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最凶の人生  作者: 時田総司(いぶさん)
4章 小学校の真実

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2 今日から僕は真っ直ぐに、矢印みたいに真っ直ぐに、生きていこうと決めたので『ありがとう』などいりません

 母キヨコが離婚して、居なくなって悲しかったか――?



 時田の答えはNOだ。



 居ても居なくても一緒。掃除、洗濯、料理をはじめとする一切の家事をせず、実家の離れから顔を出さないコトも多かった。


 キヨコが離婚して、攻撃対象が居なくなっても口喧嘩の絶えない実家だった。


 シゲミとヒデシがケンカする。

 シゲミとフサヨがケンカする。

 シゲミとマサヨがケンカする。

 ヒデシとフサヨがケンカする。


 シゲミが多くの割合をもってケンカしていた。だが、一番血の濃い関係のシゲミ。そして、


『父さんが居なければ僕は死んでいた。父さんは命の恩人だ』


 衰弱しきっていた時田を病院に連れて行ってくれた父には、心の底から感謝していた時田だ。ひとえに『父が悪い』とは言わなかった。そう、信頼していたのだった。()()()()()()()()()()()()()()。しかしそれでも――、



(毎日毎日、ケンカしてばっか……疲れないのか?)



 時田は流石に家族全員に対して呆れ返った様子だった。


 ある日――、


 時田は『ポ』の付くモンスターのゲームにどっぷりはまっていた。朝から晩まで、憑りつかれたかの様にカチカチとボタンを押していた。ふと姉かの子に、期待一杯でワクワクしながら、目を輝かせて聞いてみた。


「〇リンと〇ッピ、どっちが好き?」


 すると、目が血走ったかの子はとんでもない返答をしてきた。



「うるさい、黙れ! 死ね!! 私は今、宿題で忙しいんだよ!!」



「!? ――、」


 10歳もいかない、いたいけな弟の可愛らしい質問、それをとても姉とは思えない暴言で彼女は返したのだ。その日から時田は姉のコトを大嫌いとなった。

 かの子と一緒に、歯を磨くコトもなくなった。家に居るのは、入れ歯のマサヨやフサヨにヒデシ。シゲミは三交代で決まった時間に家には居ない。かくして、一緒にハミガキをする家族が居なかった時田、近未来に全部の歯の半分くらい、虫歯になってしまう運命が決定づけられた。


 さて、時田が小学校2年生、秋の時の話。


 時田達は生活科の授業を受けていた。昭和から平成初期にかけて、小学校でおこなわれていた幻の教科だ。今回は前々から育てていたお芋を、枯葉で焼いて食べる様だ。

 生徒達は期待に胸を躍らせていた。


 ――、


 一同は畑に辿り着いた。その秋晴れの秋晴れの空のように、からりとした爽やかさで空担任が声を上げる。


「皆居ますね? それじゃあお芋を収穫しましょう!」


 十数分後――、


 サッサッと、生徒達はほうきで枯葉を集めていた。これに火を点けてお芋を焼くらしい。


「皆ぁ―、これからアルミホイルを巻いたお芋を焼きますよー」


 担任の一声で、焼き芋作りが始まる。

 

 ――、

 数十分、芋が焼かれた。


「そろそろ頃合いかな? 皆、お芋を取り出しましょう」


 ほくほくの焼き芋が出来上がった。皮を割った途端、香ばしい湯気が立ちのぼる。焦げ目の奥に潜んだ甘い香りが、鼻腔をくすぐった。


「はふっはふっ」

「あっちぃー」

「熱いけどおいひーぉ」


 生徒達は、はしゃぎながら焼き芋を食べる。


(旨いなぁ……)


 時田も静かに焼き芋をたしなんだ。


 数分後――、


「あー、美味しかった!」


 生徒達は全員、焼き芋を食べ、教室に帰ろうとしていた。


「!」


 時田は気付いた。芋を掘る際に使ったスコップ類が、そのまま片付けられずに放置されているコトに――。


(仕方ないな)


 時田は一人でそれを片付けるべく、スコップ類を5つ、よっこらせっと手に持った。



「あっ!」



「!」


 時田は振り向いた。『あっ』という声のする方へ――。


 そこには片付けられずに残ったスコップに気付いた、サチコの姿があった。残るスコップ類は3つ。女子でも容易に片づけられる量と、時田は判断した。時田は残りのスコップ類をサチコに任せ、5つのスコップ類を片付けた後、教室に戻った。


 その日の帰りの会――、


 担任が興奮した様子で話を始めた。


「サチコちゃんだけが片付けに気付いて!」



「!!」



 時田は驚愕した。『サチコだけが?』片付けたのはサチコだけではない。僕も片付けた、なのにどうして? 時田の頭にはそういった言葉が浮かんでいた。むしろ時田は先に片付けていて、サチコはそれに気付いて、時田に触発されて片付けをした。しかも、時田は5つ、サチコは3つのスコップ類を片付けており、時田の方が多くのスコップ類を片付けていた。


 小学校二年生だった時田は、『良いコトをしたので褒めてもらいたい』という当たり前の感情が至極当然湧き上げてきた。


「センセー、僕も片付けを……」


「それでねー、サチコちゃんは……」



「!!」



 担任は時田をガン無視して話を続ける。


「ちぇっ。僕も片付けたのに……むしろ初めに動いたのは……」


 時田はぶつくさ呟いていた。


(き……気まずい……)


 女子サチコはそっと思った。


「くっそ、何で僕は……」


 時田は未だに呟いていた。


『良いコトをしたので褒めてもらいたい』


 当たり前の感情を持った時田は不服だった。せっかく自分から動いたのに、担任は気付いてくれないのか? 担任を見る。


「それでね、……」


 相変わらず時田はガン無視されていた。


「くっそ……」


 時田は下を向いた。


 すると――、



「黙りなさい!!」



「!?」



「私が話しているに! ぶつくさぶつくさと!!」



「!!」


 当時小2の時田は泣きそうになった。



「黙っときなさい!!!!」



「!」


 時田はまた、下を向いた。そして時田は学んだ。


『誰が、どう見ても、他人にとって良いコト、善行を行ったとしても、褒めてもらえるとは限らない』


と――。

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