「書かれた辻沢 21」(闇ショップ)
サキに連れられて辻沢駅前通りのスーパーヤオマンに来た。
正面入り口すぐが食料品売り場で右手の奥が衣料品だった。
サキは衣料品売り場の中を突っ切って「トイレはこちら」の案内がある出口に一直線に向かって行く。
緊急事態なの?
と思ったがそうではなかった。
サキを追いかけて出口を抜けると、右手のトイレと反対の壁沿いに細い通路があったのだ。
サキはそこをさらに進み、すりガラスのアルミドアの前で立ち止まると、
「ここ。スレイヤー・R専用の闇ショップ」
扉を開けた。
レールが砂を噛んでスライドしにくくなった扉を力づくで開くと、中はいかにもなサバイバルショップだった。
迷彩服を着たマネキン数体。高そうなガジェットが並んだガラスケース。
壁一面に武器らしきものが飾ってある。平台にすり鉢が幾つも重ねて置いてあって、それを見ているとサキが、
「それは運営推奨の防具なんだけど、いらね、ジッサイ」
と吐きすてるように言った。
防具? これをどうやって使うんだろう。
「被るんだ」
こんな重いすり鉢を? バカなの?
「摺れて髪が傷んじゃう」
横から店員さんが声を掛けて来た。
「そちらは、鉢巻の上に被っていただきますので」
にしてもだ。
店員さんには笑顔だけ返して、サキの案内で必需品を見て回る。
「これは、初心者にも扱いやすい武器」
と渡されたのは、銀色で先が尖った短い棒だった。
……これは水平リーベ棒。
「元は健康グッズで、たまたま使ったユーザーが改・ドラキュラを撃退したのが口コミで広がって、今じゃデファクト」
ひんやりとして重く手によくフィットした。
振り回してみても人気なのが分かるほど扱いよさげだった。
「ウチはあれを使ってる」
サキが指さしたのは壁の上のほうに飾ってある木刀だった。
「辻沢産山椒の木で出来てる」
値段はお小遣いでは買えないくらい高かった。
その下に樫製と書かれたリーズナブルな木刀があったので、
「こっちのじゃだめなの?」
「やっぱ山椒の木ってのがマストっぽい。辻沢だから」
辻沢のヴァンパイアは山椒が弱点っていうし。
二人で色々見ていると、
「こちらはいかがでしょう?」
と先ほどの店員がまた声を掛けて来た。
振り返ると、布でくるんだ一振りの木刀を大事そうに抱え持っていた。
「黒山椒の木刀か」
サキが目ギンギンで前のめりになっている。
「百年生の山椒の木の芯が黒色硬化したものを使ったという」
「よくご存じですね、こちらはヴァンパイアにも効果があります。いかがですか?」
値札のタグをチラ見すると軽自動車が買えるくらいだった。
無理無理。
「噂には聞いてたけど、見たのは初めてだよ」
手を出して触れようとしているサキの袖を持って店員から引きはがす。
リボ払いしてでも買いそうな勢いだったから。
「あたしの身の丈にあったのが欲しい」
とサキに言うと、憑き物が落ちたように、
「そうだった。ゴメン」
と言って改めてグッズを選んでくれた。
結局買ったのは水平リーベ棒と、工事用ヘルメットを迷彩柄に塗装し直したもの。
スレイヤー・Rは深夜開催なのでヘッドランプ付きを勧められたけれど調査用(クロエ追跡用)があるから断った。
レディースの迷彩服はサイズがなく別の店で買うことに。
いつものショルダーバッグだと動きが鈍るからと言われて小ぶりのリュックを一つ。
それと『R』の大きい缶バッチも。
銀色の地に赤い○にR、三本の傷が斜めに入ってる。
それはお会計の時リュックに付けてもらった。
スーパーヤオマンを出た。
「じゃあ、今週末の夜11時に」
あと3日あるな。
「部屋に迎えにいくね」
と言うとサキが、
「これでフジノジョシもいっぱしのスレイヤーだ。スレイヤー」
とハイタッチの恰好をしたから手を合わせようとしたら、よけられた。
「何?」
「スレイヤーは、タッチしない」
あたし、ついて行けるだろうか?
(毎日2エピソード更新)
この続きは明日21:00公開です
よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾
たけりゅぬ




