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最凶の人生  作者: 時田総司(いぶさん)
5章 絶望の中学編

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11 こんなところでこんな人たちとこんな生活をするこんな中学生

「時田君! ちょっと……」


 放課後、時田は保健室の先生に呼び出された。


「自分の机の上に、何か書いてあったけど、自分で書いたの?」


「……はい」


「! ……今からお父さん呼ぶからね」


「……」



 時田の父・シゲミが家から車で学校まで来た。シゲミがへこへこと教員達に頭を下げる様子をおぼろげに見つめていたら、時田は車に乗せられて帰るコトとなった。



 翌日――、

 時田は精神科に連れていかれる事になった。その病院はY病院と言う病院だ。Y病院の入院患者が居る病棟は、入院患者が汚物を垂れ流している所為か、異臭がしていた。


 病棟を見せられて、こんなところですが、入院しますか? と問われる。僕に与えられるのは罰だ。死刑にされてもいい。そんな、自己否定の塊の様な感情を抱いていた時田は言うのだった。


「はい。入院します」


 病棟に入ると、看護婦さん達が居て、涙を流していた。どうやら、時田が入院したことで、入院患者最年少記録が更新されたらしい。泣いている看護婦さん達を見て、時田は何故がちょっとした怒りも込み上げてきた。


(いい気なもんだ。そっちは泣いていればいいだけだもんな。人の気も知らないで)


 看護婦さん達が泣いたところで、時田の感情はポジティブな方向には傾かなかった。そして、急に強気になっている自分が居た。


(まあこれも、社会見学、社会見学。いい経験にしよう)


 時田の思考は完全に間違った方向へ向かっていた。入院を罰と見て、入院する病棟を刑務所か何かと見ていた。それが正しい判断ではない。実際、入院する事で彼の状態は良くなっていくのだから――。



 病棟内を進んで行くと、おおよそ、普通の考えができていないであろう人が、半分くらい居た。地べたに寝転んでいる人、ブツブツと独り言を言い続ける人、壁に文字を書き続けている人、廊下を歩き続ける人等、様々な“特殊”な人達が居た。中学二年の時田は流石に、やや恐怖しながら自分の置かれている状況を再確認した。


(これらここで暮らすんだ……)



「ここですよ」



 看護師さんに、入院する部屋へ案内された。


 そこは時田を含めて、3人が入院生活を送る部屋だった。時田の他に、30代くらいの大柄の男と、70歳以上は年を食っている老人が居た。


 これから時田は、初めての精神病棟での入院生活を送る事となる。



(暇だ――、何も、無い――)



 入院生活は、至ってシンプルなものになりそうだ。ご飯が来て、寝て、起きて、またご飯が来る。ただ、それだけのものだと、時田は思っていた。すると――、


(ん?)


 どこからともなく、煙たい感じの空気が、流れてきた。コホコホと、咳込み、辺りを見渡す。すると、大柄な男が、病室でタバコを吸っていた。


 幼い頃に、母親の虐待が原因で小児喘息を患っていた時田は、人より気管支が弱い。副流煙で呼吸がしづらくなる事もあった為、この状況は厄介だった。時田はナースステーションへ足を運んだ。


「タバコを部屋で吸っている人が居ます」


「まぁ、伝えてくれてありがとう」


 一言だけ伝えて、看護師さんと一緒に部屋に戻った。

 タバコが見つかり、どやされる男。どうやら、ナースステーションの正面に喫煙室がある様だった。さて、これで逆恨みされないか、少し不安だ、そう時田は思っていた。


 小一時間程経っただろうか……? 老人が何かよく分からない言葉を発していた。


「こげちゃいろ、こげちゃいろぽっぽ。こげちゃいろ……こげちゃいろぽっぽ。……こげちゃいろぽっぽ。……こげちゃん、居なーい!……こげちゃん、居なーい!」


「うるせぇ! そんなもん居るか!!」


 すかさず男が怒り出した。


「……」


 老人は喋るのを止めた。


 こんなよく分からない人たちと何日、いや、何週間一緒に居なければならないんだろう? もしかすると、何カ月も一緒に居る事になるかも知れない。

 そう不安になった時田は気晴らしに廊下を歩いてみた。すると、目がやけに大きい老人に出会った。


「こんにちは」


 何となく挨拶してみる。


「おう、調子はどうなんだ?」


「少し良くなりました」


 当たり障りのない言葉を返した。すると、




「ならさっさとここから出て行け!!」




「! ! !?」


 時田は怒鳴り散らされた。ひとまず、ぺこりとお辞儀をして、その場を離れた。


(もしかして、患者さんのあの人もあの“何か”を使っているのだろうか? 社会見学とか考えてしまったから……。まあ、それは無いか。それだったにしろ、僕の様な中学生が入院して来ること自体、あの人にとっては冷やかしに思えたのだろう)


 そう感じ、時田は他にも考え事をしながら廊下を歩いた。相変わらず、異臭が酷い。


 その後その日は、特に何もなく、夕食を食べて寝るだけだった。

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