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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第二部 辻沢日記(コミヤミユウのセルフライフドキュメント)

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「辻沢日記 16」(抹殺の真相)

 夜野まひるのスイートルームのレストルームは豪華すぎて、裸になると心細くなった。


何をどうすればいいか分からないアメニティの数々をなるべく減らさないようにして使った。

 

シャワーを終えて出てくると、洗面台のラックに着替えが畳んであった。


「ごめんなさい。それしかなくって」


 と外から声を掛けられて着てみたら、それはRIBの夏Song『青春血まつり!』(青血アオチ)のころの、白地にブルーのラインが鮮やかなセーラー服タイプの制服だった。


そういえばRIBは制服を個人が管理するとクロエから聞いたことがあった。


制服のタグを見ると上着にもスカートにも「まひる」とネームが入っていて、それが雑な刺繍だったのがかえってゲードルの公式衣装だと実感されて震えた。


 レストルームを出るとユウも着替えていて、それもたしか『恋の血判状』(恋血コイチ)のころの制服で、グレーのブレザーに紺の細タイ、ボックスプリーツのスカートを履いていた。


ソファーにおとなしく座っているユウが可愛いらしかった。


 夜野まひるには好奇心から聞きたいことがいっぱいあったけど、今は我慢することにした。


TVや週刊誌から逃れてこんな窮屈な(豪華過ぎるけど)生活をしているのだから、あたしの質問なんてうんざりだろうから。


 ユウのそばに立ってテーブルの上を見ると、銀座吉岡屋のマカロンと飲み物が用意されていた。


これ紅茶かなと思って見ていると夜野まひるが、


「カモミールティーです。お嫌いでなければいいのですが」


ならきっと薫草堂のものだろう。一杯ウン千円するはず。


大きすぎるソファーに座って、いただく前に改めて自己紹介をした。


夜野まひるの番になって、いつもの決め台詞が出るかと思ったら、


「夜野まひるです」


 とだけで済んでしまった。


拍子抜けしたけど、それが普通の挨拶だと気付いて前のめりになった自分が恥ずかしくなった。


 ユウは、夜野まひるは敵か味方かといえば味方だという。


そしてスレイヤー・Rを荒らし回った挙げ句、運営に抹殺されたアワノナルトのイザエモンだとも。


なら何でこの間は逃げ回ってたのか?


「こいつ言葉使いが変だろ」


「そんな理由?」


「そうですよ。ごきげんようの何が悪いのですか?」


「きもい」


「アワノナルトだって、それでやめちゃったんですのよ。そうですわね、ユウギリさん」


 ユウがユウギリのほうだったようだ。


「え? 運営につぶされたんじゃないの? ものすごい量の蛭人間に強襲されて」


「いいえ。あのくらいならあたくし一人でもしのげましたから」


「そうなんだ」


 すご(汗)。


「いいパーティーだったのに、もったいなかったですわ。あと2ポイントで妓鬼ぎき討伐ステージに行けて、SSRアイテムゲットでしたのに」


スレーヤー・Rには二つのステージがあって、普段あたしが参戦しているのは、蛭人間を相手に戦う「蛭人間殲滅ステージ」だ。


もう一つが、それをクリアしないと行けない「妓鬼討伐ステージ」で妓鬼すなわち辻沢のヴァンパイアを相手に戦う。


そもそも蛭人間殲滅ステージクリア自体が無理ゲーで、クリアポイントの半分も獲得できずに全滅するか、資金が枯渇して退会するかで、これまで一組のパーティーもそれを実現していない。


つまり妓鬼と実際に戦ったスレイヤーなどいないのだった。


それをこの二人、ユウギリとイザエモンは手の届くところまで迫っていたという。


「あんたはゲームを楽しんでたみたいだけど、ボクはポイントとかアイテムとか興味ないから」


「ゲーム女のさがとでも言いましょうか、つい夢中になってしまいました。ユウさまの目的はスレーヤー・R攻略ではないんでしたよね」


そう言えば、あたしはなぜユウがこんなにスレーヤー・Rに固執するのか、その理由を考えたこともなかった。


オトナに言われて事態を収拾することだけを気にしていたから。


これも傀儡子の後始末に腐心する、傀儡子使いの悪い習性だけれど。

(毎日2エピソード更新)

続きはこのあと21:10に公開します


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よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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