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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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8 スポーツの秋、覚悟の秋、再生の秋、試練の秋、 痛 み の 秋

 夏練が終わりかけた頃――、


 新チームが始まって始めの公式戦、県の地区予選が始まった。時田は、当然ベンチ入りもできておらず、裏方の仕事に回るわけだが、相部屋の脇井がベンチ入りを果たした。と、いうのも練習中、声が良く出ており、選手を盛り立てられる存在として、抜擢されたのだ。学生寮で寝食を共にしている仲がベンチに入ったことは、時田は素直に喜ばしかった。


 地区予選のレベルは、どの高校も新チームが始まったばかりとあってまちまちで、高校によっては人数が足りずに助っ人を呼んでいるのでは? と疑われるチームもあった。その為、時田のチームはほぼコールドゲームで勝ち進んでいき、難なく県大会に駒を進めた。


 ここから県の3位までが地区大会に進み、その大会で3位以上や強豪校撃破などの好成績を残せば春の選抜に選ばれるのだ。


 県大会の日程が進んでいったある試合にて――、


 問題が発生した。


 格下相手の試合、メンバーがいまいち調子が出ず――、


「ゲームセット!」


 まさかの黒星を喫することとなった。


(まさか……何があったんだ……?)


 時田も我が目を疑う光景だった。



 ――、


 直ぐ後の全体ミーティング、監督は鬼の形相で選手達に言葉を投げつけた。


「お前達はこのまま弱いチームでいて良いのか!?」



『いえ!!』



「よし。じゃあ練習、厳しくしよう厳しく」


 監督の口調が急にトーンダウンしたのが不気味だった。


 その日から、夏の夏練、冬の冬練ならぬ『秋練』が始まった。


 そのシーズンの冬練の簡易版で、ポール間走1分以内、朝10本、夕20本。朝練から全体練習の合間でバットスイング1,000本1日のノルマとしてこなすことが命じられていた。

 ポール間走は、5,6人1組で、全員が1分切らないとノーカウントでやり直し、バットスイングは、1kgの特製の鉄の棒を100本以上振ることがノルマだった。

 バットスイングをおこなう中で、部員の手の皮が破れて、バットスインググローブは血が滲み、膝や腰にズキズキと痛みが響いた。


 ポール間走をしている最中、時田に異変が……。


「ヒュー……カヒュー……」


 幼少期、キヨコの育児放棄から、ハウスダストによる小児喘息を患っていた時田は、高校1年生の秋、未だに気管支が他者より劣っていた。その為、走りメニューに悲鳴を上げたそれは発作をおこしていたのだ。

 それでも走りメニューをおこなっている部員は一同に苦しみを共有していたので――。


「おい、時田! しんどがるのやめぇや!!」

「時田ぁ! 皆辛いんじゃ!!」

「わざと変な音出すな!!」


 時田は、発作を起こしながら理解されない二重の苦しみを味わいながら、弁明するのだった。


「いえ……カヒュー、これは……ヒュー、わざと出せません……カヒュー」


 その時、更に時田に声を掛ける者が――。


「時田!」


「!」


 中野さんだった。


「お前……ホントにヤバいぞ、それは。マジでおかしいんだったら、言え」

「あ……はい。まだ、なんとか……」


 この時、時田は思った。中野さんも何か呼吸器官に持っている、若しくは何か持っていて、鍛えた経験がある? 中野さんはピッチャー出身で、ピッチャー陣はブルペンに入らないときはずっとポール間や外周を走っている。今でこそ持久走の速い中野さんだが、発作を起こした時田の様子を、ただ一人だけ気にかけた事から、時田はそう推測したのだ。



 ――、


 練習が終わり、時田は湯船に浸かっていた。日に日に、手は破れ、関節は痛みを増していく。お風呂ではシャンプーが手に染みるが、1日の疲れを癒し、温まってからストレッチに臨むために入浴は欠かせなかった。


「……痛い」


浴槽の中。

時田は目を、閉じた。

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