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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第三部 書かれた辻沢(フジノミユキのオートエスノグラフィー)

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「書かれた辻沢 14」(君たちこそ辻沢のアルゴノーツだ!)

 紫子さんは、ミユウのことは鞠野先生から聞いているから無理して報告しなくていいと言ってくれた。


けれど紫子さんへの報告はミユウの願いでもあるような気がするから、きちんと聞いてもらった。


 あたしが語り終わると紫子さんは何も言わず涙を流したのだった。


 その後、お茶をしながら紫子さんから、この夏のミユウの様子を聞かせて貰った。


朝早くに調査に出かけて、夕方遅くに帰って来ると部屋に籠って作業をして、いつも深夜に寝床についていたそうだ。


 ――傀儡子神社の実測調査。


 図面好きが高じて建築家を目指したミユウらしい取り組みだった。


きっとミユウは完璧な記録を残していることだろう。


「ミユウちゃんの部屋を見てあげて」


 紫子さんに促されて鞠野先生と奥の和室に行ってみた。


部屋に入ると圧倒された。


ミユウの記憶の糸が層をなしていたのもそうだが、強烈にあたしに訴えかけて来たのは、壁全体に貼られた建築図面のほうだった。


ほとんどが傀儡子神社のもので、中には凄すぎてあたしには直視できない図面もあった。


「鞠野先生これとか大丈夫ですか?」


 隙間もないほどびっしりごろた石が描かれた図面だ。


あたしは集合体恐怖症ではないけれど、その図面はあまり気持ちのいい見た目ではなかった。


「僕は平気だよ。石畳の図面か。しかし、とんでもない執念を感じるね。さすが変……、コミヤくん」


 並んで貼ってある拡大図面を見ると、石の一個一個の苔の生え方までが分かる精緻さだった。


「やっぱりそうか。君たちこそ、辻沢のアルゴノーツだ」


 鞠野先生が正面の壁に貼られたひときわ大きな図面を見上げて言った。


『辻沢のアルゴノーツ』というのは確か、秘匿された論文の名前だ。


『辻沢ノート』の作者、四宮浩太郎が書いたエスノグラフィーで、一度だけゼミ室で鞠野先生に見せてもらったことがある。


そこには辻沢ヴァンパイアの歴史が報告されてあったはずだけど。


「あの論文がどうしたんですか?」


「論文? いや、そうでなく、辻沢の《《海洋航海者》》は君たちのことだと言ったんだよ。見てごらん、これを」


 鞠野先生が指した図面には、巨大な和船の断面図が描かれてあった。


でもその船の位置が少し変だった。


太い点線で示されたレベルが船の喫水線を超えて甲板の上にあったからだ。


「先生この船、沈下してませんか?」


「沈下? そうか、レベルをウォーターラインと見たのか。そうでなく、この線は地面だよ」


 そう言うと鞠野先生は、机の上の大判のノートを一冊取って、そのレベルの下方に押し当てた。


「何に見える?」


 あたしにもその屋形の形状に見覚えがあった。


「社殿ですか?」


 この時ようやくユウさんの言っていた、


「傀儡子神社の土中に埋まった船型の社殿を曳いて行き、青墓の丘の中腹に据える」


 という言葉が脳内で結像したのだった。


それはミユウが立てたけちんぼ池仮説、けちんぼ池への行き方なのだった。


 部屋に満ち溢れたミユウの思念に背中を押されて部屋を出る。


戸口に立っていた紫子さんにミユウの荷物をあたしが引き取りたいとお願いすると、


「それが一番いいわね」


 と言ってもらえた。


 しかし中型の段ボールにして3つ分はある。


結構な分量だ。


こんな時バモスくんがあればと思ったが詮無いことだと諦める。


 再び居間に戻って今度はクロエの話をした。


「クロエはどうですか?」


 と聞くと紫子さんは


「真面目に取り組んでるよ、でもね」


 といって少し考えてから、


「いきなり辻女から四ツ辻を調査したがってる学生がいるって連絡もらってびっくりした」


 クロエが辻沢に来るというのは鞠野先生から聞いていたけれど、まさか真っ直ぐ四ツ辻に来るとは思わなかったそうだ。


「鞠野先生が勧めたんですよね」


 そもそもクロエに辻沢を推したのは鞠野先生だった。


「いや。僕は知らないよ。いずれはエニシに導かれて来るだろうとは思っていたけれど」


 と心当たりがない様子だ。


「教頭先生がご指導されたのかと。四ツ辻にあたしたちがいるのを知ってるのは鞠野くんと教頭先生だけだし」


 紫子さんは鞠野くんと呼ぶ。紫子さんのほうが少しお姉さんだからだと思う。


「そうかなー。でもノタくんは教頭先生とは事前調査で一度しか会ってないはずだよ。その時四ツ辻の話は出てなかった」


 鞠野先生が言ったことが気になった。


バスケをしたとか変なことも言っていたが、クロエはあたしにこの夏のことを脚色して話していたのだろうか? 


それはそれとして、エニシがクロエを四ツ辻に引き寄せたというのは間違いなさそうだった。


 お昼は紫子さんとご一緒させていただいた。


山椒尽くしの料理はいつ頂いてもとってもおいしい。


ご飯を食べながらミユウの記憶の糸で気になることがあると紫子さんに言ってみた。


「何?」


 と言われたのでいくつかあるうちの一番の疑問をぶつけてみる。


それはやはりパジャマの少女の存在でどうしてミユウは狙われたのかということだ。


「どうしてミユウは……」


 と言いかけたら、鞠野先生が割って入って、


「コミヤくんは()()()()池を『けちんぼ』池と聞き間違えているんでしょう? 皆さんもそのようですが」


 最初は聞き流したけど紫子さんの表情が変わったのであたしも鞠野先生の言い間違いに気が付いた。


 先生、それ逆です。間違ったのはパジャマの少女のほうです。


(毎日2エピソード更新)

続きはこのあと21:10に公開します


よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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