4 女子との会話のネタが欲しいから友達を売るクズ(しかも恐らくアダルトサイトも見てる)よりも、自らの立場を失おうとも友情を優先するキミを大切にして生きていこう
「!? ――」
『終わった……』
時田は瞬時にそう悟った。
(ナルは噂と陰口が大好きで、常に人をイジメていなければ気が済まない、イジメ体質――。僕は今日からアイツにイジメられる……)
頭の中が真っ白になっていた頃、追い打ちをかけるようにユマがこちらを見つめていた。
「……。サイテー」
「!」
普通の女子に言われるならまだしも、その辺の芸能人よりも顔立ちが整ったユマから掛けられた言葉には破壊力があった。
(最低……さいてい……サイテー……確かに……、な)
それまでは真面目に勉強し、成績が常にトップの優等生。
しかし今では一転してアダルトサイトを閲覧するヘンタイ。
時田の評価は正に天から地に落ちたと、言った具合だった。
「時田君!」
「!」
気付けば、岸田君が真剣な表情をしていた。
「カツヒコはあんなだけど、『僕もアダルトサイトを見た』ってナルちゃんの前で言っておいたよ」
「!」
時田は感動した。
涙が溢れ出すかと思った。
こんなにも友情を大切にする人が、この世に居たんだ……。女子との会話のネタが欲しいから友達を売るクズ(しかも恐らくアダルトサイトも見てる)よりも、自らの立場を失おうとも友情を優先するこの岸田君に一生ついて行こう……。時田はそう、心から思った。
「岸田君! ……それで、ナルは……何て?」
「特に何も。時田も気にしないコトだよ。じゃ」
岸田君はそう言うと、軽く手を振り自分の席に歩いて行った。
(気にしないコト……そうか……)
時田は少しだけ目の前の靄が晴れた気がした。
しかし――、
翌日以降、時田は人生最初の地獄を見るコトとなる。
「あっ、エロサイトの子だ」
「うわっ、変態が登校してきたよ」
アダルトサイトを見たという噂話が、ナルの手(口?)によって瞬く間に広がっていき、学校中に知れ渡った。時田は日が経つにつれて元気を失っていった。
(死にたい……。若しくは、どこか遠くへ逃げたい……)
顔色は暗く澱んでいった。
「今日も居るよ、エロサイト小僧」
「早く死ねば良いのにねー」
教室にはナルをはじめとした、陰口女子集団が居り、時田を罵倒していた。
「……」
時田はある日、カツヒコの元へと歩いて行った。
「!」
岸田君は、危機を感じ、時田の傍に行き、肩を掴んだ。
「時田!」
「大丈夫、だから……」
「!」
時田は薄ら笑いを浮かべながら、岸田君に答えていた。岸田君の制止を振り切り、時田はカツヒコの元に辿り着いた。
「カツヒコ君……」
「な……、何?」
「カツヒコ君がバラした件は僕、恨んでないから」
「!?」
「!」
その発言にカツヒコはおろか、岸田君でさえ虚を突かれていた。
『喧嘩になるのでは……!?』
岸田君の心配は杞憂に終わった。
「ふ、ふぅん……」
カツヒコは右手で頭を掻き、極まりが悪い様な表情をし、何処かへ歩いて行った。
――、
『人が慣れる』という性質を持つのは、恐ろしいコトで――。春、時田は平然と中学生に通っていた。
(あの冬、僕は地獄に落ちた。もうあれ以上の試練は無いだろう。何でも来い!)
時田は強さを手に入れていた。と、同時に……
「あー、人の不幸でしか笑えなくなったわー」
中学二年の春、教室でそう呟く時田。心が汚れてしまっていた。
“あれ以上の試練は無いだろう”
時田はそう確信していたが、これから様々な年代、時代において、彼は地獄と言う地獄に遭遇するコトとなる。




