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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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23 日本人は! 胃腸が弱い!!

「おはよう。(あっ。Nさん……)」


 朝――、教室で彼女の顔を見る度に、時田の心はズキンとした。


(もう、メールはできないなぁ……でも!)


 放課後になれば、自分にはスイングがあった。


(必死になれるモノは、まだある!!)


 それでも、日々のダメージは蓄積されていき、スイングのペースは落ちていく。


(今日は300切った。“音”もレベル4……こんなことではダメだ!)


 寝る前、決意を新たにしようとも――、


「おはよう(……)」


 毎朝が苦痛だった。


「あと一本!」


 日が傾く頃は身体を酷使する――、そして……。


「……」


 時田は、人見知りでなくても調子が悪いんじゃないかという顔色をするようになった。


「あんなヤツなんよ!! 俺はもうダメだ……みたいにウジウジウジウジと!!」


 教室の遠くで、ナルの声が響いていた。


(やっぱ……Nさんの中のオレ評価下げたの、ナルだったんだ、畜生……)


 その不調は、思いもよらない場所に顔を出す。


「ウッ!」


 食事中、胃が内側から掴まれるように痙攣した。


 食事のノルマ――、

 野球部が避けては通れない寮の掟。どんぶり飯を3杯、山盛りで食べるそれを、今の時田はこなす前に身体が悲鳴を上げた。


(大丈夫だ……食べよう)


 1年目の冬練経験者、多少のコトでは匙を投げなくなった彼は、我慢に我慢を重ねた。


 結果――、


「ウゥ! ウォェ!!」


 コンディショニング施設のトイレで胃液を吐き出していた。


「ゲロが出るわけじゃ……ないんだ……はは」


 強がって笑ってみる。しかし、その目にはもう、光は無かった。


「どうした!?」


 トレーナーが時田の顔色を見て慌てていた。直ぐに寮に帰り、次の日には病院に向かった。


「胃カメラ呑んでみましょう」

「!? へ?……アレを?」



 ――、



「ゥオエ! オエ! ゥオエ! オエ! オエ! オエ!……」



 齢16の(早生まれ)その身体は、口から入る異物を過敏に受け付けず――、


「若い、若いから反応が良いねぇ……」


「ゥオエ! オエ! ゥオエ! オエ! オエ! オエ!……」


 時田は1分間に100回嘔吐する勢いで嗚咽していた。


「コツン☆」


「ヴオオェェエエ!!」


 胃の壁にカメラをぶつけるこの始末。


(こんの!! ヘタクソがぁぁああ!!)


 その日、時田は小学校3年生の頃にイカそうめんがノドに引っかかって死にかけた時のコトを思い出していただろう。

 人を救うハズの医療で苦しみを覚える程、矛盾したモノは無いと、切に思う彼であった。



 ――、


「胃と肝臓が弱っています」

「……はひ」


「お腹を休めてくださいね」


(そう忠告されたところで怯む俺では……ない!!)


 時田はその日の足で部活に戻り、バットスイングをし、食事ノルマもこなした!! 当然腹が休まるヒマなどなく――、


「!……」


 通院日から2週間後、ズキンと、響く痛みと虚脱感で、スイング中に時田はうずくまった。



 ――、


「またですか!? 栄養が身体に行かないから、運動も禁止! 飯もおかゆにしなさい!!」


 病院でキツイ言いつけを聴いた時田の闘争心は、既に尽きていた。


 その足で、グラウンドに立ち、バットを振ってみたが――、


「スン……」


 音を置き去りにしていたそれは、見る影もないスピードに落ちぶれていた。


「これは……俺のスイングじゃない」


 時田はその夜、本数を書いていたカレンダーをゴミ箱に捨てた。

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