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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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34 信頼関係、積み上げてきたもの、人間関係、夢、目標の――崩壊

(終わったのか――)


 三年間続いた高校野球が、あまりにも呆気なく幕を閉じた。


 歓声も、怒号も、応援も、

 すべてが遠くで響いているようだった。


 時田はただ、グラウンドを見つめていた。


 そこには――

 自分がやっと築き上げたものが、

 静かに崩れ落ちていく光景だけがあった。


 過去に甲子園に出た事のある、強豪校。それが、初戦敗退である。昨シーズンは、あと一勝で選抜程候補に挙がるほどのメンバーだったが、それなのに――。


 敗因を上げると、様々あった。


 監督の奇抜な采配――。

 

 レギュラーを入れ替えたスタメンや、1年生を起用する等、作戦面での敗因が、表向きは上げられる。


 しかし――、

 大袈裟な言い方にすると、人間関係の崩壊も関わっていたのだろう。


 頭で考えたことを読み取る、“何か”


 それにより本音と建前で成り立っていた人間関係を無条件に崩していった。信頼とは、すべてを話すことではなく、話さなくても崩れない状態のことだ。 これが、“話したくないことまで筒抜けになる”ことで、崩壊した。


 もっと言うと、それを時田に仕掛けたのが大きかった。


 彼は人間関係の失敗を極度に恐れる習性があった。だから、常に聞き耳を立てて生活していた。


 「あいつさぁー。この前公園行ったときに……」

 (成程、今はアイツの前であの人の名前を出すのはやめておこう)


 「私さぁ、大和田くん結構良いと思ってるのよねー」

 (……! ナルが……大和田に気を付けろと忠告しとこ)


 まず、観察してから、情報を得てから、その人に対しての最適解を――。それを心がけていた時田は、様々な人間関係を頭に入れていた。


 それが、筒抜けになったのだ。


 野球部間、ましてやクラスの人間すらも互いの裏の顔を時田越しに知ってしまった為、互いが疑い始めた。


 あいつは本当はどう思っているのか。

 あの笑顔は演技ではないのか。


 言葉の裏を探り、沈黙の意味を測り、

 やがて視線を逸らすようになった。


 その人間関係の崩壊が、精神的不調を呼び、プレーに出て、誰もが予想しなかった初戦敗退へと繋がったと、言うのは早計だろうか。



 同級生は、本音を知られたことを時田の所為にした。

 と同時に、負けをも時田の所為にした。

 

 その中心になったのが、ナル。


「あんな奴、入学しなかったら良かったのよ!」


「ホントにね」

「アイツの所為で、俺らの大会が……!」


 ナルの怒りが、伝染した。


 同級生は、何に怒っているのか分からないが、無性に腹立たしくなって、声を上げたり、モノに当たり、騒音を立てていた。それが時田には過剰なストレスとなった。


 そして“その音”は、時田の認知を歪めていった。


 俺の所為だ。


 おこがましいかも知れないが、レギュラーでは無くてもチームの中心人物との関わりは多かった。現実として、チームの身体のケアをよくおこなっていたし、練習試合でヒットを打った時、3年全員で祝福された。

 そんな時田が、おかしなモノ、“何か”を通して結果的に、レギュラーの精神状態を狂わせてしまった。


 そう時田は自責の念に駆られていた。


 呆気なかった。


 甲子園を目指した三年間は、

 あまりにも静かに終わった。


 歓声の代わりに残ったのは、

 疑念と、後味の悪さと、

 そして――


 拭いきれない罪悪感だった。


 呆気ない形で時田の代は引退を迎えた。

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