「辻沢日記 34」(変態の由来)
ユウがあたしのスケッチブックを覗き込みながら、
「相変わらず変態だな」
と言った。
思い出した。あたしの図面好きを最初に変態呼ばわりしたのはユウだったのだ。
◇
中学3年になったばかり、あたしが学校から帰宅すると家でさぼっていたユウがあたしの部屋に勝手に入っていた。
あたしのベッドに寝転がりながら大事な図面集を引っ張り出して眺めていた。
本棚から何冊も床に広げてある。一日中そうして観ていたに違いない。
ユウはドアの所のあたしに気付くと起き上がって部屋から出て行こうとするから、
「勝手に入って散らかして、片付けてよね」
と言うと、
「お前、変態もほどほどにしろよ」
と出て行った。
そう言われても何が変態なのかあたしは全然見当が付かなかった。
散らかった図面集を片付けながら自分の部屋を見直してみた。
本棚にはアイドル本とか流行りの恋愛漫画とかはなくて建築図面の本ばかりだった。
壁に貼ってあるのもメタボリズムの巨匠、菊竹清訓の建築図面だし。
……こんな人、普通の女子は知らんよな。
お布団の柄もパース図がプリントしてあるのをネットで探して買った。
そう言えば、建築科だけどそういうことを学校で話したことはなかった。
話せば引かれるというのが分かっていたのかもしれない。
◇
昔の思い出にひたっていると、ユウが、
「そのメジャー貸せよ」
「コンベックスね」
ユウにコンべを渡す。
それを受け取りながら、
「どっちだっていいの。変態」
「何する気?」
「何って、手伝ってやるよ。測った数値をスケッチブックに書き込めばいいんだろ」
素人に任せて後で測り直すのは面倒なので断りたかったが、ユウがさっさと横面を測り始めたのでしかたなく任せるとことにした。
あたしはもう一つのコンべを取り出して反対側を測ることにする。
大まかに内部の実測が終わったので、時間も時間だからお昼にしようとユウに言うと、昼飯なんてないと言った。
仕方ないので今朝紫子さんにもらったおにぎりのうち2つを渡した。
中は埃っぽいし暑いので外で食べることにして社殿を出る。
手水舎で手を洗い持って来たタオルを浸して搾り、汗を拭く。
さっと風が吹いて一気に生き返った。
ユウは階の所に腰かけてすでにおにぎりをぱくついている。
手を洗わないでものを食べるのは昔から変わらない。
あたしもユウの横に腰かけておにぎりの包みを解いて食べる。
ピリッとした刺激が舌を指す。
紫子さん特製のサンショウの佃煮入りだった。
紫子さんが昨晩煮てたのはこれだったんだ。
いつもありがとう。
おにぎりを食べながら、ユウの実測部分を確認した。
多少の抜けはあったけれど数値に関しては信頼していい精度だった。
これであれば他も任せてもいいかもしれない。
内部を実測していて気づいたことが一つ。
社殿全体が後方に傾いでいること。
正面に向かって立っていると心持ち後頭部を引っ張られる感じがするのはそのせいだった。
こうして外から見てもまったく分からないが、床面にスマホを置いてレベルを見たら、後方に3度、左に5度ほど傾斜していた。
土台がどうなっているか確認するにも、全体の外壁が地面に埋まっているので外からは見えない。
やっぱり板を剥いで床下を調べる必要がありそうだった。
奥の間の階段の痕跡といい、外壁の様子といい、床下に地下部屋のようなものがあってもおかしくなさそうだった。
(毎日2エピソード更新)
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