2 生まれながらに死んでいく者――、死んだ状態で生きていく者――、僕等は鶏卵や肉用鶏の気持ちを知らない
――、
(光? 目が……開く……? 何だ……ここは?)
無数の照明に、レンズの上から連続して光るフラッシュ――。わっと響いた歓声――。
そこは――、舞台の上。やきうは、気付けばコンサートホールの会場に居た。
「何で……生きている……? 死んだ、ハズじゃあ……? ! 右手、心臓も……ある」
やきうは両の手を握っては開きを繰り返したのち、自らの胸部をペタペタと触った。感覚と感触を確かめているうちに、憎き相手の耳障りな言葉が響いた。
「89番、アナタは死んだのよ。だから生きる価値は無いわ」
「!? 何を言って……?」
言葉の持ち主は宇宙創造の神、フサヨ。彼女は天を仰ぎ、両の手を広げて声高らかに叫んだ。
「私は神よ! 誰よりも聡明、かつ有能で絶対的な存在!!」
『おおっ!』
騒ぎ立てる声が、歓喜とも混乱ともつかぬ熱を孕みながら広がっていった。観衆の叫びと、マスコミの怒涛のフラッシュが入り混じり、空気が沸騰する。
「ちっ!(何が“聡明”だ。馬鹿丸出しの発言じゃねぇか。もう少しは賢く捻った言葉でも使いやがれ)」
一人冷めているやきうだったが、神を名乗る愚者は彼の方へと右手を向けた。観衆が、女のその動作に呼応して、その手の指し示す方へ一斉に視線を向けた。 女は氷よりも冷たい表情を浮かべて続ける。
「そこに居る赤ん坊は、神に仇なす愚か者です。神からの罰を与えましょう。今から彼を殺します」
わっとホール内は沸き、狂気と熱気に包まれた。やれやれと先程よりも冷え切った心でその様子を眺めていたやきうと、観衆との温度差は、台風でも発生しそうな程かけ離れていた。
その時、スッと女は片手を立てながら掲げた。
それだけで観衆の狂騒は静まり返った。次の言葉を待つ。静寂が突如訪れ、世界が呼吸を忘れた。
「神の力をお見せします」
ぶわっと、突風が吹いた。
(あっ……)
神に仇なす赤ん坊の左腕が血飛沫と共に飛んでいく。舞台は、赤に染まった。
「何だ、これ……?」
「映画の撮影じゃないか……?」
「CGをプロジェクターで映している?」
その常識離れした、常軌を逸した光景に、段々とそれを作り物と錯覚する者が増え始めた。それでも現実的な痛みが、赤ん坊を襲っていた。
「腕がっ! 痛ぇ!!」
ドクドクと流れる真っ赤な液体と脈打ちながら伝う痛み――。その小さな体から、徐々に体温が奪われていった。
(寒ぃ……)
赤ん坊は生まれてから2回目の死を迎えた。
――、
「こんな事もできます!」
耳障りな声が聞こえた。
(光? アイツの声……? ここは……?)
無数の照明に、レンズの上から連続して光るフラッシュ――。わっと響いた歓声――。
そこは――、舞台の上。やきうは、気付けばまたコンサートホールの会場に居た。
「私が生き返らせました」
「!(神……何がしたいんだ?)」
「そしてこんな事もできます!」
「!!」
始まりの魂『やきう』の頸部が吹き飛んだ。再び、舞台は血に染まる。
「いってぇ!! これって……!」
生首となった彼は数秒しゃべった。引き離された胴体はビクビクと痙攣しながら赤い液体を流し続ける。視界が霞み、薄れゆく意識の中、彼は思ったのである。
(また……死ぬ……)
彼は3回目の死を迎えた。




