「辻沢日記 11」(スレイヤー・R参戦)
初めてスレイヤー・Rに参戦した三カ月前、オトナから辻沢に来いと言われて行ったら、勝手にゲームにエントリーされてて、普通のサバゲーかなと高を括っていたら早速死にそうになった。
何をしていいのかも分からずじめついた青墓の樹海をうろうろしているところを、背後から蛭人間に爪を突き立てられてその場に昏倒した。
……らしい。
気づいた時には上体を包帯で巻かれてベットにうつぶせで横たわってた始末。
第5野戦病院とかいう陰気くさい負傷者収容所で看護師から、
「くらった場所が肩甲骨でよかったね。でなかったら即死だったよ」
とさらっと言われ、ゲームっていう設定だったんじゃ? と思った。
「どうしてここに?」
「だってしかたないでしょ、出玉が全部やられちゃったんだから」
ゲームを続けたかったとかじゃなくって……。
「アワノナルトって凄腕二人組が現れてね」
本日放出されたエネミー、数十体の蛭人間が全滅させられたのだという。
それがユウのパーティーだということが分かるまでそんなにかからなかった。
アワノナルトが参戦するようになってから、定期開催やイベントの延期や中止が頻発してスレーヤー・Rの運用に支障が出ているらしかった。
アワノナルトが現れるという噂が立つと、ポイントが独占されるからと他のスレーヤーたちが参戦を見送ったり、しまいに退会してしまったりしてインフラの維持にまで影響が出始めていたという。
あたしが噂を頼りに参加するようになってからも、はじめはあんなにいたスレーヤーたちがだんだん減ってゆく感じがあった。
◇
今回の招集も、あたしに何とかしろというオトナの意向なのだ。
あたしにユウが制御できると? そんなこと出来るわけない。
とはいえユウのこととなると来てしまうのが傀儡子使いの習い性で、こうしてのこのことゲーム会場に足を運んでる始末。
今いる宮木野神社はスレーヤー・Rの定例時にいつも集合する場所だ。
日が暮れると昼のまったりとした雰囲気とは打って変わって陰気な場所となる。
ここがプレイフィールドというわけでもないのに境内の空気の底によどんだ腐臭があって、それがこれまでにゲームで流された血汚泥の夥しさを彷彿とさせた。
参加のスレイヤーさんたちは境内の東側に寄って集まっていて、そのはずれの演舞台をなんとなく気に掛けながら思い思いの準備をしている。
そこは運営が登壇しゲームの開催を宣言する場所になっているからだけれど、今日はどうしてかその予兆すら感じさせないほど舞台が暗い。
そういえば開催時間の8時をもう30分近く過ぎていて、すでにスレイヤーさんたちの中にもざわつく連中が出始めている。
あたしはその中をうろうろしながらユウの姿を探した。
ただユウが一般のスレーヤーに交じって普通に参加するとは考えにくい。
どこかに潜んでゲーム開始の合図を待っているか、すでにフィールドにいて蛭人間を駆逐し始めているかだ。
「おいおい、また中止か?」
「有給取ってきたんだけど、おれ」
「3回に1回は中止って、どんな定期だよ」
「しかたなくない? 玉がなきゃパチンコ屋だって開店しないだろ」
一瞬その連中の間に沈黙が広がった。誰かがぼそりと言った。
「パチンコ屋に玉がない状況笑」
失笑が漏れる。
「うるさいな、例えだろーが」
「クソな例え。草生える」
笑いの輪がさざ波のように広がり、しばしのあいだ境内を明るくした。
笑いが引いて再び境内が静けさに支配された時、
ゴリ、ゴリゴリ! ゴリ、ゴリゴリ!
突然、境内に緊急地震警報のような音が鳴り響き出した。
そこら中で警報音が鳴っている。
みんな一斉にスマホを手にしてスレイヤー・R用アプリを開く。
マップがメインのこのアプリは蛭人間が出没する位置をマーキングして示すのだ。
「なんだ、なんだ。開催宣言なしで出玉か?」
宮木野神社のスレイヤーたちが慌てて荷物を担ぎ始めたのだった。
(毎日2エピソード更新)
おもしろい、続きを読みたいと思ったら
ブクマ・★・いいね・一言感想で応援いただけると嬉しいです٩(*´꒳`*)۶
この続きは明日21:00公開です
よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾
たけりゅぬ




