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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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42 謎の大合唱の中、混乱の渦に巻き込まれて――

 時田はやや急ぎ気味で帰路に向かう。すると――、


『ねえ、誰が好きなん?』


 音声送信で女が語り掛けてきた。


(は?)


『だから、誰のコトが好きなん? この娘じゃろ?』


 この娘と言われても、姿は見えない。時田が感じ取られるのは、やけに鼻につく女の、音声送信による声だけだ。ふー、と溜め息をついて、時田は言葉を送る。


(誰が好きとか、どうでもいいことで思考盗聴器を使うな。僕は誰も好きじゃない。修学旅行の夜はもう終わった。そろそろ、そういうのは卒業しろ)


 その言葉に対して、以下の通りの反応が返ってきた。


『えー、絶対好きだって』


(無視だ無視。こちらが反応したところで時間と労力の無駄だ)


 時田は無視を決め込む。すると向こう側は数人で話し合い始めた。


『……でさぁ』

『……うん。なるほど!』

『……それだね!』


(何を企んでいようと無視しよう無視)


 時田は頑なな態度をとっていた。そしてそれは始まった。




『あーあ』





『あーあ』

『あーあ』


(何だ?)


『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』


(だから何だ?『残念でした』って言ったところで何も感じないぞ?)


『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』


 あまりのしつこさに、時田はつい反応してしまった。


(おい、いい加減にしろ。うるさいぞ!)


『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』


 気付けば駅についており、集中力を欠いた時田はやって来た電車につい乗ってしまった。集中力を欠いた上、1面1線の単式ホームだった為、彼は反対側へ行く電車に乗ってしまったのだった。


『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』


 電車内でも音声送信による謎の呼び声は止まることを知らない。


『あーあ』

『あーあ』


(うるさい……うるさい……!)


 そうこうしているうちに、隣りの駅に着いた。見たことが無い風景だった。時田は、ここで漸くミスに気付き始める。


(あれ……? ここは……?)


 暫く開いたドアが、音を立てて閉まっていく。


(ちょっと、待って……!)


 プシューという音を出しながらドアは完全に閉まった。


『あーあ』

『あーあ』


 時田は激しく動揺した。


(次の駅で、降りないと……!)


『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』


声は鳴り止まない。


(……! ……!!)


次の駅に着いた。


「ハァ……ハァ……!」


 時田は息を切らしながら電車から降りた。


『あーあ』

『あーあ』


(畜生! お前達の所為で……!)


 本当はいけない事なのだが、時田は冷静さを完全に失い、その駅で改札をくぐらずに反対方向の電車を待った。


『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』


 時田は軽くパニックを起こしそうだった。いや、既に起こしていたかも知れない。ハアハアと、息を切らしながら先程と反対方向の電車を待った。



 ――、


 十数分経っただろうか。先程と反対方向の電車が来た。


『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』


(うるさい……うるさい……!)


 やっと帰りの電車に乗れたのだが、安心できなかった。



 声が、時田を襲う。



 小一時間経ち、時田はシゲミの待つ、最寄り駅に帰ってきた。シゲミの車が既にあったので、すぐ乗り込んだ。


「お疲れさん。どうだった?」

「まあまあ」


 時田は後部座席に乗ると、寝転んでうつ伏せになった。


『あーあ』

『あーあ』

『あーあ』


 ふと、涙が溢れて来た。


「っふ……えっ……えっ」


 安心したのだろう。思考盗聴器関連の被害で、初めて涙を流したのかも知れない。


「どうしたんな? 泣いとるんか?」


 シゲミが話し掛けてきた。


「……何でもない!」


 時田は強がって見せた。すると――、


『何をしょうるん!? サイテーだよ!』


 音声送信をしている人間の中で、時田を気遣ってやる者が現れた。


(! ……)


『もう止め、こういう事は!』


『……ごめん』


 その言葉を機に、その日の音声送信の声は止んだ。そう、その日――は。

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