「辻沢日記 18」(発現自在)
夜野まひるがそろそろ休みたいというので部屋を後にした。
ユウとは一緒に部屋を出たけれどエレベーターで分かれた。
ホテルを出ると東の山の稜線に朝日が顔を出していた。
まぶしい光の中を駅に向かって歩き出すと、赤いオープンカーが横に停まった。
「駅まで送るよ」
運転席からユウが声をかけてきた。
「すぐそこだから」
と断ると、
「いいよ、乗りなよ」
と助手席側のドアに手を伸ばして開けてくれた。
助手席に腰を下ろしてドアを閉めた途端に車を急発進させるものだからあたしはシートに押し付けられてしまった。
運転するユウの横顔を見た。
朝日に照らされたすべすべの頬がオレンジ色に輝いていた。
それで聞きたかったことを思い出した。
「いつからなの?」
「車のこと?」
「違う。その……」
あの時、ユウの顔面はリクス女に殴打されひどいことになってた。
でも、今はこんなにきれいな肌をしている。
この回復力。
それは潮時でないのにユウが傀儡子の本性を顕わにした証拠だ。
ユウは自在に発現できる?
「ああ、あれ? 高2の夏ころから」
「そうなんだ。思い通りに?」
「うん。めっちゃ体力消耗するからあんまりしないけどね」
しばし沈黙してる間に駅に着いた。
車を降りしな、
「潮時はやっぱり制御不能?」
と聞くと、
「うん。あれは人を超えた何かだから」
ユウは陰のある表情で片手を挙げると車を急発進させた。
タイヤのきしむ音が駅前広場に響き渡る。
まばらにいた歩行者が足を停め、赤いオープンカーを目で追いかけていた。
でも車がロータリーを走り去ると、何もなかったかのように各々の行き先に向かって歩き出した。
「人を超えた何か……か」
オトナならそれをきっとエニシというだろう。
何だろうエニシって。
運命とか宿世とか、定められた道を否応なしに辿るしかないって。
そんなのユウがユウで、あたしがあたしでいる意味ないじゃない。
(毎日2エピソード更新)
続きはこのあと21:10に公開します
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