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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第一部 ノタクロエのフィールドノート

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「辻沢ノーツ 53」(コテージのフジミユ)【第一部完結】


 屍人のミヤミユを置き去りにしてホテルを出ると、駐車場から一台の車がこちらに近づいて来て止まった。


見覚えのあるコアラ顔の車。鞠野先生のバモスくんだった。


「やあ、野太くん。調子はどうだい」


 と、こんな時にとぼけた挨拶が鞠野先生らしすぎてイラッとした。


「早く乗って」


 助手席のミヤミユに促されて後部座席に乗りこむと、バモスくんのエンジンが相変わらず頼りない音をたてて走り出す。


ミヤミユがあたしに振り向いて言った。


「大丈夫だった?」


 と膝に置いたあたしの手を取ろうとするので咄嗟にそれを払いのけた。


「あたしがミユウだよ。分かるでしょ?」


「うん。でも、さっきのもミヤミユだった」


 ミヤミユは言葉を詰まらせ何も応えない。その目に涙が光ったのが見えた。


 鞠野先生が運転しながら、


「あれは屍人だよ。ゾンビとも言うね。ヴァンパイアに殺された人の末路で、自分が何者かもわからず血を求めて永遠に彷徨い歩く存在だ」


 と説明した。


「コミヤミユウの格好をしてました」


「そうだね」


「あっちが本物のミヤミユだからでしょ?」


 助手席からこちらを見ているミヤミユの目を見て言った。


ミヤミユは目を逸らすように前に向き直った。


そして小さく肩を震わせた。


 しばらくしてミヤミユが言った。


「いつ分かったの?」


「ずっと前」


 ホテルで一緒にTV観た時に。


「そっか」


「双子だって区別はつくよ。フジミユ」


 二人ともあたしの大事な親友だもん。



 西山地区の入り口、大門総合スポーツ公園のキャンプ場に着いたころには7時半を回っていた。


バモスくんを駐車場に停めて、


ログハウスが並んだキャンプエリアの一番奥まで砂利道を歩く。


鞠野フスキは機嫌よさげに先頭を歩き、フジミユはずっと無言でうつむいている。


あたしも黙って二人について行く。


背後に森の際が迫っているコテージ調の建物まで来た。


その木の階段に見覚えがあった。


それを上がるとデッキになっている所まで動画で見たのと同じだった。


鞠野フスキが鍵を開けて中に入ると、フジミユがあたしの背中に手を当てて、


「入って」


 と言った。


 コテージの中は思ったより広くベッドが2つと応接セットがあった。


その床に植物の苗木が所狭しと置いてあるせいでジャングル感のある室内になっていた。


ミヤミユの部屋にあった山椒の植木をこちらに移したのだろう。


鞠野フスキは備え付けの簡易キッチンに立ってお湯を沸かし始める。


フジミユは応接セットのソファーにあたしに座るように勧めた。


あたしは促されるままに座ったけれど、この部屋に入った時から感じている居心地の悪さはなんなんだろう。


鞠野フスキがキッチンから湯気の立った白いホーローのカップを二つ持ってあたしとフジミユに差し出した。


「温まるよ」


 ココアの甘い香りが広がった。


 鞠野フスキからコップを受取ろうとしたらあたしの指先が小刻みに震えていた。


吹きさらしのバモスくんに乗って来たから体が冷えきってしまったんだ。


いいや、屍人のミヤミユに襲われた時のショックが抜けてないのだ。


猫舌のフジミユは自分のコップを受け取ると口元でフーフーしている。


ココアはフーフーするほど熱くはなかったけど、コップから伝わる温度と舌に感じる甘さとほろ苦さとが心地よかった。


フジミユもやっと一口飲んで「甘ッ」と顔をしかめ、


「昨日の夜は突然訪ねて来たからビックリしたよ。でもエニシの導きだからうれしかった」


 と言ったのであたしは少しうろたえてしまった。


「カメラを付けてるの見て、もう隠しておけないかなって思った。聞きたいよね」


 そう。聞きたい。


そのためにミヤミユに会いに行ったんだから。


でも、あたしが会いに行ったミヤミユは本当はフジミユで、本当のミヤミユはゾンビで、いま目の前にいるミヤミユはフジミユだ。


あーややこしい。


「何であたしがミヤミユに会いに行くって分かったの?」


 あそこの部屋はずいぶん前に引き払ったようだったし。


「ずっとクロエのこと追跡してたの。辻沢で一緒に買ったスマホにアプリ入れておいたんだ。ごめんね」


「いいよ」


 ゴリゴリフォンを買うのに付き合ってくれたのはフジミユでなくミヤミユだったはずだけどな。


あの時からもうフジミユだったんだね。

 

「どこ行っちゃうか分かんないからね。クロエは」



 残念ながらミヤミユへのインタビューはできなかった。

 

その変わりフジミユがあたしが知りたかったことを全部答えてくれた。


あたしが傀儡子でおばあちゃんが傀儡子使いだったとか、おばあちゃんが亡くなってフジミユがそれを引き継いだとか。


あたしとおばあちゃんとは血が繋がってないってことも。


それは中学生のころから知ってたけど。


「傀儡子使いって?」


「傀儡子のお世話係かな」


あたしは()()()()()()()らしくって、


鞠野先生に大学で出会ったのも偶然じゃなかったと知った。


でも、どうしてフジミユがずっとミヤミユになりすましていたのかは教えてくれなかった。


〈第一部 完〉

今回で第一部「辻沢ノーツ」編は終わりです。

次回からは、第二部「辻沢日記」編で

語り手が小宮ミユウ(ミヤミユ)に変ります。


傀儡子のユウとのエニシに苦しむ傀儡子使いの小宮ミユウ(ミヤミユ)が、

ユウとの壮絶な半生を振り返りつつ、地獄への道筋を探ります。


第二部第一話、このあと21:10に公開です


どうかご期待ください。


(毎日2エピソード更新)


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よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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