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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第二部 辻沢日記(コミヤミユウのセルフライフドキュメント)

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「辻沢日記 19」(デンジャラス・コス)

 なんだか周りが騒がしかった。


ユウと別れて、辻沢駅からN市で乗り換えてすぐ昨晩からの疲れで眠てしまったらしい。


特急待ちなのか駅に停車中だった。


初めはその騒がしさは通学時間だからだと思っていたけれど、そうではなかった。


目の前のJKが、


「それって、青血の制服ですよね。RIBの」


 と小声で聞いてきた。


目を上げると、あたしの周りのJK率がやたら高いことに気が付いた。


そしてその全員があたしを見下ろしている。


「そのレプリカ、どこで買ったんですか? それ夜野まひるヴァージョンですよね?」


 と腕のエンブレムを指さして言う。まさか夜野まひる本人からもらったとは言えないで黙っていると、


「お前アンチだろ」


「悲しみに暮れるウチらへの当てつけか」


 あたしを囲むJKの目が狂気を含んでいた。


 熱狂的な夜野まひるファンがカルト化してるというのは聞いたことがあった。


「いつまで着てんの、脱ぎなよ」


「脱げってば」


 袖をつかもうとしてきたのを手を払い、JKを突き飛ばして通勤客で混み合う電車を降りた。


 ドアが閉まって電車が走り出すと、あたしは用もない駅に取り残されたことに気が付いた。


そして、この制服を着ていいのは夜野まひるだけなんだと肝に銘じた。


 寮に帰るとミユキが出迎えてくれた。


顔を見てこれほどホットしたことはなかった。


中に入ろうとすると慌てた様子で待ってと言う。


なんだか嫌な感じがしたから、無理に押し入ろうとすると、


「クロエが泊まりに来てるから、ね」


 と言った。


「着替えだけさせて」


 と音をたてないように自分の部屋に行って、夜野まひる以外が着るとデンジャラスでしかない制服を着替えた。


クリーニングして返すべきなんだろうけど、次いつ会えるかわからないからしばらくは預かることになりそう。


制服をハンガーにかけてつるすと、ハッとした。


たしかにそこに夜野まひるがいたから。


まるで純白の羽根を広げた天使が舞い降りたかのようだった。


あたしは身震いして思った。


こういうことがあるからアイドルの存在ってすごい。


 出かけるとき隣のミユキの部屋をのぞくと平和そうにクロエがタオルケットにくるまれて寝ていた。


ユウにそっくりなその顔を見ていると、あの時想像したユウとの二人だけの生活ってこんな感じかもなと思えてきて、胸がきゅっとなった。



 大学入学後のガイダンスの時だった。


階段教室の後ろの方に座っていたら隣にユウが来た。


あたしは一瞬奇跡が起こったかと思って、


「ユウ、なんで?」


 と話しかけてしまったが、それは同じ顔をした他人でノタクロエという子だった。

 

初めて見た時の印象からはクロエが傀儡子だとは想像も出来なかった。


とても明るく気易くて物おじしない感じが、あたしがユウに植え付けられた「傀儡子はかくあるべし」とかけ離れていたからだった。



 寮を出て駅前のゲーセンで時間をつぶすことにする。


中はまだ昼過ぎだというのに数人の男子高校生が太鼓の達人的なゲームで大盛り上がりしている以外は、格ゲーに夢中の大学生風男子とやさぐれたサラリーマン風の男がいただけだった。


あたしは店の奥にあったクレーンゲームでカレー☆パンマンのぬいぐるみを狙うことにする。


一時間もしないうちに、カレー☆パンマン、アン☆パンマン、ド☆キンちゃん合わせて10個も取った。


あたしはこういうのは苦手で、これまでに500円使ってやっと1つとかだったので、人生で与えられたラッキーを全て使い果たしてしまったんじゃないかと不安になった。


「コミヤミユウサンデスネ」


 音もなく側に立ち話しかけてきたのは、あたしが5つ目のカレー☆パンマンをゲットしたとき裏口から入って来た男だった。

(毎日2エピソード更新)


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この続きは明日21:00公開です


よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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