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辻沢のアルゴノーツ ~傀儡子のエニシは地獄逝き~  作者: たけりゅぬ
第二部 辻沢日記(コミヤミユウのセルフライフドキュメント)

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122/216

「辻沢日記 63」(クロエ、こんなとこにどうして?)

 道の先にコンビニが見えてきた。


田んぼの中にぽつんとある。


青墓からの微妙な距離。


遠からず近すぎず。


スレイヤー・Rの参加者を目当てに商売しているのだろうけど、青墓に近すぎるのも嫌だからこんなところにあるのだ。


言っても夜の青墓なんて気味が悪い。


バイト代も高めに設定してあるかも知れない。


 店の外に黄緑の公衆電話があった。


支柱付きの透明ボックスに入ったやつだ。


扉を開けて受話器を取る。


小銭を入れて104にかけた。


「辻沢のヤオマングランドホテルお願いします」


 呼び出し音が聞こえて、


「はい、ヤオマングランドホテルです」


「あの、すみません。えっと、スカンポください」


 とぐだぐだで伝えると、


「どちら様とお伝えしますか?」


 ユウの名前のほうが良さそうだけど、ここはあたしの名前を伝えた。


嫌な間があって、


「お繋ぎします」


 また突き放されるかと思ったからほっとした。再び呼び出し音のあと、


「はい」


 だけで無言だったから、


「わたしコミヤミユウです。あの……」


 と言うと、


「ごきげんよう。どうされましたか?」


 まずは名前だけで分かってもらえたのが嬉しかった。


「いまお時間よろしいでしょうか?」


 と精一杯上品な応対を心がける。


「はい。シャワーを浴びてこれから寝るだけですので」


 夜野まひるのシャワー姿を思い浮かべた。


シャワーの飛沫があの透き通る肌を伝って落ちて行く。


「どうされました?」


 まずい。


いきなり電話して変な想像してるとか、あたしマジの変態。


「あの。すみません」


 思わず謝ってしまった。


「実はユウが動けなくて、朝早くに本当にすみません。助けてほしいのですが」


 としどろもどろ感いっぱいで伝えると、


「それはいけません。すぐ服を着てお迎えに上がります」


 裸だったの? 妄想が爆走しちゃう。


まひるさんにバス通りからユウがいる雄蛇ヶ池のほとりまでの道を伝えて受話器を置いた。


変な汗掻いた。


 グランドホテルは駅前だから、雄蛇ヶ池までは車で15分? 20分くらいか。


着替えの時間も考えたら30分くらいみておいたほうがいいかもしれない。


 コンビニで甘い物でも買って帰りたかったが、店員さんがいなさそうなので諦めた。


第一ユウを一人で置いて来ている。急いで帰らねばならないのだった。


 バス通りを戻る。


変わらず稲穂の匂いの風が吹いていた。


さっきは感じなかったが稲穂の匂いの他に何か嗅ぎ慣れない匂いがあった。


知ってる匂いだけど思い出せない。


「ミヤミユ!」


 呼ばれて背中がゾクッとした。


振り向くと白いパーカーにデニムの女子がこちらに走ってきていた。


一瞬ユウかと見まがう容姿だ。


でもユウはあたしをミヤミユとは呼ばない。


クロエ? どうしてこんなところに。


昨晩ひさごで分かれた時と同じ格好をしている。


クロエも潮時で発現していたはず。


潮時明けにたまたまあたしを目撃した? 


ならばお守り役のミユキが近くにいるかもしれない。


クロエに気取られないよう周囲に目を配ったが、見渡す限りの田んぼだ。


視界の中に人影は見当たらなかった。


ミユキ、この間みたくクロエを見失った?


 クロエはあたしの元まで来ると、


「これ、忘れたでしょ」


 と、目の前に黄色い布を差し出して来た。


広げてみるとカレー☆パンマンのパーカーだった。


どういうこと? 


なんでミユキに貸したものをクロエが持ってる? 


潮時になにがあった?


もしやクロエも傀儡子を自覚したのか?


一気にたくさんの疑問が吹き出してきて頭がクラクラした。


「どうしたの?」


 クロエが怪訝そうな顔をして言った。


「なんでもない」


 クロエが潮時明けの意識の閾にいるのだとしたら、今の状況をわかってないはずだ。


今はクロエの思い通りにさせて、いちいち追求すべきでないだろう。


「くちびる紫色してるよ。寒いんならパーカー着たら」


 この汚れたTシャツの上からお気に入りのカレー☆パンマンは着たくなかった。


でも、クロエのすることに素直に従うと決めたばかりだ。


パーカーを着ることにする。


着てみると、何故かこなれていない感じがしたが肌寒さはいくらか治まった。


「ありがとう」


 クロエはあたしの上半身をしげしげと見て、


「よかった。ぴったり」


 と言ったのだった。


まるで誕プレを渡したあとサイズを気にするみたいに。


 このままユウの所に行くのはためらわれた。


クロエはユウのことを知らないし、それが自分とそっくりだとしたら、クロエの意識の閾での記憶にどんな影響があるかしれないからだ。


散々迷ったが、ここは雄蛇ヶ池で一人で待っているユウを優先させたかった。


ミユキごめん。閾の記憶のせいでクロエが変になったら、あたしが全力でサポートするから今回は許して。


ユウとクロエを天秤に掛けたようで心苦しかった。


(毎日2エピソード更新)


次回で第二部はラストです。

明日21:00公開します。


ユウの安全を選択したミユウの行く末は?


よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


たけりゅぬ

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