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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第一部 ノタクロエのフィールドノート

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「辻沢ノーツ 41」(ゾンビとけちんぼ池)

 ケサさんのお通夜で公民館に一人残って徹夜をしていたら異形の者にケサさんを棺桶ごと連れ攫われた。


それは、スレイヤー・Rで「Wiped out(壊滅)」=ゾンビ化した寸劇さんで、外には他の砂漠のともだち旅団のサダム・Zとおそらくサーリフ・Zも控えているようだった。


 寸劇・Zが台車に乗せた棺桶を曳いて斎場を出ると、あたしは取り残された。


棺桶がなくなった部屋の中で、明日の朝どうやって皆さんに説明すればいいか考えてた。


ムラサキコさんが心配していた通りになったのならば、


「ひだる様に攫われた」


 と言えば信じてもらえるだろうか。


でも、あれはひだる様じゃないなと思った瞬間、窓が割れる音がして外から巨大な枝切バサミが刺し込まれた。


これこそ、ひだる様。いや、蛭人間?!


ここにいたらやばい。部屋から飛び出すと、廊下の奥の暗がりからじわじわと近づいて来る改・ドラキュラとカーミラ・亜種の群れ。


それならばと玄関に向かえば、そっちではすでに砂漠のゾンビ旅団が蛭人間と激闘中だった。


蛭人間が次々に群がり、寸劇・Zの周りで小爆発を起こしている。


寸劇・Zの攻撃は敵に対して圧倒的で、武器は折れた棒一本なのに凄まじいものだった。


棒を持たない手で蛭人間の頭を鷲掴み、それを振り回して攻め寄せる他の蛭人間をなぎ倒し、近づいたものは棒で突き刺して滅殺してゆく。


それが手慣れた流れ作業のように淡々と進められ、その凄惨さを忘れさせるほどだった。


あたしはゾンビ旅団の防護隊形の真ん中にあるケサさんの棺桶にすり寄って、知らぬ間に手にした山椒の木を振るって襲い来る蛭人間を突き返す。


それはいつか、あたしが突き、サダム・Zの棒で頭を叩き落すという攻撃パターンとなって、その場を切り抜ける一助にもなった。


 蛭人間の波が引き、辺りが静かになった。


そこにいたのは降りかかる血汚泥に慄くあたしと、ゾンビ旅団の二人。


当然いるものと思っていたサーリフ・Zは見当たらなかった。


寸劇・Zもサダム・Zもあたしに危害を加える気はなさそうだったので、あたしは機を見てこっそりゾンビ旅団から離れようとした。


するとサダム・Zがあたしの前に立ち塞がって牙をむいた。


でもそれは危害を加えようとしたのではなく、ただ行くなと言いたいだけらしかった。


 そういうわけでゾンビ旅団が棺桶をどこかに曳いて行くのにあたしもつきあう羽目になった。


同行3人いやケサさんの遺体を入れたら4人が、暗闇の中を黙々と進む。


ケサさんの棺桶がのる台車を、寸劇・Zとサダム・Zが白黒の紐を持って曳いてゆく。


このシチュ、どこかで見たと思ったら、これって夕霧太夫が道行きだ。ならさしずめあたしは伊左衛門か。


 夕霧太夫が道行き・Zは舗装された道に出ることなく、ひたすら山道、裏道、獣道を棺桶を台車に乗せて行く。


ぬかるんだ道では台車の車輪など役に立たず寸劇・Zとサダム・Zのバカ()だけで、ずりずりと前進して行く有様だ。


そのため棺桶が台車から何度も落ちそうになってあたしがそれを支えなければならなかった。


 途中、頻繁に蛭人間が襲って来たけど、それも夕霧太夫が道行き・Zの敵ではなかった。


あるときは寸劇・Zの剛腕で、あるときはサダム・Zの斬撃で改・ドラキュラやカーミラ・亜種は一蹴された。


 寸劇・Zの足が止まった。


夕霧太夫が道行き・Zも止まる。棺桶越しに前方の暗闇を見ると、道の先の木立の下にぼんやりと白い人の立ち姿があった。


それはただゆらりとそこに佇んでいる。


これまで道を塞ぐものは何であれ、厳然と排除して来たゾンビの二人も、まるで金縛りにあったかのようにそこから歩を前に進めようとしない。


 しばらくそうしていたけど、寸劇・Zがおもむろに踵を返して後戻りを始めた。


棺桶の台車もぐるりと回転して元来た道を戻る。


途中どこかで道が逸れたのか、それまでずっと山の中だったのに突然舗装された道に出た。


そこを横切ろうとした所で寸劇・Zが立ち止まる。


今度は道路脇の森の中に白い人影が見えた。


しばらくの沈黙があって再び寸劇・Zが方向を変え進み出す。


その道の先には尾根の影に逆三角形に切り取られた、遠くに平らかな街の光とその手前を塞ぐ黒い影の領域が見えていた。


どうやらケサさんの棺桶はそちらに(いざな)われたようだった。


 夕霧太夫が道行き・Zはワインディングロードを黒い影の領域へ向かって下ってゆく。


下り道の間も棺桶が倒れることなどガン無視のゾンビ連中のせいで、あたしが棺桶を支えなければならなかった。


台車の前で腰を低くして背中を棺桶に付け足でブレーキをかける。


棺桶が台車から転がって崖下に落ちる寸前でサダム・Zにぶつかって止まった、なんて時もあった。おかげで、あたしの足はパンパン、背中は痛く腰は伸ばせなくなった。


 ワインディングロードが終り平坦な道になったのは東の空がうっすらと明るくなる頃だった。


その道は明け空の下半分が黒い影になっているの領域に真っ直ぐ続いていた。


その黒い領域とは青墓の杜なのだった。


 朝日が山の斜面を赤く染め始めた頃、同行4人は青墓に入った。


森の中は時間によらずじめっとして外の気温より低く生臭い匂いがした。


朽ち葉を踏んで棺桶を乗せた台車が暗い森の中を進んで行く。


今や、寸劇・Zが何かに誘われているのは明らかで、奥へ奥へとあたしたちを導いて行く。


 森勢が濃くなってきて寸劇・Zが足を止めた。道の先に山で見たのと同じ白い人影が佇んでいた。


寸劇・Zが道を左に取った。


この道にあたしは見覚えがあった。


ここは伊左衛門がひだる様の大群と対峙し、夕霧太夫のために命の落とし所を見定めた場所。


まさにあの場所だった。


また道の先に人影が。ひだる様?


ちがう。あの和装の女だ。


「いざえもんがおくりましょう」


 その女がそう言ったようだった。


それと同時に木々の洞、大樹の梢、風の通る獣道。森の至る所から囁き声がした。


それはまるで青墓の杜が言葉を発したようだった。


いつの間にか寸劇・Zとサダム・Zがあたしの視界から消え失せていた。


 風景が変わりあたしの足もとには、淡い青の、勿忘草(わすれなぐさ)色に輝く池が広がっている。


森の木々が畔を囲み、正面の樹間には白い女が佇んでいて池を見つめている。


岸辺近くに浮かんでいたケサさんの体が中心に向かってゆっくりと移動し始めていた。


ケサさんはあの時の夕霧のように池の中心に進んで行く。


そしてついにケサさんが池の真ん中に至った時、渦が起こりケサさんは水中に引き込まて消えた。


「またすぐ会える」


 あたしは夕霧太夫の言葉を口にしてみた。


―――そしてあたしは、


休憩室の布団の中で目覚めたのだった。

(毎日2エピソード更新)

続きはこのあと21:10に公開します


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よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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