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最凶の人生  作者: 時田総司(いぶさん)
5章 絶望の中学編

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2 『努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない』なんて迷いなく言ってみたかったなぁ

 地獄の様な、利き手と逆の手で勉強する罰ゲームの様な日々は、およそ一週間くらい続き……




「あぁぁああ!! もう!!」




 時田のストレスは限界を迎えていた。だがそれとほぼ同時に、定期試験の二日前くらいに、包帯を取る瞬間が訪れた。


「痛みますか?」


 外科医の言葉を聞いた時田は右手をグー、パーと、握ったり開いたりしてみる。ジワリと、少しだけ間接の軋みと、神経が刻まれた様な痛みがしたが――、


「大丈夫です……」


 珍しくウソをついた。心の根底には “もう、左手で勉強したくない”その切なる思いが沸々と込み上げていたからである。


「お大事にー」


 病院を後にする時田だったが、右手をふと覗いてみる。突き指した中指には白いスジの様なモノが浮かび上がっていた。これ……大丈夫なのかと、時田は外科医を心から疑った。


 さて、試験当日! 


 痛む指、それでも堪えながら時田はシャーペンを握った。


「始め!」


――、


「そこまで!」


 小学校時代には無い、緊張感がそこにはあった。だが、不思議とそこには高揚感があった。教室の時計の針が動くのを見ながら、ペンを進める。分からないと、ペンを止めた数秒後、不意に答えが浮かび上がってくる。一週間の努力は無駄ではないと、時田は自信満々に試験を受けていた。


『努力』――、


 時田がジャン〇の漫画で好きなキャラはロッ〇・リーとキ〇だった。〇バは知らないが、ロッ〇・リーは努力の人。


『才能なんて、努力で覆してやる』


 中学に上がる頃からそう思い続けていた時田は、野球は……だったが、勉強だけはがむしゃらに努力、努力でやりきる気だった。だから、好きだったゲームは試験期間中、一切しなかったし、テレビもニュース以外見ない様にしていた。さて、試験結果が返ってきた。



国語100点、


数学100点、


英語100点、


理科9×点、


社会9×点! 




平均、96点!! 




「っしゃああ!!」




 心の底からの雄たけびとガッツポーズが自然に出た。


 それはクラストップの成績で、時田は辺りに囃し立てられた。


「おお!」

「やるな!」


 ナルはさぞ、快く思わなかっただろう。




「スゲー、天才じゃーん」




「!? ――」


 ピクリと、その言葉は時田の耳に触れた。


「天―……、才……?」


 その言葉は時田にしっくりとこなかった。




 数日後――、


 小学校から続けている習い事の剣道、毎週月曜日の夜に道場に通っている時田だったが、習い事の終わりに一年上の先輩ユイさんに話し掛けられた。


「定期試験、どうだった? 難しかったでしょ」


「平均、96点でした」


「うっわすご! 天才じゃん。頑張ったね」


「あのっ! でも……」


「?」


「どれだけやっても不安だったから、土日に平均8時間くらい勉強してました」


「すごーい。じゃあ、




努力家なんだねー」




「! ――」




『努力家』――? 




 時田はうれしくてうれしくて、もじもじとしながら軽く、挨拶した。


「ありがとう……ございます……」


 その日、床に就くときに時田は物思いに更けていた。




『努力家なんだねー』




 努力――、


 一生懸命勉強して、それが結果に繋がった時、心の底から嬉しかった。これは素晴らしいことだ。クラスの皆と“コレ”を共有したかった。


「そうだ!」


 何でそんなに勉強できるの? と聞かれたら、皆も頑張って勉強すれば努力は報われるよと、言える人間になろう。そう心に決めながら時田は静かに、眠りについた。

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