2 最も学術的でない、少し捻った発言はやっぱりコレ。あーだこーだ言った後の、『と、いうのはウソで……』
「10……」
神がその数字を口にした時――、世界の果て……ここから遠いどこかで、彼が呟いた。
『許さん……』
彼はその胸に、呪われた使命の底で、なお燃える正義の灯を静かに燃やしていた。
神は数字を数える事を止めない。
優等生の『14』……
真の人気者『25』……
願いが叶う『27』……。
吉兆の数字もあったが、中には不吉な数字も当然の如く在り……。
憎まれ口をたたく『29』……
引き立て役に終わる『34』……
大怪我をする『53』……。
数を数えれば数える程、問題は発生し都会のビル群の様に積み重なり聳え立っていった。
『98』
『おい……』
『99』
『いい加減に……』
『……100』
『殺す……!!』
神が100を数え終わった、刹那――。
『89』の番号を数えた位置から、神以外で一番最初の魂が発生した。その名も、始まりの魂『やきう』。神が数を数える時、そのターニングポイントで度々呻き声のような声を上げていたのは彼だった。彼は終わりの数字『10』がもたらす不吉、数を数える程に発生する問題を、今後の未来を想う彼は看過できないモノと見なしていた。
災いを起こす、アイツを止める――、その一心でやきうは神に拳一つで特攻していった。
時を同じくして――、
『1』の場所に二番目の魂が、
『14』の場所に三番目の魂が、
『79』の場所に四番目の魂が順を追って産声を上げた。
その後間髪入れず、三番目の魂、『なご』は二番目の魂、『にゃかにゃかにゃん』に恐怖した。
神は、今後訪れる災いよりも、好奇心や背徳感からくる快感を優先する悪だ。この世界が始まって、何度も星の歴史が生まれては消えてを繰り返す程、途方もない時が流れる中で、世界の神、もっというと初代神は、戦争を始め、戦争を赦し、戦争を続けさせた。あの日から幾つもの時が経った現代でも、戦争や紛争が後を絶たないのは、初代神の仕業である。
そんな悪と、対称的な存在――、初代神が雌の悪なら、にゃかにゃかにゃんは雄の悪だった。そんな存在に、なごが全身で生命の危機を案ずるほどの悪寒を感じ、声にならない叫びを響かせた。その叫びが、偶然かはたまた必然か――? やきうの耳に届いた。
が――、鬼の様な神速で正確な判断力で場を察した彼は拳を突き上げ神へと飛び掛かる最中に一言、放ったのだった。
「今はほっとく、後で助ける!!」
「!?」
その発言が理解の範疇を超えており当然、納得がいかないなごは薄っすらと眼を滲ませながら嘆くのだった。
「今助けてよー!!」
――、
神は、自らと数字の間に遥かな距離を置いていた。最初に数えた『1』、今の『にゃかにゃかにゃん』の本性――、その心の奥に潜む闇を恐れたからである。その遥かな距離を両脚のひと蹴りで飛び越えるやきうは神の懐へと寸での所まで迫っていた。
「!!」
危機を感じた神は――、
「待って! 話をしましょう」
「?」
会話という平和的解決策に躍り出る――、様に“見えた”。そこでやきうは蹴りの勢いを緩め、神のその唇から伝う振動を、耳を済まし受け取ろうとした、直後――!
「と、いうのはウソよ!!」
今度は神の拳がやきうの頭部を襲った。ドドッ!! 世界が割れる音がした。
誰もが敵う筈もない力を持ち、全ての頂点に君臨する存在、神――。その神がただ一点へ、全てを集約させて放った渾身の一撃――。やきうにその一撃が与えられたのだ。
神が居る場所まで遥かな距離を一瞬で跳びやってきた。だが、そこから遠ざかり、元居た遥か遠くの数字の場所まで落ちていくのもまた一瞬だった。
世界が神の一挙手一投足により移り変わる――、数字の場所は横一本の線が引かれたかの様に1から100まで仕切りが出来上がっていた。その仕切りの下の方まで殴り飛ばされていたやきうは。仕切りまでぷかぷかと浮いてきた。
「俺、アイツに勝てないかもしれねぇ……」
酷く意気消沈していたやきうだったが、彼の予想とは反し、彼自身神を一撃で倒せる力を、実のところ持っていた。
神が、話し掛けなければ――
彼が、ウソに騙されなければ――
世界はこの時、正しい方向に回り始めていただろう。
教科書の通りに自由や平等というものが、信号機の様に灯り誰もが正しく生きて行けただろう。




