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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
6章 束の間の高校編

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4 あの日々、あの夜――、あの時はただ続けていただけで、理由は後からついてきた

 時田は高校生になり、自分自身の未熟さを思い知る場面が増えた。最早、中学の時より退化したんじゃないか? という程、ダメ人間っぷりを発揮して、悪い意味で注目されるコトが多かった。


 ある日、とある事件の中心人物となり、部に多大なる迷惑をかけ、退部を考えるようになった。


『T事件』――、後に語り継がれる不祥事である。

 簡単にまとめると、時田がその風貌からからかわれて野球部のウォームアップを、同級生の皆に廊下でやらされてそれが先輩達に伝わった。その際、関与していなかったTの名前を出してしまいTがとばっちりを受ける形でシめられて、部活に来なくなってしまったというものだ。その不祥事は、念の為高野連に部長さんが通達した。


 ウソの報告をし、事態を悪い方向へ向かわせてしまった。責任を取って退部しよう。そう時田は思い詰めていた。しかしそれを呼び止める者が――。2つ上の横尾さんである。時田が発端で始まった事件にもかかわらず、


「お前は悪くない」


 と慰めてくれた。


 数週間後、Tが部活に顔を出し、その時のキャプテン、副キャプテンが交代するという形で事件は終焉を迎えた。


 横尾さんとは、夜のスイングの時間に主に世話になっていた。寮生だった時田は、夕食が終わったあたりでスイング(素振り)を練習メニューとして行っていた。横尾さんにはフォームを見てもらったり、その日の目標を作ってもらったりしていた。




「今日は30分で100本な」




 そう言われた時田は、淡々とスイングを行っていき、130本近く振っていった。


「何本振ったんだ?」


 そう問われたので正直に答えた。


「128本です」




「そうか」


 続けて横尾さんは言った。



「100本振れと言われて、100本以上お前は振った。100本は言われて振った本数で、そこから先の本数は自分で振った本数だ。それはとても価値のある、自分だけのモノだ。そうやって自分でやった練習で他のヤツらと差をつけて行こうぜ」



 この言葉が身に染みて、時田は自分でスイングをしばしば行うようになっていった。レギュラーにもベンチ入りにもなれなかったが、その時の夜のスイングの時間が、彼を支えていた。


「俺がお前にホームランを打たせてやる」


 指導される中、そう言ってもらっていた。その先輩の為にもホームランを打って恩返しをと、素振りに打ち込んでいた。


 横尾さんが引退するまでに……

 横尾さんが卒業するまでに……

 自分が引退するまでに……


 期限はどんどん延びていったが、ホームランは打てなかった。


 バットスイング(素振り)――、

 時田が“それ”に拘りを持ち続けていた理由は、以上のことから理解できるであろうが、その拘りを大学時代まで捨てなかったのは後ほどの話で――。


 さて、高校野球を始めて、時田は初の夏の大会を迎えた。

 先述した通り、時田はベンチ入りもしなかったが、ベンチ外の部員にもスタンドで役割がある。メガホンや太鼓を用いた応援である。自分のチームが攻撃の際はブラスバンド部の演奏に合わせてメガホンを叩き、演奏の合間に『かっせかっせ○○! かっせかっせ○○! かっ飛ばせー、○○!!』等の掛け声を出す。荷物運びなども勿論あるが、主には応援に力を入れてスタンドから、グラウンドの選手と共に戦う。

 この応援の準備を、背番号発表の日から数日掛けておこなうのだ。応援団長、副団長、チャンス時に踊り子の様な役をする4人、太鼓、ブラスバンド部に曲を伝える者、曲や選手のボードを持つ者等、様々な役割を決めて、応援の練習をする。動きやリズムが曲によって当然異なり、時田は覚えるのに苦戦していた。しかも時田は、その背の低さから画になるのではないか? というコトで踊り子役を任されていたのだ。

 そして大会の試合当日が来る。

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