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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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37 こんな状況で、受験に合格した者がかつていただろうか――

 時田は受験当日を迎えた。

 しつこいようだが、前日まで、監視は続いていた。筆者とナル、どっちがしつこいのやら。

 そんな生活、普通の精神力では廃人になってしまうだろう。

 だが時田は中学まで剣道を続け、初段も取った。

 剥離骨折しても休まず、防具のない場所を打たれて紫になっても竹刀を握り続けた。

 その程度では折れない精神力だけは持っていた。

 その鋼の精神力と、面白く振る舞うという方法を使って、ここまで耐え抜いてきた。


(後は練習の成果を出すだけだ)


 試験内容は、小論文と面接だ。時田は小論文の試験開始1時間半前に試験会場に着き、トイレを済ませた。周囲を確認する。


(よし、当たり前だけど、誰も俺を監視していない)


 その事実だけで時田はリラックスできた。

 試験が始まる。小論文の課題は、今まで全く練習しなかった内容だったけど、文章を書くという練習をしてきた所為か、すらすらと鉛筆が進んだ。用紙が終わる、ギリギリまで書くことができ手応えはあった。


(次は面接だ。話すのはあまり得意じゃない。でも、そんな事を理由に、このチャンスを棒に振ってはいけない!)


 面接の試験会場の廊下で、時田は気合を入れて椅子に座り、順番を待った。


「どうぞ」

「はい!」


 前の順番の受験生たちが、数分おきに呼ばれ、試験会場に入り、退出していくのを時田は凝視していた。


 ――、


 遂に順番が来る。

 コンコンコンと、ドアをノックする。


「どうぞ」

「はい! 失礼します!」


 時田はいつもより、ややトーンを高めにして声を出した。


「座っていいよ」

「はい」


 椅子に座る。


「出身校と名前を言って」

「はい、○○高等学校出身の時田総司と言います」

「我が校の、この学科を志望する理由は?」

「はい、――」


 時田は特にどもったり、噛んだりせずに話せた。口頭試問もあったが、それなりに答えることもできた。


「面接はこれで終わりだよ」

「はい、本日はありがとうございました!」


 ドアまで歩く。後は挨拶をするだけ。


「失礼します!」


 時田は廊下に出て、安堵の表情を浮かべた。


(よし、無事に終わった)


 手応えはまあまあだった。そして何より、約半年ぶりの“普通”の生活が送れて、嬉しかった。受験、受かったらこんな生活が待ってるんだ……! 時田は半年後の未来に心を躍らせた。

しかし――、



「あ、アイツ生意気にも受験から帰ってきたで」



 受験後、待っていたのはまたあの“何か”により監視される生活だった。


(! まただ……また、こんな生活が……)


 上げて下げられた、そんな心境だった。受験から帰って来て早々に、時田は寮内での監視を受けた。



 ――、


 受験後、時田は再び勉強を始めた。何故か――?

 万が一推薦入試に落ちていた時の為。

 そして、今回の受験、指定校推薦では、センター試験の内容も大学側に報告される。なので、そこで成績が悪すぎたら、折角受験に合格しても、考え直されてしまう可能性があるのだ。


 以上二つのコトを理由に、時田は小論文、面接の練習から、勉強にシフトチェンジしたのだった。

 監視が続く中、時田は無理やり勉強をするのだった。やはり思うのは、ストレスがある中、勉強するのは非効率的だ。何とかしてナルにあの“何か”を使わせないようにするには……。

 集中力を欠く。勉強にならない……。

 学校では内面だけ面白く振る舞っていたが、ある日隣のクラスの友人に、“何か”越しに頼み込むようになった。


(コレをもう使わない様にしてくれないか? できれば分かりやすく。いつか肩を叩くとかして、使わない様になったことをそれとなく示して欲しい)


 時田は“何か”を使って読み取れるよう、ゆっくりと言葉を思い起こした。



 受験から三週間後――、

 突然、担任から呼び出された。


「受かってたぞ」

「!! はい……(その割に不機嫌そう……)」


 時田は受験に合格した。


「それと……」

「?」

「前、話した通り、今回の受験では、もう一つ国公立の試験を受けてもらうからな」

「はい!」


 指定校推薦では、もう一つ一般入試の試験を受けなければならない。そういう受験形式だった。推薦をしてもらう代わりに、それも合格して学校の株を上げるという事だろう。


「頼むぞ」

「頑張ります!」


 時田は自分の教室に戻る。


「! !! !!!! っシャア!!」


 これでこの県から出られる。ナルの呪いから解放される事が出来る!

 時田は心の底から喜んだ。

 これで普通の生活ができる……! 時田は大学以降、安定した生活を送れる事を信じて疑わなかった。


この時の時田は、まだ知らなかった。

この先、自分の人生がさらに大きく狂っていくことを――。


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