表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第一部 ノタクロエのフィールドノート
2/22

「辻沢ノーツ 2」(ドナドナ会議)

 そろそろ日も陰ってきたのに、女子3人、大学近くのウィード・カフェ「スカンポ・ハウス」でお茶してる。


 少しさかのぼると、お昼食べてから文献探しにゼミ室に行ったら、ミヤミユが来て大盛り上がり。


ミヤミユは、入学式後のオリエンテーションでボッチしてたあたしに声を掛けてくれた時からの知り合い。


名前は小宮ミユウで苗字はちがうけどフジミユとは双子の姉妹で、なんとなくあたしとは気が合う子。


 ゼミ室では、フィールドで食べる食事の話から雑草の話になって、そこから去年の暮に2人で観た『雑草図鑑』のことを話していたら、意外にミヤミユがゲードル(ゲームアイドル)グループのREGIN♡IN♡BLOODのこと詳しくて驚いた。


あたしは推しの闇センター夜野まひるがお目当てだった。


夜野まひるの記念すべき初出演映画だけど、あの飛行機墜落事故で夜野まひる他RIBは全滅、今は遺作だ。


 いつの間にか戻って来てた鞠野先生が、そろそろゼミ室閉めるよって、河岸を変えて話の続きしようって出てきたら図書館の前でサキとばったり会って、お互い暇だねーって言って「スカンポ・ハウス」でも行くぅ?ってなって。


で、今ここ。


サキも鞠野ゼミだけど、フィールドワークにはあんまり興味がないみたい。いつもスマホいじってる印象の子。


「どーする?」


ミヤミユがカタバミティーをすすりながら、酸っぱい顔をして聞いてきた。


もちろんフィールド選びのこと。ミヤミユはもう決まってるみたい。


「結局、鞠野フスキーのオファーに従うことになるかも」


鞠野先生のオファーっていうのは、あたしもミヤミユと同じフィールドに実地調査に行くのはどうか、というもの。


鞠野先生にしてみたら、フィールドも決まらず、文献調査と言ってはゼミ室でうだうだしているあたしを早く片付けたいんだと思う。


けど、そういうのってモチベあがんないよな。


あーあ、なんでフジミユってあんなに一途にフィールドに行けるんだろ。


やっぱ、才能なのかな。


「サキはどうするの? まだ決まってないんだよね」


ミヤミユが尋ねると、辻沢に関心なさそうだったサキがスマホを見つめたまま、


「辻沢は、やめたほうがいいかもよ」


「どうして?」


 あたしはサキに言ったのだけどミヤミユが横から、


「ヴァンパイアとかホントにいるかもよ。クロエはあたしが襲われたらどうする?」


「あたしは死ぬ気で助けに行くけどね」


 ミヤミユは少し驚いた顔になった。


 しばらくしてサキが店の外を見ながらボソッと、


「おばさんがね。辻沢でちょっと」


 その時はミヤミユも空気を読んで黙ったままだった。


するとサキが慌てたように話題を変えて、


「トリマ、コミュ障直さなきゃだよ。ウチの場合」


それな、一番のウツ要因。


フィールドはどことかテーマがどうとか以前に、現地で人とちゃんと話ができるかっていうこと。


アニメやゲームの話ならともかく、初めて合う何の接点もない人と会話をするって、今のあたしにはちょっと無理かもって思う。


「あたしもー」


ミヤミユ、あんたは違うでしょと思いつつ、


トリマ明日は区役所に書類取りに行ってこよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ