20 初メル友と初告白
野球部の練習には勿論、力を入れ、練習後もレギュラーメンバーのストレッチの相手やマッサージ等をおこない、忙しく動いていた時田だったが――、
「Nさぁーん(ハート)!!」
夜――、特にNさんの塾が終わる頃の22時台はメールの送受信で心はいっぱいだった。
「グググっ」
『好意レベル―5.もう告白しよう』
「時田。俺ら修学旅行、野球部だけでグアム行くらしいぜ?」
「ぐぁぁむ!?」
学生寮のある夜――、
ノブコフが突然、有力情報を持ち掛けてきた。
「そこには、恋人岬ってデートスポットもあるみたい。俺、そこの関連のお土産あれば買おっかな? そんで、今のメル友と付き合えたら、プレゼントするんだ」
「ノブコフ!? お前もメル友居るの!? 誰!!?」
時田は目を丸くし、口をとがらせて叫んだ。
「Yさん。ほら、前にお前に『おはよ』ってアイサツした娘。取んなよ?」
「取んない! 俺は別の人とメールしてる!!」
「そうかそうか。よーし、決めた! 俺はクリスマスに告るぞ!!」
「俺もそうしようか」
「告るんなら、俺は直接言うな」
「そうじゃな。せめて電話で、自分の声で告るよな」
「そう……じゃな」
そして数日経ち――、
『今日もお疲れ様☀☀
定期試験、近いねー。
今回の範囲、難しくない(顔)?』
「送信っと……フフッ」
時田は満面の笑みで、返信を待っていたが――、
「何で……?」
いつもなら、5分ほどで返ってきたメールも、20分、30分と経っても一向にガラケーはうんともすんとも言わない。
「ピロリロリン♪」
「来たぁ――!!」
早押しクイズ並みの反応で携帯を手にした時田は、その勢いで画面を確認する。
『今、契約で2,000ポイントゲット!』
「キャリアメール!!!!」
時田はベッドにその機械を叩きつけた。
「ピロリロリン♪」
「今度こそっ! Nさんからだっ!『ゴメン。塾、長引いた』とか? 『寝落ちしてて気付かなかった』とか!!?」
『うん。』
「――!!」
冬練を乗り越えたはずの屈強な身体を持つ時田は、膝から崩れ落ちた。
(何で……!? いつもは10分近く経ったら5行とか返ってきてたのに……、あの夜は夢を語り合って……、嫌われた……? メール見返したけどそんな素振りは……!? あっ)
恐れていたことが、起きてしまった。
(回想)
中学卒業の日――、これで最低なクラスとおさらばできる。そう、時田は喜びに満ちていた。ただ一つ、不安だったのは――、
ナル。
アイツと同じ高校に通うのが決まってしまった事だ。
一番陰口を言い続け、誰かを虐めていなければ気が済まない性格のアイツだ。何か高校でも僕をイジメてくるのではないだろうか……? この時田の不安は――
(回想終了)
およそ2年と半年後、見事、不安は的中した!!
「ナ! ルぅ――!!!!」
時田は頭をくしゃくしゃにしながら悶絶していた。
(アイツのコトだ……。俺の悪い噂を、あることない事全部話して、評価をガク下がりさせたに違いない!! 何か教室で、誰のコトかは分からんけど、『あんなヤツだよー?』って誰かを卑下していた日もあった……! 俺のコトだったのかぁ――!?)
『今日は、疲れてる?
ゴメンね。こんな日にメール送って(顔)
また明日、授業がんばろーね☀☀
お休み!』
「ふぅ……」
時田は送信ボタンを押すと同時に、力なくベッドにボフッと身体を預けた。
「……決めた」
虚ろな目に、禍々しい炎を宿して時田は上半身だけを上げた。
(これ以上関係が悪くなる前に、告白しよう!! 俺は! 12月〇日に、人生初告白をする!!!!)
――、時田は12月〇日を迎えた。
「『ちょっと用事があるから、今から電話、大丈夫?』と」
時田は、部員の誰にも知られず、暗闇の部室の中に侵入し、一人メールを送っている様だ。
「『いいよ』よし!」
「プルルルル、プルルルル、ガチャ」
「もしもし?」
「もしもし」
「用事っていうのは……ゴクリ」
「?」
「ずっと、好きでした!」
言い切った。シンプルで、まっすぐで、初めての言葉を――
「! ……」
「……?」
「……」
風の音だけが、部室の外から聞こえていた。
「(文脈、めちゃくちゃだったかー?)あの? へ、返事は?」
「……ゴメン。友達としか思っていないから……」
「!……分かった。聞いてくれて、ありがとう」
「ブツン、ツー、ツー、ツー」
「……ふー」
時田は、夜空を見上げてみた。
(フラれたけど、人生で初めて告白したぞー!)
彼は、結果はともかく、自分の気持ちを伝えられたコトに、感激していたらしい。
しかし――、
「おはよう」
「! お、おはよう……」
フラれた相手が、同じクラスに居たため、時田は重苦しい気持ちを数カ月味わうことになる。
――、
失意のどん底に居た時田は、kに愚痴をこぼしていた。
「kぇー、絶対ぇナルが何か言ってたわぁ」
「言っとらんわ。おみゃーのことは『一緒の中学出身だと思われたくない』言うとったわ。それだけ嫌いなら話題にも上がらんわ」
「そうかなぁー?(そんな嫌われ方なら、素直に悪口言ってたのでは……?)」
――、
ノブコフとは、戦果報告を互いにする日が来た。
「ノブコフぅー、どうだった?」
「OKだったぜ、時田! そっちは?」
「フラれた」
「そうか……」
「電話で、自分の声で告白できたのが満足だな。今気まずいけど……。ノブコフは学校のどっかで直接言えたんか?」
「ハハッそれが……」
「?」
「ビビッてメールにした」
「!?(このヤロウ!!)」
告白は、直接や電話じゃなくても成功するコトも多い。
ただしイケメンに限る。




