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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第二部 辻沢日記(コミヤミユウのセルフライフドキュメント)

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「辻沢日記 24」(死せる天使の裏話)

 夜野まひるのスイートルームに通されて日が落ち暗闇になった途端、肩に何かが触れた。

 

手を肩にやったらそこに氷のように冷たい手が載っていた。


もう一方の肩にも置かれた時、あたしはそれでソファーに押さえつけらたことに気が付いた。


立ち上がろうにも肩の手が重しのように圧し掛かっていて、お尻がソファーに拘束されているようだった。


体をひねって手から逃れようとしたけれど、あまりの力にどうする事も出来ない。


そして、乾いたカハッという音が首のあたりで聞こえ、そちらに目をやると暗闇に金色の眼が一つ浮かんでいて、ギュッとこっちを見つめていた。


「コトハやめなさい」


 その声は突然どこからか響いてきた。


マイクを通してではない、耳に聞こえるでもない声。


その声のせいで部屋の温度が2度下ったようで寒気を感じた。


そうするうち目の前の金色の眼が暗闇の中にゆっくりと退いた。


肩の重しがはずれ、あたしのお尻はソファーから解放された。


 少しの間があって、奥の部屋のドアが開く音がしてそちらから冷気が入って来た。


暗がりの中を人の形がこちらに音もなく近づいて来て、あたしの前で立ち止まった。


見上げるとそこに夜野まひるの青白い顔がぼおっと浮いていた。


あたしはその姿にユウとは違う畏怖を覚えた。


 ネットでこんな話を読んだことがある。


 RIBのライヴ会場。突然暗転してそれまで3列目で踊っていた夜野まひるが闇センターとしてステージの中央に立つときが来た。


まず、夜野まひるの声が会場全体に響き観客を震撼させる。


そしてスモークが焚かれその中から夜野まひるが現れると、その姿はラスボス感しかない死の大天使に見えたと。


これまでさすがにそれはドルオタの大げさな表現と思っていたが、今あたしはその意味を完全に理解した。


 部屋の明かりが灯った。夜野まひるは例の黒い制服を着ていた。

 

そこでやっと思い出した。


これはRIBのデビュー曲「君の血は僕らの糧」(君血)の時の制服なのだ。


あれ以来、公式でこの制服を見たことはなかった。


たしかデビュー時の夜野まひるは中学3年生だったはず。


それから10年、体型まったく変わってないって事になる。


「ごきげんよう。コミヤミユウ様」


 その変な挨拶だと拍子抜けしそうになるけど、まだ背後にいるだろうロリメイドが気になってしようがない。


「ごめんなさいね。あの子、暗闇で人を見ると見境がなくなるのです」


 夜野まひるがあたしの後ろに目をやった。


 あたしも振り返って見ると、出入り口を背にしてロリメイドが入ってきた時の様子で立っている。


今し方の獰猛さなど嘘のようだ。


 そのロリメイドを夜野まひるはコトハと呼んだようだけど、


「そうです。あれは笹井コトハ。あたくしの大事な妹です」


 RIBの笹井コトハといえば結成当初からの夜野まひるの妹分で超絶かわいい死の微笑み天使。


それがあんな姿になるなんて。


だってあれは屍人なのだ。


「あたくしのせいなのです」


 と言うと夜野まひるはあたしの向かいのソファーに座った。


いつの間にか家具の白いシーツがなくなり、昨晩の華麗な設えに変わっていて、テーブルの上には銀座吉岡屋のマカロンと紅茶が用意されてあった。


おそらく薫草堂のヨモギ紅茶だ。


そして夜野まひるの前には例の牛乳瓶が一本。


まずは、


「突然おじゃましてすみませんでした」


 とお詫びすると、


「いいえ。いらっしゃると思ってましたから。昨晩のヴァンパイアが何者か知りたいのでしょう?」


 という答えが返ってきた。


 全部見透かされているようですこし怖かったけど、先ほどからのやり取りで夜野まひると話すことがどういうことか、だいたい分かった。


夜野まひるはあたしの心を読んでいる。


「ミユウ様が襲われたのも、あたくしのせいなのです」


 夜野まひるは牛乳瓶を手に取ると器用に蓋を片手で開けて喉を鳴らしながら一気に飲み干した。


そしてその真っ白い手の甲で牛乳ひげを拭うと、RIBが遭難した飛行機事故のことを話し始めた。




 夜野まひるがあくびをしながら、


「そうして、今ここにいます」


 と全てを話し終わったのは明け方のことだった。


 なるほど、あの生き物は辻沢の深部を侵そうとしていることが分かった。そして、かなりやばい奴らだということも。


 でも、あたしが狙われた訳は今一つはっきりしなかった。


 ユウと夜野まひるとはそれぞれの理由でお互いの敵を引き受けつつ共闘しているけれど、それにあたしも巻き込まれたというのが今のところ分かったことだった。


帰り際、クリーニングをしていないことを詫びつつ制服を返そうとすると、夜野まひるは、


「いいえ、わたくしはもう着ませんから、ミユウ様に差し上げますわ」


 と言った。


すごく嬉しかったけど、いろいろとやばそうなので、ちょっと預かるということで持ち帰ると言うと、


「ええ、どうぞ。ずっと預かっていただいて結構ですよ」


 と言って微笑んだ。夜野まひる、めっちゃ天使。


(毎日2エピソード更新)

続きはこのあと21:10に公開します


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よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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