3 双つの峰が、なめらかな艶を纏ってそこに在った。呼吸に合わせて、豊かな稜線がゆるやかに揺れた。
1学期、2学期と、月日は矢の様に過ぎて――、
時田の住む地方は、ちらほらと雪の舞う冬を迎えた。相変わらず、定期試験はしんどいが、充実感もあった。佐藤がいつもの様に話し掛けてきた。
「さっすが天才! 今回もトップだったね。どうやったらそんなに勉強ができるの?」
「!……」
来た――!
時田は少し視線を逸らしながら、言った。
「頑張って一杯勉強したら、皆だっていい点とれるよ」
「それができないんよー、困ったコトに」
「!」
彼の理想と現実のあいだには、埋まらない間が横たわっていた様で――、
ある日、パソコンを動かす授業が始まった。
それはブラウン管の分厚いデスクトップパソコンで、現在の様な薄型が信じられないほどスペックが低いモノだった。
「因みにこのパソコンは職員室と繋がってるから、いかがわしいサイト見に行ったらばれっからな?」
教師は生徒全員にくぎを刺していた。
しかし――、
カタカタカタカタと、キーボードを叩く者が……。岸田君だった。オープンスケベだった岸田君が取った行動は――?
「時田君、ちょっと……」
「?」
岸田君は時田の肩をちょいちょいと叩き、自分のパソコンの方へ連れて行った。岸田君が見せた、そのディスプレイには――、○○や○○○がおっぴろげで映っていた。
「! ! ! !?」
時田は体の一部が大きくなりそうになった。
(き……岸田君! コレはまずいんじゃあ……?)
(大丈夫だよ。この人達は仕事でやってるんだ)
ひそひそと周りに聞こえない様に、時田と岸田君は会話を交わした。
「! ……」
教師がこちらを向き、歩いてきた。
(先生が……! 来た来た来た来た!!)
(大丈夫)
岸田君はそう言うと、右上の×を颯爽とクリックして全てを消してのけた。
(!?)
岸田君は自分が思っているよりも、ずっとスゴイ人なのかも知れない、そう時田は思った。
(これだけじゃないよ?)
(?)
はてな顔の時田をよそに岸田君はマウスを動かす。
(右上の……ちょっと下! 履歴、これを消しとけば完璧さ!)
(よ……、用意周到だね……)
時田は只々、たじろぐばかりだった。そんな授業があった後の、放課後――、
自宅にて。
時田の自宅にも、パソコンはある。ネット環境もある。
「……!」
気付けばパソコンの電源を入れていた。ネットも、古くさいジージーという音が鳴った後、漸く繋がった。
「……」
時田は、検索エンジンに、『巨〇』と、打ち込みそこに広がる光景を、目に焼き付けていた。
「も……、モザイクが無い……」
『これを皆に教えてあげよう!』
時田は、善意(?)で、ノー〇ザサイトをクラスの男子に教えてあげるコトとした。
翌日――、まずは、
「岸田君! おはよう! 昨日、凄いサイト見つけちゃってさ」
「藤田君! おはよう! ……」
「春俊君! ……」
「カツヒコ……」
これが、迂闊だった。無償で、情報を、男のロマンを皆に知らせて回ったのだが、その恩を仇で返す者も居て――。
「おーっす! ナルちゃん、時田がさー」
ある朝、岸田君が時田に話し掛けてきた。
「時田、この前言ってたサイト、凄かったよ。何て検索したんだい?」
「きょ……、『巨〇』」
「ぶっは!」
「フフッ!」
「僕も何か見つけたら教えるよ。じゃ」
時田は岸田君に手を振りながら思うのであった。
(こればかりは、男にしか分からないよなぁ。
皆に知らせて良かった)
皆に知らせるんじゃなかった
この数週間後、時田は考えを180度一転させるコトとなる。
「おーっす! ナルちゃん、時田がさー」
あの時、あの者の発言は、アダルトサイトを見たコトを、女子に口添えするモノだったのだ。
「ざわっ」
ある日の朝、学校へ行くとクラスメイトの女子達が時田を白い目で見てくるのが分かった。
「?」
特に気にもせずに自分の椅子に座った時田だったが、岸田君の言葉で心境が一転した。
「時田君、カツヒコがナルちゃんに、アダルトサイトを見てたコト、話したみたい」




