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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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15 時田の生きる道――。どう、生きる?

「ゴホンっ!……ゴホンっ!」


(ちっ、分かったよ……)


 高校2年の定期試験――、

 時田は答案用紙を早く書き終え、机に伏せて右端に答案用紙を置き、Kにカンニングさせる、という日々が続いていた。



(回想)


 学生寮、時田自室――、

 Kが藁にも縋る想いで時田に何やら懇願していた。


「時田ぁ、頼む。中野さんがぶち怖ーんじゃ。助けてくれ」


「分かったよ。で、何をしたら良いん?」


「試験で赤点捕ったら、監督らぁにもシめられるし、中野さんにもやられるんじゃ。カンニングさせてくれぇ」


「でも出席番号ちょっと違くね?」


「大丈夫じゃ。何とかするわぁ!」


(回想終了)



 Kは試験当日、教員に『担任からこの座席で試験を受けろ』と言われたと(ウソを)伝え、時田の後ろに陣取った。そして無事(?)カンニングをして赤点を逃れるという作戦を成功させていたのである。


 Kの家族に不幸があった日、(気付いてはいないが、また、田尾津地男がやったとは言え)自分でも信じられない事をしてしまった。だから、罪滅ぼしとしてKが困った時に力になってやろう。助けてやろう。

 カンニングをさせただけで助けたとは言えてないと、頭では分かっていたが、心は少し楽になっていて、それがまたもどかしかった。


「助かったわ。もう1回頼む!」

「はいはい……」


 こうして、1学期中間試験を乗り切っているうちに段々と空は熱を帯びる季節となっていく。



(俺は、部活に生きる……!)



 自主勉強をほぼしなくなった時田は、野球部のコトしか頭になかった。

 早朝は朝練、昼にはグラウンド整備、放課後は全体練習、それが終わると自主練習で、更に寮に帰ると裏方仕事を請け負っていた。

 そんなある日――、同級生でエース候補の滝本が身体を痛めた。

 状態はどう? など、時田が気を使っていたら、中野さんが彼に真剣に叱った。


「滝本。お前は部の中でもエース格なんだから、もっと自覚を持て。怪我なんてしたらいけん。しっかりしろ」


 これを聴いていた時田は、ハッとし様々な考えが廻った。


(なんて……! 厳しい世界なんだ……)


 中野さんが去って、考えをまとめてから時田は滝本に話し掛けた。


「滝本、練習や試合を頑張り過ぎて怪我したんだろうと思う。それぐらい頑張っても、それでも怪我をしてはいけないという厳しい世界で戦っているなら、何かサポートする。そうだ、マッサージは得意だから、怪我の心配がないくらい頑張れるように、身体のケアをしてあげるから!」


 これを聴いた滝本は、ニッと笑って、言った。


「お前、優しいな!」

「そう?」


 時田はおどけて見せた。


 時田の発言は中野さんにも伝わったらしく、3人で話す機会があった。


「時田、コーチさんがストレッチやマッサージの本を読んでたみたいじゃ。俺が教わったのをお前に教えるから、覚えろ。滝本にやってやれ」

「はい!」


 中野さんから聴いた身体のケアの方法を、時田は滝本に試した。


「おー、効くなぁ」


 それは確かな効き目があった様だった。それから時田は、負荷が多い日にはほぼ必ず、滝本の身体のケアをおこなった。



 ――、


 ある日――、


「時田頼む。1回だけじゃけぇマッサージしてくれ」

「はい」


 中野さんが時田に頼み事をした。

 中野さんは新チームから選手という立場から一転、マネージャーをしている。学生マネージャーは、何をおこなうのが正解なのか――? 時田は3年間重役には就かなかったので全く分からないが、中野マネージャーはバッティングピッチャー、走りメニューのタイムキーパー、ミーティングの進行、ノックを打つことまであった。更に、練習試合の日程調整をおこなっていた様子すら見せた。下級生の指導もする。何から何までこなしていたので、新聞に『鬼マネージャー』とでかでかと見出しと写真が載ることもあった。

 ただし、アップには参加せずに身体を動かすことが殆どだったので、身体への負担は大きかった。アップ時は、選手の足を見て、好不調を判断し、声を掛けていたという。


「身体固かろ?」


「はい、何か……触ったこともない状態です」


 マッサージが始まる。中野さんの身体は、触っただけで異変がすぐ時田に分かった。筋が、バキバキに張っている。相当な痛みと戦ってきたコトが見受けられた。


「左足が変なんじゃ」


「……?」


 左足には、通常、筋が通っていない場所に槍みたいなモノが通っていて、ほぐせばいいのか、触らない方が良いのか分からない。


「これは、変なので、周辺の筋肉をほぐして、負担を減らしときます」


「……分かった」


 マッサージをしていたら、中野さんは半分寝ている様だった。


(自分の身体の事はほったらかしで、部員全員を見ているなんて――)


 時田は、この頃から、部活に対する意識がより強くなっていく。『1回だけ』そう口では言っていた中野さんだったが、2回目があった。そんな人間臭さが、時田は嫌いじゃなかった。



 ――、


 時田は相変わらず、夜にはマッサージを他の先輩達にもしている。この日は、高坂さんの部屋に居て、裏方仕事に勤しんでいた。


「お前も大変じゃな。先輩に目ぇ付けられてマッサージさせられて。俺のコト、ウザかろ?」


「いえ……」


「?」


「野球じゃ実力が無くて、部の為には何もできませんが、こうして選手の人の負担を軽くして、試合に活躍出来るようにすることで野球部に役立っている気がして、嬉しいです」


「ふーん、そうなん」


見えてきた、この野球部で、どう生きるか――。

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