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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第二部 辻沢日記(コミヤミユウのセルフライフドキュメント)

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「辻沢日記 2」(地下道の血飛沫)

 ユウが傀儡子であることを自覚したのは、中学生になってすぐの新月だった。



 ユウはその日、昼のうちから潮時を迎え、学生服のまま辻沢の街を彷徨いだした。


発現した姿を人に見られてはと心配して追いかけたけれど、ユウはすぐに地下道に下りて行ったので、あたしもユウの後について地下道に入った。


薄暗くじめついた地下道は昼でも怖かったけど、いつもと違うユウを見失う不安の方が勝った。


しばらくの間はユウの新品のローファーの靴音を頼りになんとか見失わずについて行けた。


しかしすぐにあたしが道に迷い、どこからユウの足音が響いて来るのか分からなくなってしまった。


終いには電灯もない、床が水浸しの中を壁を伝って進んでいた。


すると暗闇のどこかからあたしを呼ぶ声がする。


それはユウの声ではなかった。


聞き覚えがあるけどあまりに昔のことで忘れてしまっていた声。


「ミユウちゃん。あたしたちおともだちでしょ」


 幼い声だった。遠い記憶が蘇ってきた。


 小学校1年生の夏休み、一緒に遊んで別れた後、会えなくなったお友達がいた。


夏休み明けの教室で、


「サカイワカナさんは学校に来られなくなりました」


 と先生が泣きながら言った。ワカナちゃんは行方不明になったと知った。


この辻沢でそれが何を意味するか誰も口にしないけれどみんなが知ってることだ。


ヴァンパイアの餌食になったのだった。


「ワカナちゃん。なの?」


 返事をした途端あたしは突き飛ばされその場にあおむけになった。

 

そして何かがあたしの上に跨がり、この世のものでない力で首を押さえつけられた。


喉を押しつぶされて声をあげようにも息すら出来ない。


すがる何かを探そうにも周囲は漆黒が支配する世界。


視界には二つの金色の瞬きがこちらをギュッと見降ろしているばかり。


やがてゆっくりとその光が近付いて来て、喉元で、


カハッ!


 と気味の悪い音をたてたかと思うと、あたしの首筋に熱い何かを押し当ててきた。


屍人だ。


屍人が胸の上に蹲りあたしの体から玉の緒を絞りつくそうとしている。


でもあたしは、こんな状況なのに妙に落ち着いていた。


それは、ずっと前からこうやって誰も知らない場所で死ぬだろうと思っていたからだった。


来し方を思い出しても、浮かぶのはユウとの日々だけだった。


カハッ!


 と音がした。


あたしにのしかかった屍人が一旦喉元から離れたのだ。


屍人は起き上がり何かを警戒して辺りを見回している。


時が止まった。


何の動きもなかった。


あたしの死期をささやくように床にたまった水が耳にひたひたと当たっている。


バシャ。


重そうなものがあたしの横に落ちて水音を立てた。


あたしの顔に生暖かい鉄臭いものが降り注いで来て、あたしを押さえつけていた力が緩くなって、やっと息が出来るようになった。


ひどい悪臭が鼻を突いた。


水音がした場所に首を向けると屍人の金色の瞳がこっちを見ていた。


その瞳の金色の光が徐々に霞んでいきやがて消えた。


すぐ近くで、


「そういうことか」


 と声がした。


見ると暗闇の中に真紅の光が2つ浮いていた。


それは潮時で発現したユウの瞳だった。



 クロエもユウみたいに覚醒するかというミユキの質問にあたしは答えを持っていなかった。


「分からないな。傀儡子の先のことは」


 世代や個々人によってまったく異なった顕現をするのが傀儡子だから。


指針といえるのは『夕霧物語』くらいしかないのだった。


クロエはユウほどの暴虐さはないにしてもミユキが不安になるのも分かる。


クロエのおばあちゃんから聞いたことによると、クロエが初めて発現した時は周囲を犠牲にしたらしい。


今は潮時で発現しても屍人も含め人に危害を加えることはないから、子供好きのお姉さん、悪くてつきまとい女だ。


だからといって、もし覚醒したらどう転ぶかなんて誰にも分からない。


だってクロエもユウと同じ傀儡子なんだから。


「そういえばクロエ、夏休みのフィールドワーク先を辻沢にしたみたいだけど、やっぱり鞠野フスキはクロエを辻沢にやりたかったんだろか」


 月末の事前調査はクロエと行くことになりそうだ。


「あたしも最初の演習でクロエにヴァンパイア祭のテーマ与えた時、これはって思ったよ」


 辻沢はもとより、わざわざクロエをユウに近づけさせるって、鞠野フスキはどういうつもりなんだろう。


オトナから要請でもあったんだろうか。


それともユウを止めさせるつもりなんだろうか。


クロエにそんなことが? まさか。


「ユウのこともあるから、あたしは辻沢ウエルカムだけど、ミユキはどうするの? 自分の調査もあるんでしょ」


「そうね。でもこれはしょうがないかな。クロエが心配だから夏の間は辻沢で隠密行動」


「鞠野フスキの気まぐれにも困ったもんだね」


「まあ、しかたないよ。マモルは辻沢とエニシでつながってるからね」


ミユキが窓の外を見つめてる。


ミユキったら鞠野フスキのことをマモルって名前で呼んだの気付いてない。


真っ暗な夜空に何が映ってるの? 

(毎日2エピソード更新)

続きはこのあと21:10に公開します


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よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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