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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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35 それでも、終わるコトはない。時田の高校生活、人生には続きがある

 部活動の為に、入寮していた部活仲間は、引退と同時に退寮する事となる。人生で初めてと言っていい程に、時田は寂しさを感じていた。

(あんなに仲良く、2年半過ごしてきたのに、“何か”によってその関係は引き裂かれ、こんな形でお別れする事になるとは……)

 時田はいたたまれない気持ちでいっぱいだった。


 そして、部活動引退を機に、時田達は受験生になる。



 夏――、学校の夏期講習を受けることなった時田は、憂鬱な気持ちで校舎に通っていた。


(あんな形で引退を迎えるなんて……絶対もっと出来たハズだ……)


 時田は部活の事を何よりも引きずっていた。勉強に身が入らず、只々、無意味な時間が過ぎていた。と――、ここでもナルによる監視は止むことは無かった。

 時田は理系で、ヤツは文系。講習の教室が違うのを良いコトに、ヤツが居る教室からの監視は続けられた。この夏からは、学校では別の教室から、放課後は隣の女子寮からの監視が続く。


 夏休みの半ば頃だっただろうか? 寮の自室にて、時田の精神は再び限界を迎え、嬉しくも、面白くも無いのに突然笑いが止まらなくなった。


「はははははは!」


時田自身、この感情は理解できなかった。


 笑いが止まらない。

 嫌な意味で、おかしい。

 息が浅い。


 それでも、止まらない。


 昔、時田が小学校の図書室で読んだ、『はだしのゲン』


(あの登場人物のゲンの母親も、タガが外れた時、笑い続けてたっけか)


 そして――、


「ハッハッハッハッハッハッハッハ!」


 笑いは次第に過呼吸へと変わっていった。息が止まった時の対処法は知っていた(胸をドンドン叩く)が、過呼吸になった時の対処法は、時田は知らなかった。


(そうか、ここで死ねるのなら、そっちの方がマシかも知れない)


 時田は全てを諦めて、過呼吸を続けた。次第に、


「ハッハッハッハ……ハッハ……ハァ、ハァ……」


 呼吸は元通りに戻っていった。


 何だ、過呼吸って死ぬわけでは無いのか……。


 少し残念だった。

 

 このまま死ぬ方が、監視されて苦しみながら生き続けるよりマシな気がしていたからだ。次に時田は、体の異変に気付いた。両手両足が沸々と痺れた様な、何かが泡立った様な感覚に陥ったのだ。体の異変が続く中、この現象に対して時田は自分なりの考えが思い浮かんだ。


(そうか、末端の酸素と二酸化炭素の比率がおかしくなって、痺れたんだ)


 その日、僕はそのまま疲れ果てて眠った。



次の日――。


「アイツ昨日な、過呼吸とか言ってハッハッハッハ言っててなぁ、どうなるかと思ったで!」


 ナルが時田の事を、隣の教室で大声で話していた。


(少しは反省しろよ。そしてアレを使うのは止めてくれ……)


 時田は呆れてモノが言えなかった。本当に同年代か疑問に思うほど、稚拙だ……。そして今日もまた一日が始まってしまう。有意義の無い、何の為にもならない一日が――。


 時田は受験を一般入試で受ける気だったので、当然、勉強する必要があった。学校ではナルの所為で集中できない。ならせめて、寮に居る時間だけでもと、僕は作戦を考えた。


(帰ってから速攻で寝て、深夜帯から朝方にかけて勉強しよう)


 この作戦は、ナルが寝ている時間に活動ができる為、始めのうちは上手く行き、勉強に身が入った。


 しかし問題が一つあった。


 寮の食事の時間は決まっており、その時間は18時頃だった。学校から帰るのが16時くらいだったので、帰ってから寝ても、2時間後に起きなければならない。16時から22時くらいまでずっと寝て、そこから朝まで勉強するのがベストだったけど、それができないのだった。二度に分けて寝なければならない、そういう不規則な生活になるので、体調が少しずつ悪くなっていった。

 そして一週間が経ち、時田はその作戦をおこなえなくなった。


(勉強しなければ……でも、自分の時間が……無い……)


 そこで時田は、『逃げ』ともとられる方法に辿り着く。


「推薦……入試ですか……?」


「ああ、一応国公立で、県外の大学だ。時田の希望に沿っている」

「受けられるんですか?」

「一年生からの成績が、足りているからな。大丈夫だ」


 時田は担任の計らいで、推薦入試を受ける事となった。

 専攻する学科は、工学部の通信工学科だ。“何か”がどんなものか? 対策はあるのか? 等といった疑問も、上手く行けば専攻するこの学科で突き止められるかも知れない。


(丁度良いや)


 時田は意気揚々と推薦入試に臨んだ。

 それからは小論文の作成や、面接の練習の日々が続いた。文章を書くのに、自信は無かったけど、担任からは好評価だった。次に面接。将来役場に勤め、この学科で学んだ事を基に、老人や子供でも使えるシステムを導入していきたい、というのを大筋に、話を展開出来る様、面接の練習をした。


 引退試合の後、コーチが語っていた。


「お前ら3年は、試合には負けた。でも人生では負けるな。人生の勝者となれ。人生の勝者は、お金持ちとか、そういうんじゃない。地域の人に挨拶ができて、子供にも優しく、周りの大人に、あんな風に育ってほしいと言われるような人間になるというコトだ。もう一度言う。そんな人生の勝者となれ」


 高校野球は、終わった。だが、人生は終わらない。

 あの日、死ねなかった僕の続きを、

 これから生きるしかない。


 ここから先の時田は、勝つことができるのか――? 



 自分に、

 人生に――。

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