4 AVでやってることなんて、画面の中だけのものだと思っていた。それが今や、オレももう大人だ
あんあんと、だらしなく嬉しい悲鳴を上げる女優の姿が画面いっぱいに映っていた。AV観賞をしながらやきうとコメディアンは一言二言、呟く。
「……おっちゃん。何で俺を助けた……?」
「俺は大人だからな! 子供を助けるのは当然だ!! それよりお前、何でしゃべれる?」
「……いや、それは……」
「そうか……よし!」
「!」
コメディアンは何か思いついたかの様に、突然ヒョイと立ち上がり、やきうを驚かせた。
「そろそろ行くぞ!」
「行くってどこへ?」
まさか、神のところへ……? そんな、勝てるハズが無い。やきうはそんな不安めいた思いを巡らせていた。
「どこへじゃない。君の里親を探しに行くぞ!!」
「!? 里親……!?」
――、
「残念ながら、うちではお前を育てられない。俺にも家族が居るからな。……分かるな?」
コメディアンに抱きかかえられながら、やきうはドミノの様に整列したビル群の立つ街を進む。
(確かに、おっちゃんの家族に危険が及べば……申し訳が付かない)
やきうは静かに首を少しだけ縦に動かした。そして、目ぼしい大人が、街に居ないか2時間程探し歩くのだった。
――、
「おや? あのおっさんは良いかも知れない。そこのキミ!」
「あぅん……僕ですか?」
「そうだ、キミだ。俺はコメディアンをやっている。名前は何と言う?」
「シゲミ……です……」
何と! 街でコメディアンが声を掛けてしまったのは30代の頃のシゲミだった。
「そうか、シゲミ君。この子の里親になってはいただけないだろうか? 不思議な子で、しゃべれるんだ。ほら」
「……おっす」
「!!!!」
シゲミは驚愕した。まだろくに歩けそうにない乳飲み子が、言葉を……?
「ここからキミの家は近いか? なるべく遠くの方が良いのだが……」
「にっ、西に新幹線で4時間のところです!」
コメディアンの問いに、シゲミは即座に反応し、間髪入れずに応じていった。ほっと胸をなでおろして、コメディアンは言う。
「そうか! 今日は出張か何かか? いや、ここはこの子に合わない地域で、な。それなら好条件だ。急で本当に申し訳ないのだが、お願いだ。この子の面倒を見てやれないか?」
「……!!」
シゲミは口をすぼめた。いきなりすぎる……!!
しかしイエスマンのシゲミ。断ることはできず……。
「はい……分かりました」
「そうか、どうもありがとう! 恩に着る! キミのコトは一生忘れないよ。じゃあな坊主、達者でな」
太陽の様な温かいコメディアンは、右手を優しく上げていた。やきうは、身体の芯から込み上げてくるものを抑え、その事を悟られまいと、静かに右手を上げて返した。
「おっちゃん、ありがとう」
――、
やきうは新幹線に乗った。今度は、シゲミに抱きかかえられている。洪水の流れの様な目まぐるしい人間関係の変化に少々戸惑っていたやきうだったが、遂に口を開いた。
「……シゲミ……、さん?」
「ワシのコトは『父さん』と呼べ……」
「父……さん」
やきうは何故か懐かしい気持ちになっていた。何処かで、この人と逢っていたのだろうか……? そんなことを想いながら、父さんの上着にしがみついた。
――、
バスに乗り、数十分走ったところで、シゲミの住んでいる社宅があった。有名企業の会社が管理しているらしい。シゲミが、自室のドアを開けた。
「あら……? のこのこと自ら御出座しとは、呑気なモノね……」
「! てめぇは……!?」
シゲミ宅には、宇宙創造神『フサヨ』が座布団を敷いて座っていた。




