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最凶の人生  作者: 時田総司(いぶさん)
5章 絶望の中学編

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14 長い長い夜が明けてまた朝が来てしまう。呼吸一つすら許されない地獄の日々は続く

 遂にこの日がやって来た。時田が再び中学校へ登校する日だ。

 時田の気持ちは、もう“何か”を使われる事無く、平穏な生活が送れるのではないかという期待と、また“何か”を使われて、がんじがらめの生活が始まってしまうのではないかという不安との2つで一杯になっていた。


 もしかしたら――、

 でもやっぱり――。


 そんな感情で心は溢れていた。時田は学校の玄関のちょっと前まで、じいちゃんに車に乗せてもらい登校した。


「大丈夫なんか?」


「……うん」


 そこから先は、自分の、自分だけの力、自分の足で教室まで歩くのだった。


 ――、

 教室に辿り着いた。


「おはよう!」


「おはよー」

「おはよ」


 普段は会話もしないのに、女子達に向かって、『おはよう』を言った。挨拶は返ってきたので、少しだけ安心した。そう、少しだけ――。

 再登校初日は特に嫌なコトは何も無く、自分の心の自由が喜ばしかった。


『このままで居たい』


 時田は、久しぶりに自分が『普通』で居られる事の幸せを噛みしめていた。ずっとこのまま居られれば――。このささやかな希望はすぐに打ち砕かれる事となる。


 次の日、再登校二日目――。


 時田は昨日と同じように自分の足で教室に向かった。今日は何となく挨拶をせずに、机に向かった。カバンを整理し、ふと、トイレに向かった。用を足す。


(ふう)

「ふう」


「だってー、キモーい」

「よくトイレ行くよねー、アイツ」


「! ! !! !?」


 時田は思い知った。“何か”による地獄の日々は終わっていない事を――。時田はこれからも“何か”に苦しめられ続ける事を――。



 ――、


(……また――、だ……)


「来たよ、アイツ」

「早く来なくならないかなー?」


 再登校二日目以降、不安に思っていた事が的中してしまった。あの日以来、同級生による監視が続く。教室を離れる度に、“何か”を使われてしまう。


(頭が痛い……)

「頭が痛い」


「だってー。そのまま死なないかなー?」


 心無い言葉を浴びながら、耐え忍ぶ日々が続く。家に帰ると、その束縛からは逃れられるのが唯一の救いだった。入院による治療が利いた所為か、『家に監視してくる人が居る』とは考えなくなった。


 ある日のこと――。

 時田はどうにかしなければならない、しかしどうすればいいのか、と思い悩み、挙句の果て、呼吸ができなくなった。咄嗟に、肺付近の胸を叩いて、呼吸器官に無理やり呼吸をさせた。それを見ていたじいちゃんが言う。


「総司や、息が止まる程、何を悩んでいるのかの?」


「じいちゃん、……学校、行きたくない……」


 その翌日から、再び不登校の日々が始まった。


 監視してくる同級生が居る、学校から逃げられたものの、暫く眠れない日々が続いた。朝を迎える度に、また、朝日が昇ってしまったと、考えるようになる。


「総司、電話」


 フサヨの声。時田宛ての電話が来たと、伝えてきた。受話器を取ってみる。


「総司君、学校来てくれないと、大会出られないよ。早く元気になってね」

「……うん」


 U君からの電話だった。

 翌日、翌々日と、学級の同じ班だった同級生から電話が来た。最後の班員だったユマからは電話は来なかった。やっぱり、病気や勘違いじゃなく、“何か”が存在しているんだな、と時田は再確認した。

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