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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第一部 ノタクロエのフィールドノート

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「辻沢ノーツ 39」(こんな夜中に秘書さんと)

傀儡子クグツ

「古代から中世にかけて存在した流浪の民で、人形を操る芸能を生業とした。水辺の遊女に対し陸の遊女を言ことがある」


 ネットで調べたらこんな感じだった。

 

でも夕霧太夫と伊左衛門が絡んでないと私が知りたい傀儡子ではないような気がした。


宮木野さんなら知ってるかな?。


 町役場は夜間窓口あったから夜の間も開いてると思って見に来ちゃった。


ロビーに入って山椒の木の下に立った。


両手を胸の上に置いた、寝姿の銅像がある。


「遊女 宮木野」

―――わがちをふふめくぐつらや


「宮木野さんなら傀儡子のこと知ってるでしょ?」


深夜の冷たいロビーにあたしの声が広がってゆく。


「フィールドワーカーさん?」


 え? 宮木野さんがしゃべった?

 

そんなはずはなかった。声はあたしの後ろからしたのだ。


振り向くとスーツ姿の女の人が立っていた。


ガラスの天井から射す月の光に顔が青白く浮き上がっている。


町長室秘書のエリさんだった。


「こんばんは、エリさん。ごぶさたしていました」


「何かご用でしたか?」


 笑顔の中で、真っ赤な唇が際立って見える。


「この像を見に来たんです」


「それはわざわざ。お疲れ様です」


 それにしても、きれいな人。ゴリゴリカードのモデルの子はエリさんだよ。絶対。


「上で、お菓子でもでいかがです?」


 展望エレベーターに乗って最上階まで。


秘書室にでも連れて行ってもらえるのかと思ったら町長室で、


「こんな時間にあたしなんかが入ってもいいんですか?」


「ご遠慮なさらずどうぞ。町長は外出中ですから」


「夜もご公務ですか?」


「ええ。リソース不足だとかで飛んで出かけました」


 リソースって何のことだろう?


 エリさんがお茶とお菓子をお盆に乗せて持って来てくれた。


紅茶に銀座吉岡屋のマカロン。これあたし前から食べてみたかった。


「調査はいかがですか?」


「しばらくは順調だったんですけど、今行き詰ってまして」


 全然関係ない人に何を言っちゃってんだろう、あたし。


「お手伝いできることがあれば何なりと」


 社交辞令だと分かってるけど迷惑承知であのことだけ、


「傀儡子について調べてるんですが、よく分からなくて」


「傀儡子ですか? 私もよくは存じませんが」


 急に言われても困りますよね。


「四ツ辻には行かれましたか?」


「はい。何度も」


 辻女の教頭先生といい、あたしは四ツ辻を推されまくるんだな。


「そうですか? では、クグツ神社へも?」


「クグツ神社? 四ツ辻神社のことですか?」


 四ツ辻であたしが知ってるのは、ムラサキコさんに案内してもらって行った、公民館の裏手にある神社だけだ。


「いいえ、四ツ辻からずっと山に入ったところにあったはずですが。奥宮とも言ったかと」


 知らなかった。そういえば、四ツ辻内は一通り回ったけど、山の中までは行ってみてなかった。


 いろいろ辻沢のことを話して、そろそろと促されて町長室を出た。


別れ際展望エレベーターのところまで送っていただいた。


「それでは、お気をつけて」


「ありがとうございました」


(ゴリゴリーン)


 それにしてもエリさん忙しいんだな。いつ家に帰るんだろう。


 ロビーに下りると、来た時より静まり返ってて不気味だった。


遊女宮木野像の傍を通るとき、突然バッと起き上がったらなんて想像して、一人でゾクッとした。


夜間窓口に女の人いる。こんな時間に一人で怖くないのかな。


あ、手振ってくれた。


よく見たらユカリさん宅で会った人だった。


「オツカレサマでーす」(小声)


 徹夜のお仕事だったのか。

 

道理で普段の日、会わないわけだ。

(毎日2エピソード更新)

続きはこのあと21:10に公開します


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よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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