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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第一部 ノタクロエのフィールドノート

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23/60

「辻沢ノーツ 23」(不穏なドナドナ会)

 朝、疲れてたのにパキッと目が覚めた。

 

体全体に力が漲ってる感あって、昨日のインタビューを全部文字起こしして終わらせた。

 

自分史上一番の成果。


今日は満月だっけ。真逆、新月だった。


フジミユに新月も頑張れるみたいってLINEしようと思ったけどやめた。


 駅前のヤオマンカフェで遅いお昼して、時間まで辻沢の街なかをぶらぶらして過ごした。

 

 夕方、涼しげな風が吹いてきたころひさごに向かう。


 店員さんに案内を乞うと二人はもう席でゴマすりに夢中。


あたしもさっそく、ゴリゴリゴリ。


スリコギ摺るのってこんなに癖になるんだ。ミヤミユもサキも無心。


注文とってからもずっとゴリゴリ。


ミヤミユはお気に入りのカレー☆パンマンの黄色いパーカー着て、山椒摘みの作業で手はボロボロ、顔は日焼け、お肌はカサカサだって嘆いてる。


サキはこの格好でどんな調査してるのか、例のアーミースタイル。


頭に包帯巻いてて、5針も縫ったとか自慢げに話してる。


みんな、色々(特に人間関係で)あるけど、とりあえずここまでは順調。あと一ヶ月頑張りましょう。


「「「カンパーイ」」」


 サキが横を通りかかった店員さんに焼き鳥5本セットと韓国海苔を注文した。


あたし海苔が嫌いだって言ってなかったかな。


運ばれて来た焼き鳥には山椒がたっぷりかけてあった。


ミヤミユが焼き鳥を串から外して取り分けながら、


「クロエのフィールドって四ツ辻だったよね。


あそこは山椒摘みに何回か行って知ってるけど、みなさん楽しい人ばっかりでいいよね」


「そう。いい人ばっかり。でも、傀儡子の話は全然出てこないんだよね」


 教頭先生が四ツ辻を紹介してくださった理由って何だったんだろう。


辻沢に入る前に傀儡子の家系のことを話したら、それなら四ツ辻がいいって言ってたんだけど。


「そもそも論で、傀儡子の家系っていうのは存在するの? 『辻沢ノート』に書いてあるのが唯一の情報なんでしょ?」


 もう辻沢に来て半月になるのに全然それらしい話に出くわさないって、やっぱりそう思いたくなる。


四宮浩太郎が何か残してないかユカリさんにもそれとなく聞いてみたけど思わしい答えは帰ってこなかった。


実は存在しないから『ノート』も示唆で終わってるっていうことなら、ほんとワラエナイ。


 随分前に頼んだビールがやっと来た。


改めて乾杯。


今後の調査が順調に行きますように。


なんか無性に喉が渇く。これは意識飛ぶ前兆かも。飲み過ぎ注意警報。


「クロエ飲み過ぎじゃない。明日もあるんでしょ。セーブしなよ」


「放置、放置。フジノ女史もよくこんなやつの面倒見るよ」


 フジミユは関係なくない? 


 なんでか向こう気が強くなっててサキに言ってやった。


「サキ、何でケガしてんの?」


「調査してんだからしかたなくね?」


 サキはITの視聴者観察。


「PCのモニター眺めてるだけじゃん?」


「はあ?」


 サキがやっとこっち見た。


「クロエこそ、大昔の風俗調査して何になるって」


 風俗とか、傀儡子をバカにするな。


睨み返したらサキはスマホ見て知らない振り。


耳が赤いよ。


あたしも全身が熱くなる。


「次、何飲もっか?」


 ミヤミユが話題を変えた。このままだったら取っ組み合いになってたから助かった。 

 

 ひさごを出て、仲直りにと思って、カラオケ行く? って誘ったら、サキが、


「ウチ帰る。クロエなんて放ってミユウも遅くならないように帰んな。夜は変なのいるから」


 ミヤミユと二人になった。

 

サキの後ろ姿を見送りながらミヤミユが言った。


「サキ、すごく怒ってた」


「そう?」


「そう? じゃないよ。クロエ、ちょっとウザかった」


 ウザかったのはサキのほうだもん。


「あたしも帰る」


「ミヤミユもオコなの?」


「怒ってないよ。バスなくなるから。最終早いんだ」


 カレー☆パンマンのパーカーが遠ざかってゆく。

 

バイバイ。


また、一人になっちまったよ。


天を仰ぐ。


月のない夜空に星だけがいっぱい。チッ、月まであたしを見放しやがった。


どうせ調査は一人だし。ま、いいか。


明日からまた四ツ辻まで一人旅だよ。

(毎日2エピソード更新)

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