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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第一部 ノタクロエのフィールドノート

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18/70

「辻沢ノーツ 18」(フジミユとミヤミユの部屋で)

 気持ち悪くなって布団から飛び起きて、おトイレに駆け込んだ。


どうか助けてランダ様。


吐きたくても吐けない。頭めっちゃガンガンしてる。


お願いする相手間違えた。ランダ様ってバリ島の悪い魔女だったじゃん。


夏のフィールドワーク実習始まるってのに何やってんだか。


 ドアを開けて外に出た。

 

キッチンにフジミユが立っているってことは、ここはあたしの家じゃない。学生寮のフジミユとミヤミユの部屋だ。


やばい。ミヤミユにまで迷惑かけちゃったかな。


生き分かれの双子だった二人は、大学生になって再会して一緒に住むようになったらしい。


ミヤミユの部屋のドアの隙間から見えた感じ、ご不在の様子。


よかった。こんな姿見せられないよ。って、バレバレか、もはや。


え? ちらっと見えたあの制服、REGIN♡IN♡BLOODSのじゃない? 


ちょっと失礼。どれどれ、やっぱそうだ。


「恋血」の時ので、腕章に星が三つあるから、夜野まひるのだ。


ミヤミユがゲードル好きなのはこの間知ったけど、RIBにもはまってたなんて。


いいな、どこで買ったんだろう。


ミヤミユの部屋の壁、ビルとか橋とかの図面でいっぱい。


さすが建築家目指してるだけある。


本棚も建築関係のばっかり。


難しそうな本の中にあるバーバーパパの絵本がなごむ。


バーバーパパがみんなの部屋を繋げて家を作るやつ。


あたしも小さいころ見た記憶ある。


本棚の上にクリアファイルがあった。変なキャラクターのパンフ入ってる。


ハンプティーダンプティー? みたいだけど違うな。


手の爪がエグイほど凶器だし。ゲーム? アニメかな。


『スレイヤー・R』っていうゲームの敵キャラなんだ。


こんなゲーム知らなかった。まだまだだね、あたしのオタク道。


 フジミユの部屋に戻って寝袋の中に潜り込む。


マリーゴールドの鉢植えが乗った机がある6畳の和室。本棚はスッキリ。


窓はすりガラスで外の様子は見えないけれど明るかった。


多分昼近いのだと思う。


「大丈夫?」


 フジミユが台所からしゃがれ声で言う。


「なんかゴメンね」


 あたしの喉もガラガラだ。


「いいよ」


 コップを手にしたフジミユが部屋に入って来る。


「これ飲みなよ。気持ち悪いの治るよ」


 オレンジジュースのよう。


「ありがとう」


 伏し拝む気持ちでコップに口を付けると、おぇへ、超甘い。


「嫌いだった?」


「ううん。めっちゃ甘い」


「はちみつ入りだから」


 そ、なんだ。とりあえず飲まなきゃな状況。


「フジミユ、その声どうしたの?」


「カラオケで2時間歌いまくったでしょ。覚えてないの?」


「『夏祭り』歌ったような」


「最後はそればっか。何かあった? 夏祭り」


 無意識で『夏祭り』って、人が燃えて消えてなくなったんだものやっぱトラウマになってるのかな。


 フジミユに厄介になるのはこれで何回目だろう。


何度こんなふうにフジミユの部屋で目が覚めたことか。


でなければ終着駅で目覚めてフジミユに迎えに来てもらったり。


 ほとんど月一のご恒例状態。


ごめんね。フジミユだって嫌だよね。でさ、相談なんだけど、


もうちょっと横になってていい?


 ずいぶん寝て目が覚めた。タオルケットが掛かってた。

 

すりガラスが赤く染まってる。外はきっと夕焼け空が広がってるんだろう。


体を起こしたら頭が痛いのも和らいでた。


暗くなった部屋を見回す。


フジミユがいない。


「ただいま。起きてる? 塩にぎり買って来たよ」


 フジミユ帰って来た。どんだけお世話になってるんだか、あたし。


フジミユがコンビニの海苔なし塩おにぎりをだし汁で溶いたおかゆを作ってくれた。


あたしが好きだからっていつも出してくれるけど、違うんだ。


フジミユが作ってくれたから好きになった。


でも今日は一口しか食べられない。


「ほんとにごめんね」


「いいよ」


 いつもありがと。


「昨日は人のことばっかり聞いてたけど、クロエのほうはどうなの? フィールド」


「まだ、挨拶行っただけだから」


「いいの?」


 何が?


「他の2人はもう何度か辻沢に行ってるみたいだよ」


 嘘、知らない。


「ミユウは山椒の収穫手伝うって先週から行ってるし、サキなんて、ごっつい荷物持って3日に1回の割で往復してるみたいよ」


 そうなんだ。あたしだけレポートにかまけてたんだ。それにしても、なんで2人ともそのこと言ってくれなかったんだろう。


「きっと、遠慮したんだよ」


 レポート出来てなかったから? ハブられてないかな、あたし。


「そろそろ帰るね」


 来週からお互いフィールドワーク実習が始まる。

 

「夏休みの間お別れだね。メッセージ送るね」


 玄関先でバイバイして一人になった。

 

夕闇迫る街を歩く。

 

フジミユならきっと濃い調査するんだろな。


あたしは……、


頑張れるんだろうか。


(毎日2エピソード更新)

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