4 舐めるという行為は、犬にとっても人にとっても万物共有の愛情表現。だから男も女もあそこを舐める
「総ちゃんとお父さんの実家に行くの初めてだねー! ひいおばあちゃんもおじいちゃんも、総司に会うの楽しみにしてるのよ! ……ああ。もちろん、おばあちゃんもね」
「……(どーだか?)」
車に揺られ、1時間半――。時田、シゲミ、キヨコ、そしてかの子の時田家4人家族は、シゲミの実家に辿り着いた。
「よぉ来たのうー! 総司!!」
「!!」
真っ先に祖父のヒデシが時田に飛びついた。喜びを腹の底から表現している。
「長男の孫じゃー!! めでたいのぉー!」
「なっ!? 苦しい……やめ……!!」
「ホントにしゃべるんじゃなー! 不思議な子じゃのー」
頬を寄せじゃれ合う2人に、駐車場に車を停め終えたシゲミが話し掛けてきた。
「総司。コレ、その人がじいちゃんじゃ。じいちゃんと呼べ。じいちゃん、あまり総司を甘やかさん様に……」
隔たりを孕んだシゲミの他人行儀な一声に、ヒデシは血相を変えて怒鳴った。
「これ! なんじゃその言い草は!! こんなに可愛い子なのに……あ、総司。怖かったかな?」
「いや……大丈夫(何だ。あのオッサン、このじいちゃんにはそんなに大きく出られないのか。この家にいる間、ちょっと守ってもらうか……)」
そしていざ、シゲミの実家の敷居をまたぐと――、
「そ! う! しぃー!!! ベロベロベロベロベロベロ!!」
「……え?」
時田は曾祖母のマサヨに顔中を舐められていた……!!
実は若い頃ヤリ手だったマサヨ。口唇ヘルペスを患っており、この行為によって時田の唇にもその病は伝染した。ファーストキスは曾祖母の味。
「これ! ばーさんや、止めなさい……!」
「ヒデシさんや、この子が可愛くってもう、ベロベロベロベロベロベロ!!」
「……!!」
――、
「おヴぇぇぇ。別の問題が出てきた……」
時田は疲弊しきっていた。マサヨの愛を一心に受け切って――。
「それにしても、なんつってあんなに人様の顔を舐め回すんだ? 何が悲しくって――」
時田は愛を知らなかった。
彼は生まれる前から、不幸なヒトをほっとけない、そういった慈愛に富んだ性格をしていた。だが、こと恋愛に対しては億劫で、人から愛されるのが怖かったのかも知れない。またそれが、失われることも――。
夜――、離れに居るシゲミやキヨコとは別の、ヒデシと一緒の寝床に就いた時田だったが、フサヨの襲撃に遭う事となる――。
「! 痛ぇ!? 目がっ!!」
フサヨが目を指で突っついてきたのだ。
「あ゛ぁぁあああ!!」
「ゴァ――!! ゴァ――!!」
盛大に寝いびきを掻いているヒデシの耳に、その悲痛な叫び声は届かなかった。
「ふふふ……アナタ、シゲミの目を潰したでしょ? これはその報いよ」
「!?」
「何? 不思議そうな顔をしているわね。私は神よ。ちゃんと見ていたんだから……しっかりと、これからも我が息子、シゲミに可愛がられなさい……」
これからどのくらいの月日を痛みと共に過ごすのだろうか――?
時田は諦めかけ、齢0歳4カ月で自殺を考える様になった。




