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最凶の人生  作者: 時田総司(いぶさん)
4章 小学校の真実

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8 承認欲求がお高い方程、「ブルータス、お前もか……」ってしょっちゅう絶望するんだ

 イスの裏に書かれていた、『バカ』の二文字――。


 これを担任が見つけ、必死に消しゴムで消そうとしていた。それを時田が見て、油性マジックは消しゴムじゃ消せねえだろと、どこか冷めた目つきで視線を送っていた。担任はそのイジメの実態を帰りの会とかでは話に出さず、うやむやなままイジメ(それ)はもみ消された。時田は、なんだ。この教師も大したことないなと、見切りをつけた。


 イジメグループの主犯格は、ナルだ。続いてナンバー2はユマ。他は例の、トイレに行ったら陰口を言う、言われるの二人だ。


 ナルは、見るからに性格が悪そうな顔をしている。ナンバー2のユマはというと、誰がどう見てもブスとは言えなかった。




(回想)


 四月――、


 新しい小学校に通って初日の日、時田は我が目を疑う光景を見た。


 今まで見たコトない、美人が居る――。それが、ユマだった。


 そんな時田の様子を見て、岸田君はすぐに時田に話し掛けた。


「やあ。僕は岸田って言うんだ。ビックリしただろ? ユマちゃん、その辺の芸能人よりキレイでしょ」


「確かに……可愛い……」


 それから数日後、ユマが時田のすぐそばに近寄ってきた。思わず時田はドキッとして、胸の高鳴りを抑えられなかった。1、2秒後――、




「アッハハハハハ」




 ユマは時田の額の染みを指差してあざ笑った。


(んだよコイツ、顔だけかよ!!)


 その染みが、例の火傷傷で父・シゲミによるものだというコトはその場にいる小学生にはもちろん、物心がついた時田本人の記憶にはなかったのだが……。


(回想終了)




(ユマ、顔は良いんだけどなぁ……)


 イスの件について、ユマも加担しているというのは火を見るよりも明らかだった。


 その時、騒ぎ声が聞こえてきた。




「やい! ○○」


「うっせぇ! ××」




 男子達による教室内を飛び交う罵声を耳にし、時田はフーと、溜め息をつき思うのだった。


(そもそも、この学校に、善人なんて居ない……か)




「時田、ちょっと!」




「!」


 不意に、ナルの弟が話し掛けてきた。




 ナルの弟――、


 それは陰口をよく言う、イジメの主犯格ナルの、双子の弟だ。一卵性双生児か、二卵性双生児かは知らないが、姉弟のペアの双子は、時田にとってド田舎でも珍しい存在に思えた。


「何?」


「U君が、お前のコト、同級生で一番嫌いだって言ってたよ」


「!?」




 U君とは――、




 前の学校でも一緒だった、たった一人の同級生の名前である。


(スシマが母親のコトを皆に言いふらしていた時、教えてくれた、たった一人の同級生である、U君。あんなに優しいU君が――)


 時田は少々、ショックを受けていた。




「なんでも、『昔からの付き合いだから』だってさ」




「! ――」


 心当たりはあった。




『何でそんなにバカなん?』


『何で宿題やって来んの?』




 小学校1年の頃の心無い言葉――。


 それは時田がU君に対して言い放った言葉だった。今となってはそんな言葉は言わないのだが、言われた側も、言った側も結構覚えているものだなと思いフーと、息を吐いた時田は言った。


「そりゃそうだよな」


「?」


 ナルの弟は、首を傾げていた。




『同級生で一番嫌い』




 そう言えば、ケンカでも起きて盛り上がるとでも思っていたのだろうか? 達観していた時田は遠い目をしていた。




 人の振り見て我が振り直せとはよく言えたもので、




 生徒同士で口喧嘩が絶えない。イジメがある。言葉遣いが悪いヤツばかり。ガキが多い教室の後ろの方で、人間観察をしていた時田は、自分はああ成らない様にしようと思っていた。そんな頃に来た『同級生で一番嫌い』という言葉――。それは時田の胸にグサリと突き刺さった。


(そう言えば、U君、小学校3年生の時から走るのが早くなってたっけ)


 不意に時田は昔を思い出す。




(回想)


 小学校3年生の時のかけっこの授業。人生で初めて、時田はたった一人の同級生に負けた。


「もっ、もう一回!」


 仕切り直して、再び100メートル走をする。


 距離が進むにつれて、どれだけホンキを出しても、どんどん、どんどん離されていく。時田は次第に、自分から足を進めるのを止めている自分に気付く。100メートル地点では、体数個分も離されてゴールした。


 何かあったなと思い、時田は他の生徒に話を聞くと、その子は野球を始めていた。


(なるほど、野球をするために走って鍛えたんだな)


 子供ながら、考えて納得した。


 しかし、一向に宿題をして来ない同級生。しびれを切らした時田(時田は母ちゃんか、なんかか?)は言った。


「何で勉強せんのん? 野球やっててもプロ野球選手になれるかどうかも分からんのに」


 するとたった一人の同級生は答えた。




「野球ばっかりやってるのは、……野球が好きだから」




 その屈託のない笑顔にやられた時田は、何も返す言葉が無かった。


(回想終了)




(U君はあと一年くらい先に、中学生になって、野球部に入るんだろうな。僕はどんな部活動をするんだろう……?)


 それは希望も不安も無く只々シンプルな、時田の1つの疑問だった。

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