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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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13 皮肉なほど綺麗な空の下、その夕空のせいで失敗が隠せなかったんだ

 時田総司、高校1年の学年末試験の試験期間が訪れた――!!


「まさか……この練習をしながら、試験を乗り切れ、と――?」


 夏は、大事な大会があり、レギュラーメンバーはその調整、メンバー外も応援の準備に力を入れる為、試験期間だろうと部活動をおこなっていた。

 一方の今は、地獄の2大イベントの1つ、冬練真っただ中。これをこなしながら空いた時間に勉強など……。考えるだけでゾッとする時田だった。


「夏は勉強できなかったからな。この期間で取り返して、成績を残すように」



『ハイ!!』



(……って、え?)


 時田は虚を突かれた。試験期間は、冬練メニューが、休み?


「やっと身体休められるー!」

「よーし、勉強でも頑張るか」


 他の部員からは安堵の声が漏れていた。


(勉強……そうか、父さんがとりあえず大学に入った方が良いと、謎の呪文を唱えていたから、野球で行くコトができない僕は、勉強をする時間も必要なのか……。よーし!)


 時田はその試験期間、まず徹底的に成績をどう残すかを考えた。計算に計算を重ねて、頑張りどころと抜いて良いところを吟味した。


「数学は……あっ! 殆ど頑張らなくても『5』取れる! 英語……頑張らないと相当成績下がるかも……」


 そして、綿密な計画を立てて、勉強に取り組んだ。そして無事学年末試験本番を終え――、


「おおっ! 試験前まで低かった成績が……平均4.0に!」


 時田は野球部にしては好成績となる評定平均を叩き出した。


「でも――」


 これで試験期間が終わったというコトは、魔の冬練が……。時田は覚悟を決め、身構えながら練習着に袖を通した。


 が――、


「今日はここまで!」


「え?」


 蓋を開けてみれば拍子抜けする様に、試験期間開始と共に地獄の冬練は終わっていた。



――、


「♪」


 時田は口角を上げ、艶っ艶の頬で夜を迎えていた。


(冬練のメニューを全てこなせたわけではないけど、大分体力と筋力が付いた。勉強もトップの横田とまではいかないけど、それなりにできている……。そうだ! 2年になったら、文武両道を目標に掲げて、高校生活を送ろう! そうだな……春休みは、最初の1週間は今までのリフレッシュとして遊んで、その後勉強をしよう)


 この時、時田は大きなミスを犯していた。



『最初の1週間で勉強、その後の1週間で遊ぶ』



 が正解だったコトを、その後思い知るコトとなる。


(よしよし、全体練習終わりに1時間自主練をして、その後の1時間を使って自分の事をしよう。そしたら、6時間睡眠で健康的だ、完璧!)



 ――、


「お前、『僕』って言うのヤメロ」


「え?」


 春休みを迎える頃、田之上が時田にとある助言を言い渡した。


「お前、タメの間で『僕』って一人称使ようるじゃろ? あれヤメロ」


「何で?」


「もうすぐ新1年生が入ってきて、俺ら1つ先輩になるだろ? そんとき情けないからやめとけ。練習しろ、はい!」


「オレ、時田」

「お前の血液型は?」

「ぼ……俺はAB型」

「間違えんな! もっかい!」

「オレ……」


 そして、春休みが始まったのだが……。時田は最初の1週間、計画通り1時間自主練習をし、その後自分の時間として寮で過ごした。偶に先輩の裏方仕事を任されることはあったが、許容範囲と呼べるもので、計画に支障はなかった。

 ――様に見えた。

 その後の1週間が始まる……。


「よーし、自主練終わり! この後、1時間勉強を……」

「時田ぁー、背番号縫ってくれ」

「! はい!!」


 次の日……。


(昨日は、勉強できなかったけど、想定内、想定内。今日から、気を取り直して……)

「時田ぁ―、マッサージしてくれ」

「! はい!!」


 次の日……。

「時田ぁー、背番号縫ってくれ」

「! はい!!」


 次の日……。

「時田ぁー、背番号縫ってくれ」

「! はい!!」


 次の日……。

「時田ぁ―、マッサージしてくれ」

「! はい!!」


 次の日……。

「時田ぁー、背番号縫ってくれ」

「! はい!!」



 ――、


(いかん……、頭が痛くなってきた。睡眠時間が、5時間の日もあったぞ……。物事が上手く進まないと、人は頭痛がするのか……今日こそは――)


「時田ぁー」


「!! はい(涙)!!」


 春休み最終日――、時田は朦朧とした意識の中で、ミーティングを受けていた。監督が、最後のシメに部員全員に問う。


「お前ら、春休みの宿題は終わったんか?」


『はい!!』


「終わったやつは手を上げろ」


「……」


 バッと部員は右手を高々と上げていた。

 

 時田以外は――。


「ん? 時田、お前やっとらんのんか?」

「……はい」

「何でな?」



「宿題ができません!!」



『!?』


 時田の前代未聞の発言に、ざわつき始める野球部一同。


「なんなぁ、そりゃあ? お前は馬鹿か? もういい! ミーティング、終わり!」


 この後、先輩達に時田はシめられるコトとなる。


「お前、部屋でゲームしょうったろうが? なんな、ありゃあ?」

「宿題なんて誰もやっとらんわ、監督の前で皆やったって言うもんだろうが、アホ」

「……またお前がチクって大変なことになるかと思ったぞ……」


「……はい(また、やっちまった)」


 心に、コーチの言っていたセリフが沁みた。



『宿題ができんとか、野球以前の問題だぞ?』



 野球以前の問題ができていない野球部失格の烙印を押された時田は、無意識にグラウンドの端まで歩いていた。


 西の空は、皮肉なほど綺麗だった。

 雲の縁が夕陽に焼かれ、茜と橙が静かに溶け合っている。

 何事も無かったかの様に美しい世界を眼に映して、時田は決意した。


(もう、勉強するのはやめよう)


 投げやりになり、学業のすべてを放棄してしまった時田、今後どうなる!?

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