「辻沢日記 13」(青墓の罠)
ユウが車をぶっ飛ばしたせいで青墓に着いたのはバスの人たちよりも早かった。
アプリのマップは相変わらず夥しいポイントで埋め尽くされているのに、青墓に入ってから蛭人間に出くわすことはなかった。
青墓のじめついた道を奥に進み、古い倉庫がある集会場までやってきたが、同じだった。
アプリの誤作動かもとニュースタブを開いて見たが新しい情報はない。
何かがおかしかった。
広場の真ん中で、そんなことまったく知らぬ風でいるユウに聞いてみる。
「どう思う?」
するとユウが自分のポケットからスマホを出してこちらに見せた。
その画面のマップにはポイントが一つも表示されていなかった。
ニュースタブにスワイプすると「システム障害のお知らせ」とあってポイントの誤表示のことがアップされてあった。
「宮木野神社にいた奴のをくすねて来た。こっちがボクの」
と差し出された違うスマホの画面はあたしのと同じように夥しい数のポイントで埋め尽くされていた。
これはどういうこと?
「罠だよ」
しれっとして言う。
「罠と知っててここまで来たの?」
「まあね。てか、いつもこんなだけどね。しつこいよそ者なんだよ」
そう言うとユウは広場の端の植え込みまで歩いて行って暗がりにおーいと声をかけ始めた。
まったく真剣味が感じられない。まるで平常時のよう。
言ってもここは青墓だ。
いつ蛭人間が押し寄せてくるかわからないのに、あたしは落ち着いてなどいられない。
キーキーと森の奥から響いてくる何かの鳴き声や、下草のカサカサいう音にいちいち反応してしまう。
風が吹いて木々の梢がわさわさと大きく揺れだした。
広場の真ん中は落ち葉が舞っている。
何かの気配が近づいてくるのを感じる。
「そろそろ来たかな」
ユウが広場の中央に戻って来ると、あたしに向かって、
「離れんなよ」
と言った。もちろんそのつもりだ。
「ごきげんよう」
その時、背後から聞いたことのある変な挨拶がした。
あの女の声だった。
潮時の朝の光を背負っていた影。
あたしは咄嗟に身構える。
今回はユウを抱えなくていい分、前よりは素早く動ける。
でも、駐車場はその声が聞こえた方向、真後ろだった。
どうする? あたし。
(毎日2エピソード更新)
おもしろい、続きを読みたいと思ったら
ブクマ・★・いいね・一言感想で応援いただけると嬉しいです٩(*´꒳`*)۶
この続きは明日21:00公開です
よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾
たけりゅぬ




