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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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10 『良い父親』という呪いの中で、善意は刃となり、父の正しさを疑うことも許されず、心配をかけない子供になる破壊は静かに続く

 時田総司は常識が無い。


 彼がそうなったのは、ひとえにその家庭の教育の賜物だと言っていい。 虐待をおこない続けた、祖母、父、母。父の呪い。中学の時の、同級生の保護者からの監視事件。そして、物心が完全についた後の小学生から、田んぼと山しかない田舎の実家に住むことになったという環境もまた、彼をそうさせたのだろう。

 さて、父・シゲミがどんな呪いをかけたのか、当の本人すら今となっては分からないくらいだが、子の時田は、父のことを心から信頼し、そして友達の様に接することが多かった。これを友達親子と呼ぶべきか、はたまた常識の無い子供と呼ぶべきかは、それぞれの裁量に任せることにしよう。さて、時田がこの様に、シゲミを友達扱いしたことにより、とある事件が起きてしまう。今回は、それについて話していこう。


 時田は相変わらず、夜遅くまで起き、背番号縫いやグローブ磨き、スパイクの整備等、裏方仕事を任されていた。自分のユニフォームの洗濯までしなければならないのだから、連日1時過ぎまで活動していた。日に日に疲労は蓄積していき――、


「はぁ……」


 中学では感じ得なかった、視界の霞み、頭部の違和感、倦怠感等の疲労感を慢性的に感じ続けていた。

 そんなある日、シゲミに頼んで、整体師によるマッサージを受ける日が来た。車で送ってもらう中、ボソリと友達に愚痴を言う様に、時田はとんでも発言をしてしまうのだった。


「部活はどんなですか?」

「睡眠時間がねぇ。足りないね」

「何でな? 寝なさい」

「夜、マッサージとかやってるから」

「?」

「まぁ、夜眠れないのは辛いとこだけど、まぁ何とかするよ。大丈夫」

「そうか……」


 迂闊だった。


 この時、シゲミが何を思ったのか――? 


 普通の親なら、心配する。

 高校球児経験者なら、頑張れと、静かに思う。


 シゲミなら――? 



 これを大義名分に何かを起こして、良い親を演じる――!! 



 数日後の放課後、時田は普通に部活の練習をしていた。そんな中――、


 聞き覚えのあるエンジン音、見覚えのある乗用車、見覚えのあるオヤジ――!! 

 1台の白いSUV に乗ったシゲミが、颯爽とグラウンド周りの道を走り抜けてきた。


「あ……、やっちまった……」


 そのままシゲミは野球部監督に、『息子が先輩にこき使われている』という旨の直談判を持ちかけた。

それが“父親として正しい行動”だと、疑いもしない顔で――。


 野球部監督は部員を調べ上げ、該当者を暫くの間、退寮処分にしてしまった。

 これを時田が 嬉しく思うわけもなく――、


「あのオッサン……大丈夫って言ったじゃん。何だってこんなコト……」


 わなわなと頭を抱えていた。


 当然の如く、他の先輩にシめらるコトとなり――、


「おい時田。高校野球だからそれくらいのこと分かるじゃろが?」

「……はい」

「先輩退寮に追い込んだんだぞ、お前?」

「……はい」

「普通親が心配することくらい分かれや」


「!!(そうか……!)」


 この時、シゲミの呪いが発動した。


『お父さんは総司を愛しているよ』


(父さんは、僕のことを想って……これじゃあいけない……!)


時田は今回の事件を酷く後悔し、『親に心配を掛けない』という意識が心の奥深く根付いた。

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