AI小説評価システムが小説投稿サイトに導入された
音楽、イラスト、漫画。
様々な分野の数々のクリエイター達が、ネットからデビューし、高い人気を獲得し、そして成功を収めている。
が、近年は、小説に関してはそれほどの成功者は出ていない。小説はあまり売れておらず、どちらかと言えば“漫画の原作者”としての立ち位置が一般的だ(そして、漫画がどれくらく売れるかは、漫画家の実力に多くを依存しているようだ)。
――どうして、こうなってしまっているのだろう?
主な原因は恐らくは小説の評価の難しさにあると思う。音楽やイラストなどに比べ、小説は楽しむのに時間がかかる。また、文章を読むのは意外に疲れるし、“読書力”などと言うように、本当の意味で文章を楽しむのにはある程度の技術が必要だ。
結果、多くの人はどんな作品を選べば良いのか分からず、明確に数値で判断できるポイントやランキングを信頼して読む小説を決める割合が高くなってしまう…… のでないだろうか?
しかし、では、本当にポイントやランキングが公平に評価された結果なのかと言われるとかなり怪しい。複数アカウントや組織票によるポイントの加算、またポイントを加算する業者の存在などで歪んでしまう。
だから、ネットからデビューする小説家は、正当な評価を受けているとは言えず、ミュージシャンや漫画家などのようには成功できないのではないだろうか?
ならば、小説の評価方法に何かしらの改善を加えれば、この現状を打開できるという事になる……
「良かったじゃないか」
僕は友人をそう祝福した。心よりの祝福だった。長年、彼は小説を書き続け、そしてそれを小説投稿サイトに投稿し続けて来たのだ。個人的には高い実力があると思っていたから、彼が評価されない現状をはがゆく思っていた。
「いやぁ、まあ、運が良かっただけだよ」
と、彼は謙遜した。
でも、僕は実力だと思っている。そうじゃなければ、評価システムが変わった途端にデビューが決まるはずがない。
小説投稿サイトに投稿されている膨大な量の小説を、公平に評価するなど不可能だ。今まではそう思われていた。しかし、近年のAIの進化によってそれが可能になったのだ。
そう。
AIが小説を評価し、ランキングを作る機能がその小説投稿サイトに実装されたのだ。その結果、彼の小説は見事、優秀な作品に選ばれたのである。
僕はお祝いにと彼を誘った。今二人で飲んでいるところだ。
僕は「凄い、凄い」と彼を褒めた。彼はちょっと居心地悪そうにしていた。きっと控えめな性格だからだろう。そう思っていた。初めのうちは。
しかし、
「本当に止めてくれ」
ある時、堪え切れなくなったかのように彼はそう言って来たのだった。
明らかに様子がおかしい。
「どうしたんだよ?」
不思議に思って尋ねてみると、彼は吐き出すように言った。
「あの小説は、俺だけの力で書いたんじゃないんだよ」
「なんだそりゃ? 協力者がいるって話か? 別にそれくらい良いじゃないか」
「いいや、良くない」
少し考えるとこう尋ねる。
「まさか、盗作なのか?」
「違う。いや、違うとも言い切れないが…… 著作権上はきっとセーフだ。でも、道徳的に許されるかって言ったら… きっともし知られたら世間では問題視される」
そこまでを聞いて、僕はなんとなく察した。似たような話題を、近年は何度も耳にしていたからだ。
「まさか、お前、AIを使ったのか?」
少しの間の後、彼は頷いた。
「ああ。ちょっと思い付いちゃってさ。魔が差したって言うか…… “AIから高い評価を受ける小説を書いてくれ”って頼んだら、本当に書いてくれて……
もちろん、そのままじゃ使えなかったら、それなりに手を加えたんだが、それでもベースはAIの書いた小説だ。“まさか”と、思ったよ。でも、投稿してみたら、本当にAIは高く評価してくれたんだ」
それを聞いて、僕は何も返せず固まってしまった。
彼の小説は僕も読んでいる。少し作風が変わったなとは思っていたけど、AIに書かせたとは少しも疑わなかった。何より、充分楽しむ事が出来たのだ。
彼の言う事が本当ならば、僕は、いや、僕も含めた人間社会の皆は、AIが作って、AIが高く評価した作品を楽しんでいる事になる。
……一体、これからこの世の中は、どうなっていくのだろう?
心の底からそう思った。
これが、SFとは言えない時代ですからねぇ
因みに、恐らく「なろうチアーズプログラム」と生成AIは相性が良いです。
審査なしなので、AIで膨大に作って、投稿しまくれば良い。
運営さんは何か対策しているのですかねぇ?




