表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第二部 辻沢日記(コミヤミユウのセルフライフドキュメント)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/186

「辻沢日記 8」(危険な匂いの女)

 一晩暴れまわったユウが膝をついて潮時の終わりの時が来た。

 

ユウに肩を貸して階段を昇りだすと朝の空気が心地よかった。


脱力状態で全身をあたしにもたせ掛けるユウ。


黒い濡れ髪を垂らし青白い頬に屍人の血汚泥をこびりつかせてる。


この時だけはユウはあたしのもの。そしてあたしは正真正銘の傀儡子使いとなる。


よろけながら階段を昇っていくと出口に人影があった。


背後に朝日を背負っているせいで表情は分からない。


輪郭が銀に輝く灰色の髪。黒のセーラー服にひざ丈のスカート。


女のようだ。


どこかで見たことのある制服だけど宮木野沿線に黒一色の制服の学校はない。


「ごきげんよう」


 澄んだ声でこちらに向かって声を掛けてきた。


なんだこの女、朝から変な挨拶して。


「あなた、その方のお知り合い?」


 言葉は丁寧だけど女からは危険な匂いがしてる。


それはユウが毛嫌いするこすからい人間のものとも、一晩中戦った屍人のとも違う匂い。


時にオトナが発する、穏やかに見えて隠しようのない恐怖の匂いにも似ていた。


「……」


 ユウが()を振り絞って何か言った。


それを受けてあたしはユウを取って肩にかけ一気に階段を蹴って飛んだ。


不意を突かれた女は身じろぎもせずユウとあたしが横をすり抜けるのを見送る。


 道路に出るとユウをおぶり直して朝日に輝く紫色の道を駆けだす。


駆けだして分かったのはここがバイパスの大曲だってこと。


しばらく行けばユウが車を置いたシャトー大曲がある。


時々、後ろを振り向いて確かめたけど女の姿は見えない。


もとから追って来る気はなかったのかもしれない。


ユウを背負ったまま歩くことにする。


 シャトー大曲に着いて地下駐車場に下りる。


薄暗い中に真っ赤な外車がひときわ目立っている。


キーを探しているとユウがドアのノブに手を掛けた。


するとキュピッという音がしてドアが開いた。


この状態のユウを運転席には座らせられないので、しかたなくあたしが運転席に座った。


ドアを閉めるとユウが赤い大き目のボタンを押してエンジンを掛ける。


お腹の底から響いてくる経験したことのないエンジン音。


待って、こんな車まともに運転できそうにない。


ユウがけだるそうに前を指して合図する。


分かったよ、でも、これどうやって運転するの?


ドライブシフトはどの位置?


このたくさんあるボタンは何?


もう一度、ユウが前を指差した。


分かってるって。


もうちょっと待ってよ。


またユウが前を指す。


コンコン。


フロントガラスをたたく音。


見ると、あの女が中を覗いていてあたしと目が合った。


大きな目と吸い込まれるような金色の瞳。


透き通った肌にスッと通った鼻筋。


可愛いく開いた小鼻と魅惑的なえくぼ。


きれいに整った歯並び。


笑ってる。


どこかで見たことがある気がする。


「あたしと会ったことあるの? いつだった? どこでだったかな」


 とその女に問いかけるように思い出そうとしていると、ユウがシフトレバーを倒し、あたしの腿を叩いた。


反射的にあたしは足を突っ張りペダルを踏み込む。


エンジンが狂暴に昂ぶり、タイヤが悲鳴を上げて車は急発進。


強烈な圧力でシートに押さえつけられながら必死に頭を前に向けると、フロントガラスに女の姿はなくなっていた。


やっと難を逃れたのに、あの女と分かれたのがなぜだか切ない気持ちがあって、自分は混乱しているんだと思い込むことにした。

(毎日2エピソード更新)

続きはこのあと21:10に公開します


おもしろい、続きを読みたいと思ったら

ブクマ・★・いいね・一言感想で応援いただけると嬉しいです٩(*´꒳`*)۶


よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ