「書かれた辻沢 18」(星形のフィンガーサイン)
ラインで、
[電話していい?]
とそこまで書いて、なんか他人行儀すぎるなと通話にした。
呼び出し音が鳴る。出た、けど向こうのカメラはオフ。
「……」(無言)
「もし。ひさしぶり。調査順調?」
「いきなり?」
素っ気ないけどアニメ声というギャップ。
「ごめん。ちょっと頼みたいことがあって」
「何?」
「会って話したい」
「告るなら間に合ってるけど」
「ちがうし」
「辻沢だけど」
「知ってる。近くにいる」
「会うって、いつ?」
「今日。これから」
「予定はないけども。どこで?」
クロエは四ツ辻だから街中ならバッタリはない。
「駅前は?」
「いいよ」
「10時にヤオマンカフェで」
「おけ」
通話を切ってから気づく。
あたしが辻沢にいることを口止めしなかったけど、向こうさんクロエと今バチバチ状態だからいいか。
ショルダーバッグにパソコンと野帳とデジカメとコンベックスと……。
また荷物がパンパンだ。どうしてこうなる。
だいたい実測しない人がコンベックス持ってどうする?
ミユウの『日記』に影響されすぎだ。
「辻沢駅まで」
(ゴリゴリーン)
この路線はクロエが調査の行き来に使うから鉢合わせに注意しないといけないけど、バスに乗っててもクロエの記憶の糸を見つけられれば現状把握可能だから助かる。
で、ちょっとお疲れ気味のクロエの記憶の糸を見つけたので読んでみる。
なんと紫子さんにインタビューしてきたらしい。
普通の内容であまり満足していない様子。
紫子さんも、傀儡子であることを自覚してないクロエに傀儡子使いの話をするはずもないから、当たり障りのないことを語ったのだと思う。
さらに紐解くとクロエの思いに遊女の方の傀儡子があった。
今夏のクロエの調査目的は傀儡子の家系図作成だ。
四ツ辻で傀儡子ね。ないな。
だったら隠れ遊里で栄えた街中の方が該当者いると思う。
本当に何でわざわざ四ツ辻に行ったんだ?
クロエが四ツ辻を選んだ理由がわからない。
本当はあたしたちの傀儡子のことを調査する気だったとすると、いろいろ考えなきゃならないことが出てくる。
自覚が近いとか。
「次は終点辻沢駅です。ご乗車ありがとうございました。ゴマスリで町おこし。辻沢にまたおこし」
(ゴリゴリーン)
駅前ロータリーにあるコーヒーショップ、ヤオマンカフェ。
正面がガラス張りでそこに映っている自分の姿。
大きなショルダーバッグ下げてて、背中曲がってるよ。
店の中、ポツポツお客さんが座っているのが見える。
その一番入り口から遠い端っこの席でスマホ覗き込んでるのが電話の相手。
「いらっしゃいませ」
辻沢にはいないタイプのイケメンバリスタさん。
眉毛ふっと。睫毛なっが。
「アイスカプチーノ下さい。シナモンで!!」
これ強めに言わないとデフォでサンショウ粉ぶっかけてくるから。
出来るまでメニューを眺めて待つ。
オレンジジュースに「サンショウなしが選べます」ってある。
サンショウ入りオレンジジュース、おいしいのか?
「お待たせしました」
ロングのグラスを左手に持って奥の席へ。
向こうはずっとスマホでこっちに気付かず。
「サキ」
声をかけると顔を向ける間際まで目はスマホ。
「フジノジョシー」
ピース合わせてからの、ロータッチ次にハイタッチ、往復グータッチでデコピンしてからの腕組み。
「「元気だった?」」
なんでこんなややこしいことしてるかというと、寮のバスケチームのサイン。
寮にバスケ出来る人が多いから、月一で中庭のコートでバスケしてた。
あたしとサキはずっと同じチームでそこで決めたハンドサインだ。
最初のピースを合わせるサインはサキの発案でするようになった。
もう一人いれば二人が両手、一人が片手で星形になる。
5人いれば片手だけで完成する。
あたしはバスケ経験はなかったけれど、ミユウがうまかったからあたしもできるだろうっていう双子あるあるで参加させられていた。
実際足を引っ張らないくらいはできるようになった。
「どうしたの? その包帯」
サキは頭に包帯を巻いていた。
「これ? フィールドでこけて」
本当にこけただけ? サキのフィールドって……。
「辻沢のどこだっけ?」
「青墓だけど」
やっぱりそうだ。
サキのフィールドワークの実態は、『スレイヤー・R』に参戦すること。
(毎日2エピソード更新)
続きはこのあと21:10に公開します
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たけりゅぬ




