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最凶の人生~思考盗聴器と共に生き、本当に一度死んだ男~  作者: 時田総司(いぶさん)
5章 絶望の中学編

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16 鉄の時田総司ー、無敵時田総司ー、鉄の時田総司ー、無敵ー時田総司ー

 さて、時田総司は1回の入院と、計3回の不登校を繰り返すことになるのだが、最後の不登校から3ヶ月後の冬に剣道初段の昇段試験一発合格という、人類史上初の離れ業をやってのける。あれだけ打ちのめされて、心身ともにボロボロだったはずの彼が――、である。

 時田は紛れもなく鋼の精神を胸に宿している。彼が昇段試験を受ける1日についてのコトは、後述するとして、2回目の不登校明けの時点でも“何か”による監視は、終わるコトはなかった。


「おはよう!」


「おはよう」


「おは……よう……」


「……」


 また、朝が来る……。見えない力や、父の気まぐれ等、救いの手はあったのだが、それでも日々積み重なる重圧が、時田の心身を確実に蝕んでいった。

 二学期の中間試験を終え、修学旅行の日付が迫る時、時田は監視に耐え切れず、再び不安に押しつぶされて、学校へ行くのを止めた。


「総司、電話」


 フサヨが、再び時田宛ての電話が来たと、伝えてきた。受話器を取ってみる。


「時田君どうしたの? あと少しで修学旅行なのに……」

「いいです、カンニングしました。じゃあ」


 プツン、と受話器を置いた。誰も僕の事を分かってくれない……。少し意固地になっている自分が居た。


「修学旅行くらいは、行きなさい」


 父・シゲミも学生時代の一大イベントくらいは、思い出を作っておけと言ってきた。


(回想)


「総司……人を傷つけるな、人のものを盗るな、人を傷つけるウソを吐くな。それ以外なら何をしてもいい」


(回想終了)


「……」


 あんなことを言ったくらいの父だと、半ば嫌々だったが無理矢理自分を納得させて学校に行ってみた。


 ――、

 何日間か学校に行った、音楽の授業の時、時田の体調は激変した。『ヴィブラコンパニー』という曲を聞き、後から歌うという授業だった。これは失礼だったかも知れないが、初めて聞いた時点で笑いを誘うような曲だと、時田は思えた。歌う時、オペラ歌手の様に、しかも大声でそれを歌ってみた。すると――、


「フフッ。アハハ!」

「ははは!」


 教室は笑いに包まれた。


(そういえば岸田君が言ってた……!)



(回想)


「時田も昔ナルに虐められていたよ。それで、面白く振る舞ってみたら虐めが無くなったんだよ」


(回想終了)



 そうか、こういう事だったのか……。その日からというもの、音楽の授業で大声で歌ったり、中学生しか笑わないであろうギャグをかましたりしていくうちに、心の蟠りは消えていった。いつの間にか、“何か”も使われなくなり、以前と変わらぬ生活を送れるようになっていった。


 ――、

 修学旅行は何事もなく終わった。道中、11月の沖縄と、いう何とも言えない肌寒さの中、時田だけが海水浴をしたということ以外は――。


 年が明け――、2月。時田の剣道初段の昇段試験の日が訪れた。

 この試験は、実技試験や日本剣道形の試験、そして筆記試験もある。勉強は結果こそ出していた時期はあったものの、決して得意ではなかった時田はいつも通り何時間も勉強をする等の万全の準備をし、当日を迎えた。また、実技試験は日々の鍛錬(入院によるブランクはあるものの)の成果を出せば良いとして、剣道形は新たにかたちを覚えた。

 基本的に2人1組となっておこなわれる剣道形は、普段の竹刀ではなく木刀を用いて、決まった動作や掛け声を体現するものである。打太刀と仕太刀、2つの役割をそれぞれが担い、ある種の演技の様に動きをおこなっていく。相手役は、2つ下の後輩にやってもらい、練習を重ねた。

 まずは、実技試験からだ。不思議と、緊張感はなかった。と、言うよりかは、緊張の無さすぎ――?


 何度も地獄に落ちた時田は、ちょっとやそっとでは焦りもしない、鉄の鈍感力を持つようになってしまった。


 これが、吉と出るか、凶と出るか!?

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