表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第一部 ノタクロエのフィールドノート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/182

「辻沢ノーツ 48」(傀儡子の業罪)

 ユウが言うには、ケサさんはずっと前からひだるに憑りつかれていたのだそうだ。


最初に脳梗塞で倒れたあたりからだと言う。


「こいつはクロエに憑りつこうとしてた。死期の迫ったケサからクロエに乗り換えようとしたんだ」


 ひだるは人の心の隙間から入り込んでその人に憑りつくという。


ユウは、ケサさんがあたしに何かしたかと聞いた。


詳しくは話せないけど二人に共通する話をしたとだけ説明すると、ユウは言った。


「夕霧太夫と伊左衛門の話をしたんだろ」


 どうしてそれを? あれはあたしとケサさんだけの話だったはず。


驚いて二の句が継げないでいると、


「『夕霧物語』は憑りつくのにもってこいの話だからね。特にクロエのような子にはね」


「でも、あの話はすごく身近でリアルだった。まるで二人で思い出話をしているみたいだった」


「それはクロエがあの話の主だからだよ。ヒダルはそれを利用しただけ」


 ケサさんはあの話を始める前に、これはあたしの話だと言っていた。


 ユウはあたしの側に来ると、あたしの額に指をあてて説明しだした。


「ヒダルは人の深奥にある記憶から心に忍び込み、そこにある情念を鷲掴みにすることでその人に憑りつく。それは抗いようのない感情の絆を芽生えさせて自分とヒダルの区別をつかなくする方便なんだ。一度そうなったらヒダルに魂を取って代わられるまであっという間だ」


 あの話を聞いた後、あたしは説明できない激しい感情をケサさんに抱いたのだった。


あれはヒダルの方便だった?


「でも語ったのはケサさんだった。あたしの話なら何でケサさんがあの話を知ってたの?」


「まあケサはもともと傀儡子だったわけだし、夕霧と伊左衛門の物語を知る術ならここにもあるからね」


 とあたしの背後を指差した。


後ろを振り向くと鴨居の上に6枚の額絵馬が並んでいた。


漆塗りの黒い額縁に木目が目立つ地に、ところどころ塗料の剥げ落ちた素朴な感じの彩色絵が嵌っている。


それぞれの額絵馬が夕霧物語の場面を描いていた。


ゆびきり、楼閣炎上、塚荒らし、道行き、血を吸う夕霧、そしてけちんぼ池。


 ケサさんが話をしてくれたあの時、あたしは確かにこの絵を生きていた。


あたしの心にざわざわと波が立った。


「ここが傀儡子神社っていわれる理由はこの絵馬にあるんだけど、どうしてだと思う」


 わかるはずない。辻沢に傀儡子神社があることすらエリさんから聞いたばっかりだもの。


「傀儡子は人と異なるわけでもないし特別な能力があるわけでもない。ボクだってそうだしクロエだってそうだろ?」


「え? あたしも傀儡子前提なの?」


「クロエはこの絵馬に見覚えあるだろ?」


「うん。絵馬の内容を知ってるどころか」


 あたしの心の奥深くに焼き付いているんじゃないか?


「でしょ。つまり傀儡子かどうかはこの絵の記憶があるかどうかなんだ。昔は傀儡子の疑いのある子はここに連れて来られてこの絵を見せられる。そして覚えていれば傀儡子と決められて四ツ辻に置き去りにされるか縊り殺された」


「どうしてそんな目に?」


「多分、いずれヒダルになるからかも」


 あたしがあの気味の悪い生き物に?

 

「傀儡子はみんないつかヒダルになるの? あたしやユウも?」


「ならない場合もあるみたい。夕霧太夫に導かれれば、ヒダルにならず後生に転生できる、らしい」


「らしい?」


「後生に転生って、ウケる」


 たしかに後生って何? 転生? 草生える、だよな。


「傀儡子はヒダルになる可能性のほうが高い?」


「それも笑なんだけど、実際にケサみたいなの見るとね。やっぱ悩む」


「いったい傀儡子って何なの?」


 ユウは腕組みをしたまま困ったような表情で、


「ボクは知らない。夕霧太夫なら答えを知ってるかもだけど」


(またすぐ会える)


 夕霧太夫が耳もとで囁いたような気がした。


「でも夕霧太夫が誰か分からない以上、答えは自分で見つけるしかないんだよ」


 答えを見つける? いったいどうやって。


すがるような気持ちでユウを見たせいか、ユウはあたしから目を逸らせた。


そしてロングスギコギを床から引き抜くと、


「そろそろ行こうか?」


 とぼそっと言った。


「どこへ?」


「青墓」


「何しに?」


「探し物」

(毎日2エピソード更新)


おもしろい、続きを読みたいと思ったら

ブクマ・★・いいね・一言感想で応援いただけると嬉しいです٩(*´꒳`*)۶


この続きは明日21:00公開です


よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ