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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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33 やっと築き上げたもの――。それすら音を立てて崩れ去っていく。その時、1人の高校球児は何を想う――?

 三年生、最後の大会のレギュラーメンバーが顧問から発表される日が来た。まさかの横田が、初のレギュラー入りを果たして、部員の皆は涙していた。そう、時田を除いて――。



 時田の精神は限界を迎えていた。



(皆、俺を避けてる――。前までは隣に座っていたエースの滝本も、今は別のヤツと座ってる……。マッサージもいいよって言われて、断られる……俺がこの部に居る意味って……)


「何だ!? 時田だけは涙を流していない。自分がレギュラーから外れて怒っているのか?」


 遠くで、怒気を含んだ声が時田の耳に聞こえてきた。


(そりゃあ、涙も枯れる程、追い詰められましたので――)


 先輩の卒業式、声を掛けてくれたコーチも時田を良い様には思わなくなっていた。


 時田は変わってしまった。


 何時しか周囲にこう言われるようになっていた。


「最近、おかしい」

「素振りを止めた時からか?」

「フラれた時」

「腹壊した時だ」


 悪い意味での話題の中心になることもあった。


 そんな中――、


「時田君、キミは応援団長か?」

「!」


 キャプテン岡田の父兄が声を掛けてきた。この人は、過去にこの高校で甲子園に行ったことがある。この高校の歴史を知る人。親子で甲子園に――、キャプテンの意識が誰よりも強いのは、この父親からくるものが大きいのだろう。


「いえ……特には……」


 曖昧に否定する時田だったが……


「なら、キミは副応援団長になれ、頼んだぞ!」


 目に光が戻るのを感じた。


 「ハイ!」


 まだ、必要とされている――。存在意義の火が、胸の奥で静かに灯った。


 それから時田は夜中、誰もいない部室で、掛け声や、選手名、応援歌が書かれている応援パネルを張り替えていた。何故か――?


 応援団長、市原が文字通り、カタカナのテキトーに貼り付けてしまったからである。市原は、3年のベンチ外の部員でおこなったミーティングでも、遅れてきたと思えば、部屋にあった大学のパンフレットを手にし、『これ、貰っとくよと』言って帰って行くくらいだった。何の為に応援団長になったのか――?

 答えは明白だった。


『履歴書に書けるかな?』


 応援団長という経歴を武器に、大学に推薦で入ろうとしていたのである。そうとは知らず、3年は市原を応援団長にしてしまった。

 大体の尻拭いは、時田がやっていたのだ。


(このパネルの裏にこれがあったら、応援が成り立たない。……このパネルに至っては、上下が逆だ……)


 不思議と、市原に対する怒りは無かった。それよりも、まだ部の為に何かできるという今が嬉しかった。その一心で、時田は夜遅くまで裏方仕事をやっていた。まるで、下級生の時のように――。


 それでもまだ、“何か”による脅威は終わらない。学校では、頭の中を探られることの二次被害として、隣の教室や廊下から罵声を浴びさせられる。


 昼間は精神が――

 夜は肉体が――



 時田はもう一滴も垂れない雫を、からっからの雑巾から絞り出すような状態だった。



 そして――、遂に引退を懸けた夏の予選が始まった。試合中の時田の役目は只々、応援すること。満身創痍で日々を送っていた時田は顔色が悪く、何か犯してしまいそうに、周りには見えただろうか? 試合の結果は――、



まさかの初戦敗退だった。

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