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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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9 時田寝不足、坂ダッシュが速く

 秋練は、10日間だけ続いた。

 誰もが悲鳴を上げる冬練と比べれば、それはまだ負荷は少なかったのだが、通常の練習よりは体力アップのメニューがあるだけに、苦しむ者も多かった。

 特に、1年生。

 もっと言うと、体力のない、時田。

 

 そんな中、筋肉痛等、身体の負担を軽減する為に、時田は夜、先輩のマッサージをするコトが多かった。

 そして、土日におこなわれる練習試合では、その時必要な背番号を、新チームになってからはその都度付け直していた。これは、1試合ごとに背番号を変えて、常に競争の意識を芽生えさせる為である。

 その背番号も、時田が一日2枚は縫っていた。多い時はなんと5枚である。しかも、背番号縫いが早い訳ではなく、平均より遅い。

 そして、マツダさんから、グローブ磨きやスパイク磨き、スパイクの紐通しを任せられていた。


 その結果、時田は1時半過ぎまで裏方仕事をし、朝5時に起きる生活が続いていた。眠気は、ピークを迎え……。


「ぐがぁー……」


 日中、教室では限界を迎え、ペンを握ったままノートにミミズがほうた字を書き、意識が途切れていた。

 

 時田の野球部は、授業中も居眠りは禁止である。それを破ると、どうなるのか――?

 

 野球部監督が、日中、教室を回っている。そこで、居眠りをしている部員を見つけると、周りの生徒にトントンと肩を叩かれ、ふと、廊下を振り向くと監督が投げキッスを送る。すると、長く急勾配の学校の坂をダッシュで10往復、しなければならない。

 時田はこれに引っかかり、夜な夜な裏方仕事をし、朝は朝練に参加し、日中は教室で居眠りをし、坂ダッシュをする。そして、それが終わると練習に参加してメニューをこなす。そんな生活を繰り返していた。


 その為、時田は坂ダッシュが異常に速くなってしまった(ベースランニングには活きていない)。


 それと共に体力を着々と身に付けていくのだが、ある日時田が坂の神としての頭角を現す日が訪れる。それはとある練習試合の日、思わしくない試合展開になり、監督をはじめとする首脳陣はお冠。坂を良いと言われるまで、部員全員走っていろと、言われレギュラー陣も試合後に坂ダッシュすると、いう事態に――。

 その日の試合中、時田はKと一緒にスコアボード裏のボード入れ、ボール・ストライク・アウト表示灯をカチカチやっていた。


「おい、K。……とんでもない試合展開になってきたぞ……」

「なんとかして巻き返してくれ、滅茶苦茶打て……!」


 しかし、試合の雲行きは音もなく翳っていき、最悪の試合終了の合図を迎えた。


「おい、K。……監督が吠えたぞ……」

「時田ぁ……! ペナルティが待っとる!!」


 そして――、


「ぜぇ……ぜぇ……」

「あと何本じゃ……?」


 坂ダッシュ地獄が今、続けられている。肩で息をしている者が多い中――、


「……」


 時田は前に居た部員を1人、そしてまた1人と追い抜いていき、前を走っているのは、部員中屈指の体力を持つ、現キャプテンのみとなっていた……!!

 

 ここで監督が頃合いを見たのか、はたまた機嫌が直ったのか、ゆっくりと歩いてきて、声を上げた。


「おーい、お前ら。一番速いモンが10往復したか? 全員、10往復終わったら終わったやつから上がって良いぞー」



「11往復しました」



「!? 何!!!?」


 監督の耳を疑う、もう既にノルマを超えている事実をさらりと言ってのけたのは、キャプテンだった。


「!?(キャプテンが終わったんなら、オレも終わりか……?)」


 一方の時田は、本気で20本くらいを覚悟していた。


「あー……じゃあ11往復したモンから、上がり!」


 メニューが終わる頃――、高坂さんが時田に声を掛ける。


「時田、お前めっちゃ坂速いな。途中俺、追い抜かれたぞ!」


「! あ、ありがとうございます」


 人間万事塞翁が馬とは言えないが――、時田は睡眠不足の結果、体力をつけた!!

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