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最凶の人生  作者: 時田総司(いぶさん)
3章 虐待編

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5 自殺をしてはいけません、自殺をしたら3年間溺れ続けます。気絶することもできませんby細木〇子

 この世で最も大切にするべきは自分自身である。人生、振り返ってみた時、頑張っていた自分をよく知っていて、褒めてあげられるのは自分くらいだ。


 こんなことを誰かが言っていた。これは事実である。生きるという行為は苦難に満ちている。老い、病、飢え、痛みetc. 生きる上で、歳を重ねる上でそれを避けては通れないからである。

 そんな中、自分を犠牲にしてまで他人に尽くして、その結果他人が自分にその恩を返してくれるとは限らない。これが、悲しくも世界の真実である。だから自分を大切にする。よって、自殺という行為は最も避けるべき行為である。


 齢0歳4カ月で自殺を考える様になった時田は、この真実を知らなかった。


 どうにかして死んでしまおう。消えてしまおう。この世に生を受けてから、現世の罰では説明のつかない痛みに、終わりなく身を苛まれてきた時田はそう心底願う様になっていたのだ。



 自分自身を大切に――。



 シゲミの実家から、社宅へ帰ったある日、0歳5カ月の時田に、救いの声の様なものが左脳の後ろ側から聞こえてきた。


『おい、大丈夫か?』


(!?……誰だ!!)


 それは低くくぐもる声色だった。


『俺はお前だ。35歳のお前だ。今、虐待されて殺されたりしてて大変だろ?』


 核心を突いていたその声は誰でもない自分の声だとはっきりと理解できた。


(……。そうだ、死にたい)

『死ぬな、絶対に死ぬなよ? そうだ、あの婆さんを見方に付ければ良い』

(!? どうやって!?)

『おばあちゃん、あなたを尊敬します。好きですってウソ吐け』

(はぁっ!? そんなんで……)

『アイツは馬鹿だから大丈夫だ。信じろ』

(……分かった)

『お前は絶対幸せになろうとしろよ! じゃあな』

(……はい。さようなら……)


 声は聞こえなくなった。息を整えながら、短く考え込んでみる。


(信じて、みるか……。丁度次の日曜日に、フサヨ(ババア)とじいちゃんが実家から来る……。試しに話し掛けてみて、ダメなら……)


 ――、

 日曜日が来た。日に日に虐待の傷跡は増えていき、痛々しい様相となった時田だったが、母キヨコは公園に行って転んだだけだろうと暢気に構えていた。息子、時田は限界だった。藁にも縋る想いで、フサヨに話し掛けた(ウソを吐いた)


「おばあちゃん……」


「?」


「あなたを尊敬します。好きです」


「!! まっ!」


「……(どう出る……?)」


「総司……? 漸く私の偉大さが分かったようね。何か良いコトをしてあげましょうか?」



「!!」



 瞬間――、時田はしめた! と勝機を確信し、彼は静かに息を整えた。


「(アイツ……いや、未来の俺が言う通り、コイツがバカで助かった。gj、俺)お父さんの虐めを止めさせてほしいです……」


「お安い御用よ。でも、その代・わ・り」


「?」


 フサヨはぐっと時田との距離を詰める。呼吸が触れるほどまで迫った。次に――。

「!?」



 ベロベロベロベロ!!!!



 フサヨは時田の鼻を舐め回し始めた。


(何だコイツら……ひい婆さんと言い、人様の首から上を舐めるのが、ありふれた日常の一部なのか……!?)


 数十秒、苦悶の時間は続いた。そして――、


「うっふ(悦)」

(鼻が……痒い……)


 フサヨはトイレへと向かい、珍事は幕を下ろした。


 シゲミが仕事から帰ってきた。直ぐにフサヨは、彼に面と向かって交渉に臨み、イエスマンを絵にかいた様なシゲミは虐待を一時的に控えるようになる。時田は、シゲミはフサヨに何か、頭が上がらない様な、服従する理由があるのでは? という勘を働かせた。


 神は地上へいてはいけない存在である。

 神が地上へ降臨する刻 、災いが世界に訪れる――。


 宇宙創造神・フサヨ。

 太陽神・キヨコ。


 この二人の神が因果に導かれるかのように、日本に姿を現した。二人同時に――、だ。


 フサヨ全盛期の頃、第二次世界大戦――。

 キヨコ全盛期の頃、阪神淡路大震災――。


 二人がその足を降ろした土地を狙ったかの様に甚大な人的災害、自然災害が発生している。神の耐え切れぬほどの力に、世界が悲鳴を上げた。



 悲鳴を上げたのは世界だけか――?



 天界に鎮座していなければならない一人の神もまた、幾重もの負荷と重圧に押し潰され、 悲鳴を上げようとしていた。

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