「はい……すいません……」


 車を止めて、教官の顔を見て謝る。


「時田君……!」

「?」


「顔色が悪いよ?」



「!!」



 時田の手は――


 ハンドルを握ったまま震えていた。


「今日は帰った方が良いみたいだ」

「! ……分かりました」


 時田の様子がおかしいコトは、教習所の誰もが確認できた。


「ハァ……ハァ……」


 車から降りて、荷物を取りに建物の中へ入った。

 時田の異変に、心配する教習生達の中で一人、ニヤニヤする男が居た。


「何アイツ、こういうヤツなん?」

「そ……、そうよ。こういうヤツなんよ……!」


「! ……」


 男に話を振られ、ナルはほっとしたように答えた。男も大概だが、ナルは本当に血の通っていない、畜生だという事が分かった。


 時田はその日、教習所を早引きした。

 至近距離からの監視により、思考盗聴器の謎が深まり、恐怖し、体調まで崩してしまったからだ。家にも連絡を入れ、送迎の場所からは、家族に家まで送ってもらった。


「どうしたんな?」

「ちょっと、体調不良で……」


 さて、明日は卒業式の前日だ。久しぶりに高校に通い、卒業式の予行演習をする。


(明日は、久しぶりに皆と会えるな。楽しみだ。でも……)


 脳裏を過ぎるのは、『思考盗聴器』の五文字。その夜、時田は久しぶりに眠れなかった。


 翌日――、


 時田は一睡もできずに朝を迎えた。目は充血し、髪の毛はボサボサだった。少しはセットしたらいいのだが、時田は全てがどうでもよくなっていた。


(思考盗聴器……)


 時田は見えない敵に対して、恐怖するしかなかった。


 卒業式前日のその日、父は時田を学校まで送ってくれた。登校する途中、顔見知りの同級生に会った。


「オッス、だいじょぶか? 何か雰囲気が変だぞ」

「……うん」

「……ダメだこりゃ」


 時田は何か言われた気がしたけど、どうでもいいという感情しか湧かなかった。


 教室に着いた。心身ともにボロボロの時田を見たクラスメイトは、何やら心配している様子だった。すると、隣のクラスから、



「そういうヤツなんよ! こんな奴なんよ!!」



 ナルが吠えている声が響いてきた。


(また……か……いつも思うのだが、常に何かについて怒りを覚えていないと死ぬ生き物なのか? アイツは……)



「三年生は体育館へ移動して下さい」



 どうやら、卒業式の予行演習が始まるらしい。アナウンスが鳴った。

 時田はふらつきながら、ボロボロの状態で、体育館へ移動した。

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