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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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39 音声送信

 それはナルの声だった。


(? 何だ? 頭に直接……声が……)


 時田は少し気になったが、勉強を進める。数学の勉強だった。


(答え合わせしよう。おし! 丸、と)



『何で勉強してないのに分かるの!? それが腹立つ!』



 ナルが完全に我を忘れる程怒り散らしてきた。あまりに大きな声だったので、無視できなかった。


(ちょっと待て、今勉強している最中だから、勉強してないのにってのはおかしいだろ?)



『それが腹立つ!!』



 最早何に腹を立てているのか……? 流石にうるさ過ぎる……。しかし勉強を止める訳にはいかない時田は、更にペンを進めた。


(おっバツだ。間違ってる)



『間違ってるじゃないのよ!! それが腹立つ!!』



 甲高いナルの声が頭に響く。


(だから待て、今勉強して答え合わせしているんだから、どこで間違ったか確認しているんだ。うるさいから止めてくれ)



『それが腹立つ!!』



 話にならない……。今までは遠くで時田の黒い噂をしていたが、今度は頭に直接声が届く。耳を塞いでみる。しかし頭の中で声は響くだけだった。どうすれば……。時田は困惑した。


(この現象は、説明できない……)


時田は遂に勉強を止めた。


(待ってくれ、どうしたいんだ? なぜそんなに怒っている?)



『そういうヤツなんよ! それが腹立つ!!』



 時田は再三思うのだった。


(話にならない……。これは相当なストレスになる……。折角、隣のクラスの部活仲間が、俺に分かりやすく思考盗聴器の使用をやめてくれたのに、これでは意味がない


ダメだ)


時田はペンを置く。ここまでうるさいとまるで集中できない。そこでナルに問い掛けてみる。


(どうしたんだ? そしてこの現象は何なんだ?)



『こういうヤツなんよ! それが腹立つ!!』



……。


 問い掛けは無意味の様だった。


(頭に直接、声が聞こえてくる――。そうだ!)


 時田は不意に携帯電話を取り出した。『頭に声が聞こえてくる』この、検索キーワードで今回の現象を検索した。

 その答えは、案外、呆気なく、すんなり、造作も無く見つかった。


(! 何……?)


 そこに書かれていた言葉は――


 音声送信。


『音声送信。誰かの声が聞こえる、頭の中で不快な音が聞こえる、といった現象で何者かの声や発生源の不明な声が聞こえる、聞かされることを言う』



 これもか!?

 時田だけが被害者じゃない。他にも、日本中に被害者が居る……! 対策は……『頭にアルミホイルを巻く』



……。



(違う! こんなんじゃ無いだろ!!)



(電磁波とか、パルス波とか! もっと! 科学的なのは!?)


『2007年現在、アルミホイルを巻く以外の方法は無い』


……。


(で……、電安室に籠るとかは……? そんな予算無いか……。それにしても――、)


『こういうヤツなんよ! それが腹立つ!!』


(相変わらずうるさ過ぎる。俺の自由は僅か3日程で終わってしまったのか……? やっと普通に暮らせると思ったのに……)


 ふと、時田はカレンダーを見る。


 センター試験まであとわずか。


(ただでさえ勉強時間が足りていないのに、これじゃあ……)


 時田は落胆した。それでも、机に向かった。


 そうして、ナルからの音声送信と戦いながら、僕はセンター試験までの間勉強を続けた。


 そして遂に、センター試験当日。



『それが腹立つ!!』



 朝、目覚めと共にナルの声が頭の中で響いた。

 時田はまさかと、自分の予想を疑った……。


(今日の試験、県内で行われるからって、付いて来るなよ? 大人数が受ける試験だからな。変なコトになったら責任取れないだろ?)


『それが腹立つ!!』


(……コイツの脳みそに、理性というモノは存在しているのか……? 仕方ない、支度して、センター試験に出発だ)


 時田は電車とバスを使って、試験会場に向かった。移動の最中、声が鳴り止むことは無かった。遂に試験会場に着いた。


(あのなぁ、くれぐれも、試験の邪魔はしないでくれよ? 準備不足でもやれることはやりたいから)


 そう、準備不足――、それも思考盗聴器と音声送信の所為なのだが……。


『そういうヤツなんよ!』


(どういうヤツなんだよ……?)


 ナルからの音声送信が鳴り響く中、センター試験が始まった。

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