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最凶の人生  作者: 時田総司(いぶさん)
5章 絶望の中学編

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5 一死は大罪を赦すか――?

 課外授業の日――、時田はホロコースト記念館に来ていた。


 本記念館は、ナチス・ドイツによるホロコーストについての博物館である。ホロコーストとは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツがドイツ国内や占領地でユダヤ人などに対して組織的に行った絶滅政策・大量虐殺を指す。当時ヨーロッパにいたユダヤ人の3分の2にあたる約600万人が犠牲となった。


 時田の通っている中学は、地元柄平和学習に力を入れていた為こういった施設に見学に行くことがあった。1つ上の3年生と、1つ下の1年生たちと一緒に、真ん中の2年生として課外授業に参加した。そこで彼は写真などの様々な資料と、館の責任者の様々な言葉を聴いた。時田の中で、特に印象に残ったのはアンネという少女の写真と、ある言葉だった。


 アンネという少女が自分よりも若くしてアウシュビッツ収容所に入れられて、迫害を受けて病死したというのは『自分よりも不幸なヒトが昔、居たんだ』という意外な気づきが、慈悲の心を産んだ。彼女の写真は時田の心に深く刻まれた。


 責任者は中学の生徒や教員を40人くらい人を収容できる部屋に集め、長話を始めた。時田は始めしっかりと聞いておくつもりだったが、余りにも話が長かったため、よそ見をしてしまった。その時――、



「!」



「ごがぁー……」

「ぐぉー……」


 背の高い双子の先輩が、寝ていた。時田は我が目を疑った。同時に、強い憤りを感じた。


(平和学習の一環としておこなっている課外授業だぞ!? なんて太々しい先輩なんだ!!)


 そして、『人の振り見て我が振り直せ』自分はあんなのにはならない様にと、気合を入れ直し、責任者の言葉を耳に入れようとした。



「ヒトラーは幼少期、酷い虐めに遭っていました」



「!?」


 ホロコーストをおこなった、あの血も涙もない様な男が虐めに……!? 時田は雷に打たれた様な気になり、目を見開いてその続きを聴いた。


「ヒトラーは鞭で叩かれる、石を投げられるなどの虐めに遭っていました。そして、彼を幼少期に救った者は、誰一人としていませんでした。誰か彼に手を差し伸べる者が居たとしたら、ホロコーストという名の大量虐殺は歴史上おこなわれなかったのかも知れません」


 時田は、どんなことにも原因や理由があると、理解した。そして、同情してしまった。約600万人を犠牲にした、大罪人に対して――、


 その夜、眠りに就くことができずに時田は考え込んだ。


(気が散っていたのに……何で僕はあの人のあの言葉を聴きとれたのだろう……? それと……)


 ふわふわとした、不思議な感覚が胸に残っていた。


(何だ……この感覚は? 何故か懐かしい様な気分になる……。ヒトラー、テレビで数回見ただけの時は何も感じなかったのに……何処かで、遠い昔に彼のことを知っていた様な気持ちになるのは……何故だろう……?)


 このお話を熱心に読んでいる方はご存じの通り、

 時田は、幼少期から残虐な痛みを受け続けている。ヒトラーと、その点で共通点を見出しただけか――、はたまた、彼とヒトラーとの間には何か密接な関係があるのか――? それについては少しだけ、この後の物語で触れることとなるだろう。

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